ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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甘い、幸せの味

「うん、そうだね……まだ数か月しか経ってないのに、不思議と懐かしいって気持ちになるよ」

 

 ひよりさんの言葉に同意しつつ、ちょっと不思議な感覚に対して苦笑を浮かべる。

 初めて二人で出掛けたあの日も、こうしてタルトを食べたっけかと……乗っているのはメロンではなくてイチゴではあったが、最初のデートの思い出を振り返った僕が頷く中、ひよりさんが言う。

 

「あの頃にはもう、雄介くんのことを好きになってたな~……だから、雄介くんの方からデートに行こうって言ってもらえて、すごく嬉しかった」

 

「……僕も、ひよりさんのことを好きになってたと思う。でも、誘う時は緊張しなかったな。凹んでるひよりさんを元気付けたいって、そんな気持ちでいっぱいだったからさ」

 

「ふふっ! 雄介くんってそういうところあるよね。普段はおどおどしてるのに、大事なところはしっかりしてる。何度もその性格不意打ちされて、ドキッとさせられちゃったよ」

 

 そういうのも好きなんだけどね、と微笑みを浮かべたひよりさんがグラスを傾けてドリンクを飲む。

 両想いではあったが、まだ友達ではあったあの頃を振り返りながら、恋人になった今の自分たちのことを思う僕の前で、再びひよりさんが口を開いた。

 

「実はさ、今日、ここに来た理由は、夏限定のスイーツが食べたかったからじゃないんだ。あの日から関係が進んでるんだって……そう、確認したかったんだよね」

 

 そう、恥ずかしそうに言ったひよりさんがはにかむ。

 いじらしさを感じさせるその微笑みに心をときめかせながら、僕は彼女へと問いかけた。

 

「……それで、どうだった? 自分の中で確認できた?」

 

「う~ん……まだかな~? 雄介くんが手を貸してくれれば、ちゃんと恋人になれたんだなって思えるんだけどな~……!」

 

 わざとらしくそう言ったひよりさんが、いたずらっぽく微笑む。

 何かわがままを言うつもりだなと理解した僕が苦笑を浮かべる中、ひよりさんは甘えた声で僕へとおねだりしてきた。

 

「あ~ん、して。あの日とは逆に、雄介くんがあたしに食べさせて」

 

 甘い声でそう言った後、口を開けるひよりさん。

 期待に満ちたその表情にまた苦笑を浮かべた僕が、自分のタルトを一口だけ切り取ると共にフォークで突き刺す。

 

「喜んで、そうさせていただきますとも。はい、あ~ん」

 

「ふふふ……っ! はぁ~む♥」

 

 小動物のように僕が差し出したタルトを頬張ったひよりさんが笑みを浮かべる。

 もぐもぐと口を動かした後、本日一番の満足気で幸せそうな笑顔を見せてくれた彼女は、その笑顔を僕に向けると共に口を開いた。

 

「ありがとう、雄介くん。おかげで満足できたよ!」

 

「ははっ、ひよりさんが喜んでくれたなら、僕も満足だよ」

 

「えへへ~! それじゃあ、こんどはあたしが雄介くんにあ~んしてあげる番だね!」

 

「それは秋に来た時にお願いするよ。次のお楽しみってことで」

 

「そっか~……! じゃあ、冬はあたしがしてもらう番だね? クリスマスシーズンは人が多いだろうから、頑張ってもらわないとな~……!!」

 

 やっぱり普通にバカップルな会話を繰り広げながら、僕たちはこの瞬間を楽しんでいく。

 食事もそうだが、恋人と過ごすかけがえのない時間は、甘くのんびりと過ぎていった。

 

「アイスばっかり食べたせいか、ちょっと体が冷えちゃったね。ホットコーヒー持ってくるけど、雄介くんも飲む?」

 

「ああ、うん。じゃあ、お願いしようかな」

 

 メロンのタルトを食べ、同じく季節限定のパイナップルやメロンのアイスを食べたところで、ぶるっと体を震わせたひよりさんが僕へと尋ねてきた。

 確かに空調が効いている屋内でアイスばっかり食べたせいで寒くなってしまったなと思った僕がありがたく彼女の好意に甘えれば、しばらくしてホットコーヒーを淹れたカップを両手に持ったひよりさんが席へと戻ってくる。

 

「はい、コーヒー。お砂糖は入れずにミルクだけ、だったよね?」

 

「ありがとう。覚えてくれてたんだね、僕の好み」

 

「もちろん! ちゃ~んと覚えてますとも!」

 

 いつぞやの朝食デートの時に話した、僕のコーヒーの好みをばっちりと記憶していたひよりさんがどや顔を浮かべながら胸を張る。

 こういった細やかな部分からも彼女からの愛を感じてしまった僕は、不思議とミルクだけにしては異様に甘いコーヒーを飲みながら微笑んだ。

 

「……なんか次はしょっぱいものを食べたくなっちゃったな。口の中が甘くて仕方ないや」

 

「じゃあ、ポテト頼もうよ! 味もいっぱいあるみたいだし、それで口の中リセットしよう!」

 

 体は温まったが、口の中の甘さは消えない。むしろ、コーヒーを飲んだのに逆に甘さが濃くなったくらいだ。

 それを言葉にして言えば、ひよりさんは無邪気にメニューを開きながらそんなことを言ってくる。

 

 多分、きっと……いや、絶対に、彼女と一緒にいる間はこの甘さは消えないんだろうなと思いながら、これが無数にある()()()()の一つだとも理解している僕は、ひよりさん同様に十分過ぎるくらいの満足感を得ると共に彼女と楽しい時間を過ごしていくのであった。




・やり残したリスト

夏の限定スイーツを食べる! →達成!

雄介くんにあーんしてもらう! →達成!
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