ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと放課後デート
放課後デート、誘ってみよう


「ごめん、面倒事に巻き込んじゃって……」

 

「大丈夫だよ。それより、いったい何があったの?」

 

 ひよりさんを江間から引き離した僕は、呆然としていた彼を置いて自分たちの教室に入ると共に何があったのかを質問した。

 暗い表情を浮かべた彼女は、「実は……」と前置きをした上で昨晩から今の出来事に至るまでの流れを説明し始める。

 

 どうやら昨夜、ひよりさんが僕とメッセージのやり取りをしている最中に、江間からも連絡があったらしい。

 色々と面倒になって彼のアカウントをブロックしようとしたひよりさんだが、その際に誤操作で間違ってスタンプを送信してしまったというわけだ。

 

「いちいち誤送信だって連絡するのも面倒だし、お風呂に入ってるってバレるのも嫌だったからさ……そのままブロックしたんだけど、色々失敗だったかも」

 

 ひよりさんの言う通り、浮気がバレたというのに臆面もなく胸を揉ませてくれなんて言う男に誤送信の理由を説明して、風呂に入っていたことがバレたらそれはそれで面倒なことになるだろう。

 それに、そもそも最低の裏切りをした男とわざわざ言葉を交わしたい人間なんているはずもない。そのままひよりさんが江間をブロックするのは当然の流れだと思う。

 

 ただ、そのせいでブロック後に江間が自分に何を言ってきていたのかも、彼の考えもわからなくなってしまったことは失敗だったと、どうせならはっきりと拒絶の意思を示してからブロックすべきだったと後悔するひよりさんへと、僕は慰めの言葉をかける。

 

「そんなことないよ。浮気がバレた時点で二人の関係は破綻してるし、わざわざひよりさんが嫌な思いをしてまで江間と話す必要なんてなかったって」

 

「……うん。ありがとう。雄介くんにそう言ってもらえて、少し気分が楽になった」

 

 そう言ってはいるが、ひよりさんの表情は暗い。

 改めてあの日の出来事を思い出してしまったか、あるいは僕が声をかける前にまたひどいことを江間から言われたのかもしれないと思うと、胸が苦しくなった。

 

(それにしても……江間の奴、とんでもないな。自分がしたことがどれだけひよりさんを傷付けたのか、わかってるのか?)

 

 僕が聞けた二人の会話は、ほとんど最後の方だけだったが……それだけでも江間のデリカシーのなさというか、浅はかさがわかった。

 一年間、浮気を続けていたことを知り、深く傷付いているひよりさんに対して、ご飯を奢ってやるから機嫌を直せだなんて、ちょっとヤバ過ぎる。

 

 誠心誠意謝って、ひよりさんに縋るように話を聞いてくれと言っていたのなら、彼の行動も理解できた。

 しかし……あのノリの軽さはひよりさんを深く傷付けたという自覚がなく、ただの喧嘩をしてしまっただけという雰囲気に見える。

 

(もしかしなくとも、あの態度がひよりさんを傷付けてる最大の要因だよな……)

 

 自分はこれだけ傷付いたのに、相手は何もわかっていない。

 それどころか、自分の傷などまるで意に介さずに平然と軽いノリで接してくるのだから、ひよりさんからすれば堪ったものじゃないだろう。

 

 やっぱり、そう簡単に恋人だった男のことを忘れられるわけじゃない。なんだかんだでひよりさんも江間のことを引き摺っているような気がする。

 だからこそ、彼の言動に深く傷付いているんだろうな……と、胸の奥でチクリという痛みを感じた僕であったが、悲しそうに俯いているひよりさんの姿を見て、そんな痛みはどうでもよくなってしまった。

 

(情けない。僕なんかよりもひよりさんの方が傷付いているんだ。今、僕がすべきなのは、彼女を励ますことじゃないのか?)

 

 最悪の形で江間と別れて、まだ一週間程度。そんな短い時間で全てを吹っ切ることなんてできるはずがない。

 それでも、ひよりさんは江間のラインをブロックしたりして、彼との思い出と決別しようとしている。

 

 僕がすべきなのは、そんなひよりさんを応援し、苦しそうにしていたら励ますことのはずだ。

 僕は彼女の笑顔が見たい。ならば、くだらない嫉妬の感情に傷付いてないで、行動すべきだと自分自身に言い聞かせた僕は、ひよりさんへと明るい声で言う。

 

「ひよりさん。今日の放課後、どこか遊びに行かない?」

 

「えっ……!?」

 

 驚いて顔を上げたひよりさんの、ぽかんとした表情についつい笑みがこぼれてしまう。

 できる限り優しく、そして気遣いを感じさせない軽い口調で、僕は彼女へと同じことを二度言った。

 

「今日、どこかに遊びに行こうよ。嫌なことがあったら、ぱーっと遊んで忘れちゃうのが一番だって! どこにでも付き合うからさ、ひよりさんの好きなところに遊びに行こう!」

 

「雄介くん……!」

 

 驚いたひよりさんの表情に、少しだけ喜びの色がにじむ。

 まだまだ小さいけど、ひよりさんに笑みが戻ったことを喜ぶ僕へと、彼女はおずおずとした様子で言ってきた。

 

「それってさ……デートのお誘い、ってこと?」

 

「えっ……?」

 

 ひよりさんの口から飛び出した言葉に、今度は僕が驚く番だった。

 確かに言われてみれば、これはデートの誘い以外の何物でもないわけで……自覚はなかったが、我ながら大胆な真似をしたものだと苦笑しながら、僕は答える。

 

「そうだね。うん……デートのお誘いです。ひよりさんが良ければだけど、受けてもらえる?」

 

「あはっ……! 喜んで、お受けいたしましょう!」

 

 少しだけ不安もあったが、素直に彼女の言葉を肯定しつつ改めてデートに誘えば、ひよりさんは嬉しそうに笑いながらOKしてくれた。

 恥ずかしくはあったが、この笑顔を見せてくれるのならば十分にお釣りはくると……そう考える僕へと、ニヤニヤと笑うひよりさんが言う。

 

「それにしても、雄介くんも随分と大胆になりましたな! 連絡先を聞いてきたと思ったら、次はデートのお誘いですよ!?」

 

「笑わないでよ。こっちも結構恥ずかしかったり、緊張とかしてるんだからさ」

 

「ごめん、ごめん! ……嬉しいよ。雄介くんに誘ってもらえて、すごく嬉しい」

 

 ケラケラと笑った後、優しい微笑みを浮かべたひよりさんがしんみりとした声で言う。

 実感がこもっているその声にドキッとしてしまった僕は、赤くなりそうな顔を必死に冷ましながら彼女へと質問した。

 

「そ、それで、どこに行く? 遊びに行きたい場所、ある?」

 

「んっふっふ~……! 実は前々から行きたかった場所があるんだよね~! ちょ~っとばかりお金がかかるかもだけど、大丈夫?」

 

 そう質問してくるひよりさんに、大きく頷いて返事をする。

 先日のバイト代が入るし、家に入れる分を除いてもお小遣いとしては十分。家事当番も今日は雅人だから急いで家に帰る必要もないし、問題は何もない。

 

「それで、ひよりさんが行きたい場所ってどこなの?」

 

 HRが始まる寸前、確認のためにひよりさんに聞いてみれば、彼女はにんまりと笑みを浮かべてみせた。

 そうした後、実に楽しそうに笑いながらその答えを述べる。

 

「それはね――!!」

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