ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
僕がそう叫んだ瞬間、ひよりさんがピタリと動きを止めた。
そのまま体を反転させ、再び床にぺたんと座り込んだ彼女は、猫の手のポーズを取りながら僕へと言う。
「理性が持たないって、あたしを見て、えっちな気分になっちゃってるってこと?」
「そうです……!」
「このまま挑発されたら、間違いなく手を出しちゃうってこと?」
「そう……!!」
「そっか……前も聞いたけど、夏休みの間はあたしにそういうことはしないって言ってたもんね」
「そうだよ……! 今回の場合はひよりさんのためって言うより、ここで欲望に負けたらとんでもない自己嫌悪に陥りそうだからって理由が一番だけどさ……!!」
嘘を吐く余裕もない僕は、正直に自分の本心をひよりさんに話した。
実に恥ずかしい僕の告白を聞いた彼女は、ふんふんと頷いた後で微笑みながら僕へと言う。
「オッケー! ごめんね! 楽しくって調子乗り過ぎた!! これ以上は雄介くんが嫌だって言うなら、無理強いはしないよ!」
「ああ、うん……理解してくれて助かるというか、ありがとうっていうか……」
正直、これ以上挑発されたらマズかった。僕の理性はひよりさんの掌の上で転がされていることを今日ほど実感したことはない。
少しずつ心臓の鼓動が落ち着き、熱くなっていた体からも余計な熱が引いていく中……僕は、ふと気がかりに思ったことを彼女に問いかけてみた。
「あのさ、ひよりさん……また、焦ったりしてないよね? そういうことをしなくても、僕はひよりさんから離れるつもりはないよ?」
初めてのお泊りのことを思い返す大胆な行動の連発に、ちょっとだけひよりさんの精神状態が気になった僕がそう彼女へと尋ねる。
紫村さんからのストーカー被害を受けて、何かひよりさんの中にある良くないスイッチが入ってしまったのではないかと、また昔の精神状態に戻ってしまったのではないかと不安に思う僕であったが、どうやらそういうわけではなさそうだ。
「あ~……心配させてごめん。でも、本当に大丈夫だから。今回のこれはその、もうちょっと愛されてみたかったっていうかさ……ちゃんと手を出したいって気持ちはあるんだなって、そういうことを確認したかったっていうか……ごめん!」
二度謝罪したひよりさんの様子から察するに、かなり覚悟を固めて始めたこの同棲生活の中で、僕に手を出されなかったことにモヤついた気持ちが残っていたのだろう。
理由は聞いたし、納得もしてくれたが、それでも解消し切れないものはある。
その辺に関しては、僕がもっとちゃんと向き合っていくべきだったと反省した。
ちゃんと好きだし、だからこそ今は手を出さないと決めた上で、手を出したくなるくらいには大好きだと伝えたと思ったが……あれじゃ足りないということだ。
だったらもう、この機会に全部伝えてしまえばいい。そう思った僕は、ひよりさんを抱き締めると共にありったけの想いを彼女にぶつける。
「そんなに謝る必要なんてないから。むしろ、謝るのは変に意固地になってる僕の方だしさ。この撮影会も、もっと乗り気で楽しめる性格だったらこんなふうにひよりさんを凹ませることもなかったと思う。ごめんね」
「い、いや、悪いのはどう考えてもあたしだし……」
「ひよりさんは恋人である僕にかわいい姿を見てもらおうとしただけなんだから、何も悪くないよ。水着まで用意してくれて、他の誰にも見せないような姿を見せてくれて、本当に嬉しいと思ってる。そんなひよりさんが大好きだし、ずっと傍にいてほしい。形を間違えないように大切にしていくし、幸せにもする。好きじゃなくて……愛してるよ」
「んっ……♥」
この撮影会の中でひよりさんが見せた姿よりも恥ずかしいことを言っている自覚はあったが、それでもちゃんと言葉にして彼女に伝えたかった。
僕の言葉を受けたひよりさんは「愛してる」の発言の際にピクリと体を震わせ、暫し押し黙った後……顔を上げ、僕を見つめながら言う。
「……あたしも、雄介くんのことを愛してるよ。へんてこな事情を抱えてるくせに甘えたがりで、色々我慢できないわがままなあたしのことを受け止めて、しっかり大切にしてくれるあなたのことが大好き。だからさ……一つだけ、約束してほしいんだ」
小さく息を吸い、深く吐いて……そうやって深呼吸をして、決意を固めたであろうひよりさんが僕を見つめながら静かな声で囁いた。
「これから先、あたしとそういうことをする時が来たらさ……我慢なんてしないでほしい。むしろ、今まで我慢してきた全部をあたしにぶつけてもらいたいんだ。約束……してくれる?」
「……それがひよりさんの望みなら、喜んで」
彼女の望みに対して、笑みを浮かべながら僕は頷いた。
ひよりさんは僕の答えに嬉しそうにはにかむと共に、茶目っ気を含んだ声でもう一度囁く。
「実はさ、もう一つ水着を用意してあるんだよね。お尻だけじゃなくておっぱいにも興味を持ってもらおうと思って、牛柄のビキニも買っちゃったんだけど……そっちをお披露目するのは、また次の機会にしよっか」
「あはは……! そうだね。そうしてもらえると助かります」
苦笑を浮かべながらそう答えた僕へと、ひよりさんも笑みを返してくる。
変な形にはなったけれど、彼女の願いを叶えることはできたかなと思いながら、僕たちはこの撮影会を終えるのであった。
・やり残したリスト
水着で雄介くんとイチャイチャする! →達成!
雄介くんとえっちなこと(えっちじゃない!)をする! →達成!