ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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色んな意味で雄介はすごいってことで、この話は終わろう(大我視点)

「その点、雄介くんはちゃんとあたしに好きって気持ちをぶつけてくれるもんね~! そういうとこ、あたしも好きだよ!」

 

「な、なんかこの場で堂々とそう言われるのは恥ずかしいんだけどな……」

 

 という、いつも通りのイチャ付きを見ながら改めて思ったのだが、義姉さんは意外と()()()な人間だ。

 雄介に対してゴリゴリに攻めたりしているように見えるけど、実際は相手から行動されることを喜ぶタイプなのである。

 そしてそれは元カレも同じで、どちらも受け身体質なのだ。

 

 ただ、似ているように見えるこの二人の受けの形には、大きな違いもある。

 義姉さんが『相手のペースに合わせつつ、肝心なところでは恋人側に頑張ってほしいタイプ』の受け身だとしたら、元カレは多分、『自分から関係性を発展させるような行動を踏み出すのが恥ずかしいから、そういうことは相手にしてもらいたいタイプ』の受け身だ。

 

 要するに、元カレはプライドが高いのである。

 手を繋ぎたい、キスをしたい、胸を揉ませてほしい……そういうことを男の側から言うのは恥ずかしいから、彼女の方から求めてほしい。

 からかわれたくないからという理由で周囲に自分と義姉さんが付き合っていることを秘密にしていたことから考えても、プライドの高さが垣間見えるだろう。

 そういうタイプの人間だからこそ、簡単に胸を揉ませてくれる上に刺激が欲しいという自分の欲求を満たしてくれる浮気女に引っ掛かってしまったというわけだ。

 

 ただこう考えていくと、元カレが義姉さんにやりたいことを伝えていたら……攻めのやり方を取っていたら、二人は上手くいっていたのかという疑問が出てくる。

 攻めの元カレと受けの義姉さん、一見すると相性が良くなったように思えるが……俺は絶対に上手くいかなかったんじゃないかと思う。

 

 先にも述べた通り、この二人は根幹から合っていない。

 じっくり時間をかけて関係を進展させていきたかった義姉さんと刺激的な恋愛を求めていた(割には自分から行動しなかった)元カレでは、考え方が違う。

 

 というより、あれだ。元カレは自分の欲望が最優先なんだ。

 自分はおっぱいが揉みたい。だけど彼女の義姉さんにそれを言うのは恥ずかしいし、それを言って断られたりしたらプライドが傷付く。だから、自分から揉ませてくれた女の方に靡く。

 義姉さんに対しての思いやりがないというか……今日、何度も聞いた()()()というものが微塵もないから、そういう行動が取れてしまう。

 

 仮に元カレが義姉さんに自分の要望を伝えていたとしても、それが義姉さんの性格と噛み合うとは思えなかった。

 おそらく、そうなった場合の選択肢は拒絶して破局するか、あるいは自分の性格を曲げて元カレに合わせるかで……前者はもちろん、後者に関しては義姉さんが幸せになれないどころか不幸になる未来しか見えない。

 

(その点、雄介は相手を思いやるって部分に関しては文句なしの性格してるからなぁ……)

 

 今の義姉さんの逆セクハラ体質も、雄介との関係があってこそだ。

 母さん曰く、微妙に元カレにフラれたことのトラウマもあったんだろうが……今は雄介のおかげでそれも回復しているらしい。

 

 そう考えるとやっぱり雄介よりも義姉さんの方が運が良かったんだなと、そう思いながら分析を止めた俺の耳に、早速二人のイチャつく声が聞こえてきた。

 

「そういえば、今度柔道の大会があるんだよね? 大我くんも出るんだし、応援行くでしょ?」

 

「うん、そのつもりだよ。会場、去年と一緒だったっけ?」

 

「え? ああ、うん。そうだったと思うけど……」

 

 不意に話を振られた俺は、少し考えた後で雄介にそう答える。

 そんなに遠くない、なんだったら歩いて行けそうなくらいの場所にある会場について答えれば、雄介は少し難しい顔をしながら言った。

 

「でもどうするかな……? 去年は歩いて行ったけど、差し入れのスポーツドリンクが結構重くて大変だったんだよな……」

 

「あ~……会場があそこだと、そこそこ距離あるもんね。歩いて行けるけど微妙に遠い位置って面倒だ……あっ! じゃあさ! 自転車で行こうよ!! 一台あるの知ってるしさ!」

 

「あれか。確かに使えなくはないんだろうけど、一台だけだからなぁ……」

 

「いいじゃん! 二人乗りすればさ!! 見つかったら怒られちゃうかもだけど、そこはまあどうとでもなるでしょ!!」

 

「ダメだよ。ひよりさんを危ないことには巻き込めません」

 

 彼女との自転車の二人乗りとかいう美味しいイベントを速攻で拒否した雄介が義姉さんへと言う。

 そう答えることは予想できていただろうが、ちょっぴり不満気な義姉さんはぷくっと頬を膨らませた後で文句をぶつけていった。

 

「なんだよ~! あたしと二人乗りしたくないってのか~!? 後ろから抱き締めてくる彼女のかわいさと、背中に当たる胸の感触……そういうのを味わってみたいっていうのが男の子だろ~!?」

 

「それは否定しないけど、ひよりさんの安全が第一だよ。僕も二人乗りに慣れてないし、万が一にも運転をミスって怪我させたら、ひよりさんのご両親に申し訳ないでしょ?」

 

「ふ~ん、あたしを傷物にしたくないってことか~……そうなっちゃったら雄介くんが責任取ってくれればいいだけなのにな~……!」

 

 と、にやにや顔で義姉さんが雄介に言う。

 その言葉に対し、ちょっとだけ不思議そうな顔をした後で視線を逸らし、何かを考えた後……再び義姉さんの方を向いた雄介は、平然とした様子でこう言葉を返した。

 

「……別にそういうことがなくても責任は取るし、幸せにするつもりだけど……ダメだった?」

 

「んっ……!?」

 

 ――これなんだよなぁ。雄介、たまにこういうことを言うから質が悪い。

 普通に感情が激重というか、何の前触れもなく平然と義姉さんが大好きなことを言ってのけるから、心の準備ができないんだよなぁ……。

 

「いや~! これよ、これ! 長男夫婦のイチャイチャを肴に飲むお酒が一番美味しいんだって!!」

 

「ねえ、そういうのやめてくれない? 俺、焼肉のタレ使ってるんだよ? 甘さがとんでもないことになって口の中がヤバいんだけど?」

 

「こうなることを予測できなかったお前が悪い。母さんは無糖のレモンサワー飲んでるし、俺だって塩コショウで食べて対策してるじゃんか」

 

 不意を打たれて何も言えなくなった義姉さんに代わって、家族と一緒に雄介へとツッコミやら茶々を入れた俺が再び焼肉を頬張る。

 結論としては……色んな意味でうちの兄貴はすごいんだなってことでいいだろうと思いながら、これからも長く続くであろう義姉さんとの楽しい日々を想像し、糖分は控えた食生活を心がけようと決める俺であった。

 

 

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