ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ふ~ん、そんなことがあったんだ」
「後輩たちの前で義姉さんとラブラブアピールとか、雄介も大胆になったもんだな~」
「ラブラブアピールって……別にそんなことしてないよ」
そんなこんなで時間は過ぎ、夜。買い物を終え、夕食である焼肉を楽しみながら今日の出来事を俺が語れば、兄貴たちがそれに対して色んな反応を見せてきた。
呆れと愉快さが半々の雅人と、ちょっとうんざりした様子で応える雄介。
それぞれの反応を見せる二人に対して、母さんが言う。
「まあ、今日のは自分からアピールしたわけじゃなく、後輩くんに何か言われた結果でしょ? 最終的にそうなったとはいえ、雄介とひよりちゃんが原因ってわけじゃないんだから、ラブラブアピールとはちょっと違うんじゃない?」
「そりゃそうかもしれないけどさ……結果としてそうなってたら、意味としては同じじゃね?」
「いや、だからさ、そもそもそういうアピール自体、してないんだってば」
「う~ん……でも、あたしも散々惚気ちゃったしな~。あれでラブラブアピールしてないってのは無理があるかも……」
「ひよりさんまでそういうこと言う!? 君が味方してくれないと、どうしようもないんだけど!?」
まさかの義姉さんからの裏切り(妥当な意見とも言う)に遭った雄介の叫びに対して、俺たちがあははと笑う。
実に楽しく、そして美味しい夕食を楽しみながら、俺はちょっとだけ雄介に助け船を出すことにした。
「でも、柔道部の連中も女子バレー部の子たちも、みんな勉強になったって言ってたよ。誠実であるのは大事なんだな~って、そう言ってた」
「まあ、中学生なんて恋愛とかよくわからない年頃だもんね~。付き合うってなっても、経済的にも年齢的にも友達だった頃とできることってそこまで差がないわけだし……」
「部活とか、受験もありますしね。それは高校も一緒かもですけど、高校生の方が青春しやすい気がします」
「それでも、好きな相手と恋人になるっていうのは、十分素敵なことだと思うけどな~……」
割と現実的な意見を述べる母と義姉さんに対して、雄介の方はロマンティックな意見を述べている。
普通、こういうのって逆なんじゃないかと少し前にも思ったことを再び考えた俺の前で、義姉さんが口を開いた。
「そこは同意だけど、やっぱり付き合ってるんだったらそれなりの特別感ってほしくない? 相手からの好き! って気持ちをちゃんとぶつけてほしいっていうかさ……」
「あ~、そりゃそうっすよね。そういう部分の不満もあるっちゃあるのか……」
雅人は若干言葉を濁しているが、義姉さんの言わんとしていることはわかる。
具体的に言ってしまえば、義姉さんとその元カレのあれこれも振り返ってみると問題だったということだ。
義姉さんたちに限らず、中学生同士のカップルだと付き合っていることが友達にバレると恥ずかしいからという理由でそれをひた隠しにすることも珍しくはない。
アルバイトもできない中学生だと頻繁にデートもできないだろうし、そうなると恋人の特別感が薄れたり、本当に相手は自分を好きだと思ってくれているのは不安になる……ということだろう。
(義姉さんの場合は幼馴染っていう関係性で積み上げた好感度貯金があったし、受験でイチャイチャしてる場合じゃないっていう理由もあったからな。だから我慢できたってわけか)
冷静に分析しつつ、逆に義姉さんの元カレについても考える。
そいつの場合、逆に義姉さんからの好きという気持ちを感じられなくてふらついてしまったのかなと……そうは思いつつも、受験勉強したり、たまに息抜きをしたりと一緒に時間を過ごしていたわけだから、中学三年生という時期を考えれば当たり前じゃないかとも思ってしまう。
こっちの方が逆に、幼馴染という関係性で積み上げてきた経験が仇になったのかもしれない。
こんな形で一緒に過ごしても、恋人としての雰囲気を感じられなかった……元カレが欲しかったのは、刺激的な日々だったんだろう。
(っていうより、
時折、テーブルの上に乗っかったりもする義姉さんの大きな胸を一瞬だけ見た後で俺は思う。
体目当てと言うと本当に人聞きが悪い感じもするが、そういうことに興味津々になる思春期にスケベなことを期待するのは、中学生男子としては変なことではない。
問題は、その意識(性欲)が強くなり過ぎたせいで浮気までいってしまったことだ。
ほいほい胸を触らせてくれるだけの見るからに地雷な女子に引っ掛かって、こんなにかわいくて素敵な恋人を捨ててしまうだなんて、アホにも程がある。
とは思いつつも、改めて考えるとこの結果は妥当な気がした。
色んな情報から判断するに、義姉さんの元カレが求めていたのは『恋人との刺激な日々』で、義姉さんの場合は『穏やかで幸せな日々』だったのだろう。
元カレが恋人とジェットコースターに乗って乱高下を楽しみたい人間だとしたら、義姉さんは手を繋いでゆっくりと歩き、絆を深めていきたい人間だった。
結局は根本から考え方が合わない二人だったんじゃないかと、色々な情報からそう考えた俺は、一人で頷きながら牛タンを頬張る。
この考察は割と的を得ているんじゃないかと自画自賛しながら、俺は義姉さんと元カレが合わない……というより、合っているせいで合わない部分にも気が付いていた。