ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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四章プロローグ・新学期の僕とひよりさん
新学期の朝、いつもと違う朝


「じゃあ、いってきます」

 

「いってらっしゃい、気を付けてね」

 

 九月一日、朝七時過ぎ……久しぶりに制服に袖を通した僕は、母に声をかけてから家を出た。

 ドアを開けて外に出れば、少し前までの夏の暑さがうそであるかのような涼し気な風が頬を撫でてくる。

 

 もう秋なんだな……と改めて思った僕は、そのまま久方ぶりに通い慣れた学校までの道を歩く……のではなく、反対方向に向かう。

 とはいっても、一分程度で目的地である家に辿り着いた僕は、チャイムを鳴らして挨拶をさせてもらった。

 

『はい、七瀬です』

 

「おはようございます、尾上です」

 

『ああ、雄介くん。わざわざありがとうね。玄関の鍵は開いてるから、中に入って待っててちょうだい』

 

 インターホン越しに聞こえてきた睦美さんの声に軽く頭を下げつつ、お言葉に甘えて家の中に入る。

 そうすれば、バタバタという慌ただしい足音と共に僕が一番会いたかった人が姿を現してくれた。

 

「うわわわっ! おはよう、雄介くん! ちょっと待っててね!!」

 

「おはよう、ひよりさん。そんなに慌てなくて大丈夫だよ」

 

 多分、ほんの数十秒前まで朝食を取っていたであろうひよりさんの慌てた様子に苦笑を浮かべながら、彼女に挨拶をする。

 僕が迎えに来たことに慌てている彼女は、そのまま玄関近くの階段を勢いよく上っていったのだが……その際、ふわりと浮かび上がったスカートの中身が見えてしまった。

 

「ぶっ……!?」

 

 大きなひよりさんのお尻を包む、白いパンツ。

 一瞬だけだが、はっきりと見えてしまったそれの記憶を脳内から弾きだすようにぶんぶんと首を振る僕へと、リビングからやって来た睦美さんが声をかけてくる。

 

「迎えに来てくれたのに、待たせてごめんなさいね。あの子もまだ夏休み気分が抜けてないのか、少し寝坊しちゃって……」

 

「仕方がないですよ。引っ越したばかりで色々慣れてない部分もあるでしょうし、僕は気にしてませんから」

 

 動揺していた心をどうにか落ち着かせ、睦美さんへと応える。

 先の場面を見られていたら相当気まずいことになっていたなと考えていたところで、荷物を手にしたひよりさんが階段を駆け下りてきた。

 

「待たせてごめん! 準備できたよ!!」

 

「もう、少しは落ち着きなさい。慌ただしくて見てられないわよ?」

 

「あはは……! じゃあ、行こうか?」

 

 睦美さんの言葉に心の中で同意しつつ、苦笑を浮かべた僕が軽く頭を下げて彼女に挨拶をする。

 睦美さんに手を振られながら家を出た僕たちは、学校への道を歩きながら少し話をしていった。

 

「いや~、久しぶりの学校だね~! 一か月ぶりくらいなのに、なんかすごい期間が空いてた気がするよ!」

 

「そうだね……ところでひよりさん? ちょっと聞きたいことがあるんだけど……?」

 

「あっ、気付いた? ふっふ~ん……!」

 

 どこか得意気な表情を浮かべたひよりさんが、自慢の大きな胸を大きく張る。

 軽く揺れたように見えるそこに若干目を奪われながらも、僕は彼女の胸元に目を向けた。

 

 本来ならば、女子であるひよりさんの首元には学校指定のリボンがあるはずなのだが……その代わりに、細く長いネクタイが巻かれている。

 胸元まで伸びるそれが夏休み最後の日に僕がプレゼントしたものだと理解したところで、いたずらっぽく笑った彼女が口を開く。

 

「へっへ~! 早速使わせてもらっちゃった! あ、念のためちゃんとリボンも持ってきてるから、安心してね!」

 

「なんかちょっと恥ずかしいね。うん、恥ずかしい……」

 

「いいじゃん! 仲のいい人たちはあたしたちが付き合ってること、知ってるんだしさ!」

 

 女子たちの間には、彼氏のネクタイを貰って身に着けるというお遊びのようなものがあるようだ。

 中学時代から聞いてはいたが、実際に自分がそれをされる側になると妙にこそばゆい気分になってしまう。

 

 ただ、そんなふうに自分のネクタイを着けて笑ってくれるひよりさんの姿を見ていると、嬉しい気分になることも確かで……それがまた恥ずかしさを加速させていたが、止めてほしいという気持ちにもならなかった。

 

「ふふふ……っ! なんかいいね、こういうの。恋人と一緒に登校するって、楽しいや!」

 

「うん、そうだね……最高の気分かも」

 

 いつもと同じ道を歩き、いつもと同じように学校に向かう。

 ただ、僕の隣には大好きなひよりさんがいて、とても愛らしい笑顔を見せてくれている。

 

 これから毎日、こんなときめきを感じながら登校できるだなんて最高だなと思いながら、僕はひよりさんと手を繋ぎ、学校に続く道をゆっくりと歩いていった。

 

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