ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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夏休み、最後の思い出を君と

「お義母さん、大丈夫? 大分酔っ払ってたみたいだけど……?」

 

「よくあることだよ。多分、夜中にでもシャワーを浴びに起きてくるさ」

 

 送別会の中でたっぷりお酒を飲んだ母は、ちょっとして完全におやすみモードに入ってしまった。

 弟たちと協力して布団に母を転がした僕は、代わりに後片付けをしてくれているひよりさんに感謝しながら言う。

 

「面倒事を任せちゃってごめんね。おかげで助かったよ、ありがとう」

 

「いいの、いいの! あたしもお腹いっぱい食べさせてもらったし、何より夏休みの間、ず~っとお世話になったからね!」

 

 使った食器を乾燥機に並べ、ホットプレートも洗い終えて……手を拭きながら笑顔を見せるひよりさんが、僕へと言う。

 そうした後、彼女は小さくため息を吐いた後でこう言葉を続けた。

 

「楽しかったな~、夏休み。雄介くんたちと過ごせて、本当に楽しかった。人生で一番楽しい夏休みだったよ!」

 

「そう言ってもらえて嬉しいよ。僕も楽しかったし、母さんも弟たちも同じだと思う」

 

「うん! ……色んなところに行って、みんなでご飯を食べて、家族団らんを楽しんで……うん、最高だった。すごい楽しい毎日だったね」

 

 水着を買いに行くことから始まり、クラスのみんなとプールに行ったり、朝早くから朝食を食べるだけのデートもしたし、弟たちの部活の応援にも行ったり、家族みんなでホラー特番を見たりもした。

 今も夏休みにやり残したことを全力でやり尽くしている最中で……きっと、振り返った時に楽しかったって思える出来事がまだまだいくつも存在しているんだろう。

 

 僕たち家族の中に、もう一人の家族が加わって過ごしたこの夏休みは、本当に楽しかった。

 お盆に帰ってきた父も、きっと同じように思ってくれているはずだ。

 

「一層、雄介くんたちとの距離が縮まりましたな~! 変な形ではあったけど、終わり良ければ総て良しってことで!」

 

「そうだね。もう何も心配することはないんだから、ひよりさんも安心して生活できる。その言葉がぴったりかもね」

 

「面倒な幼馴染とのいざこざも、その浮気相手からのストーキングも、全部無事に解決!! 雄介くんの家に預けてくれたことも含めて、色々と両親に感謝だね! あ~っ、良かった!!」

 

 両腕を大きく上げ、万歳をしながらひよりさんが言う。

 楽し気に全部が解決したことを喜ぶ彼女であったが……不意に寂し気な表情を浮かべると、小さな声で呟いた。

 

「……でも、楽しい夏休みもこれで終わりだね。やっぱ、寂しいな……」

 

 何事も、終わりはやってくる。楽しい夏休みだって、残念ながら終わらないことなんてない。

 この同棲生活も今日で終わって、明日にはひよりさんは新居に戻っていって……明後日には、また何事もなかったかのように学校が始まるのだ。

 

 そんなふうに過ぎていく時間をひよりさんが惜しむ中……ピピピッ、というお風呂が沸いたことを伝える通知音が響いた。

 

「おっ! お風呂が沸いたな! さて、じゃあラストだし、今日はあたしが一番乗りしちゃうか~!?」

 

「ちょっと待った! ……お風呂は後にしてもらえる?」

 

「ほぇ……?」

 

 しんみりとした空気を払拭するように元気よく言ったひよりさんへと、僕が待ったをかける。

 予想外の反応に驚く彼女へと、僕は笑顔を見せながら言った。

 

「色々振り返ってるところに悪いけど……まだ、夏休みは終わらないよ。僕のしたいことに付き合ってもらわないと」

 

「えっ!? このタイミングで!?」

 

「そうだよ。むしろ、この時間じゃないとできないことだから、ずっと待ってたんだ」

 

 そう……今日は出掛けたり、焼肉を食べたりと色んなことをしたが、まだ僕の『夏休みにやり残したこと』に付き合ってもらってはいない。

 僕だって何も考えずにいたわけじゃないし、やりたいことはある。ただ、夜にならないとできなかっただけだ。

 

「準備はもうできてるし、出掛けようか。夏休み最後の思い出を作りにさ」

 

「うっ、うんっ!!」

 

 このタイミングで僕から提案されるとは思っていなかったのか、ひよりさんは大いに驚いている。

 だけど、同時にまだ楽しいイベントが残っていることを知って、喜んでいるようにも見えた。

 

 こうして、家のことは弟たちに任せた僕は、彼女を連れて近所の公園へと向かう。

 秋の涼しさと夏の暑さが入り混じる、程良い気温の中……誰もいない夜の公園で、僕たちは楽しい遊びに興じ始めた。

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