ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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親友の恋も動き出す

「いや~! 新学期早々に見せつけてくれますね~!」

 

「ホント、夏も終わったっていうのに、この二人はいつまでも熱々なんだから」

 

「ぐへへへへへ……!! そんな褒められると照れちゃいますな~!」

 

 新学期が始まったその日の昼休み、熊川さんと鉢村さんと話をしているひよりさんの悪役っぽい笑い声が聞こえてきた僕は、その会話の内容に苦笑を浮かべる。

 元々、夏休みの間に仲のいいメンバーには報告してはいたが、新学期早々に二人で登校&ひよりさんが僕のネクタイを巻いて登場というコンボをかました結果、いきなり話題を搔っ攫ってしまった感じだ。

 

 おかげで僕は男子たちからからかわれるわ、恨みを込めた目で見られるわで大変だった。

 だがまあ、クラスのみんなは僕たちのことを改めて祝福してくれたし、いい友達に恵まれていると思う。

 

 そんなこんなで昼休みを迎えた僕たちは、昼食を取りながら一息ついている真っ最中だ。

 二人そろっているとまた質問攻めに遭う可能性があるため、今日は男女で分かれてご飯を食べている。

 

(まあ、夏休みの間に一緒にご飯は食べ続けてたわけだし、今日も晩ご飯を一緒に食べる予定だしな~)

 

 既に一緒に食事をすることが当然みたいになってしまっている僕たちにとっては、別々に食事を取ることが珍しいと思えるようになっていた。

 そんなことを考える僕へと、購買で買ってきたパンをかじりながら楽人が言う。

 

「改めてだけど、おめでとさん。色々問題も解決したみたいだし、これで遠慮なく七瀬さんとイチャイチャできるな」

 

「ありがとう。楽人にも、色々迷惑かけちゃったね」

 

 江間の浮気から始まった数々の騒動を知る楽人へと、感謝の気持ちを伝える。

 秘密を共有したり、相談に乗ってもらったりしたおかげでぐっと距離が縮まった彼とは親友のような関係になっていて、今もこうして色々と話をしながら食事をしている最中だ。

 

 それに、バスケ部である楽人は同じバスケ部でマネージャーをしている紫村さんの状況を把握している。

 何かあったら報告してくれると約束してくれてはいるが、今は彼女の様子がおかしいということくらいしかわかっていないそうだ。

 

 ただ、何もないなら僕もひよりさんもそれでいいと思っているし、楽人が報告するような内容が無い方が平和でいいだろう。

 新チームも始動したばかりの色々と大変な時期に親友に妙な気苦労をかけたくないと考える僕へと、パンの包み紙をくしゃくしゃに丸めた楽人が声をかけてくる。

 

「にしても、お前はすげえよな~。江間のことも紫村さんの問題も一緒になって解決したわけだし、そりゃあ七瀬さんだってベタ惚れになるわ。告白も自分からしっかりしたわけで……意外と男らしいところあるよな」

 

「意外は余計じゃない? まあ、実際自分のイメージに合ってないとは思うけどさ」

 

 褒めてもらえてるんだろうけど、と苦笑しながら楽人に反応をした僕であったが、そこで彼の目線が僕ではなくその背後にいる熊川さんに向けられていることに気付いた。

 

 仲良し女子三人組で話をしている熊川さんたちがその視線に気付く気配すら見せない中、小さく息を吐いた楽人が言う。

 

「熊川さんさ、文化祭のクラス委員に立候補するつもりみたいなんだ。だから俺も男子の役員として立候補しようかなって……」

 

「えっ……?」

 

 楽人が熊川さんに好意を寄せていることは知っている。その上でのこの発言はつまり……勝負を仕掛けるということなのだろう。

 急といえば急だが、あまりにも唐突というわけでもない彼の決意に驚く僕へと、楽人はこう言葉を続ける。

 

「お前を見てて、思ったんだよ。見てるだけじゃ何も始まらないって。バスケでもそうだろ? ただボールを持ってるだけじゃ得点は入らない。外れるかもしれねえけど、シュートを打たないで勝てる試合なんてないんだ」

 

「楽人……」

 

「まあ、大外ししちまう可能性が高いんだけどさ……そうなったら笑いながら慰めてくれ、頼んだ」

 

「……笑わないよ。それに、きっと上手くいくさ」

 

 一歩踏み出す勇気を胸に、勝負を仕掛けることを宣言した親友へとエールを送る。

 同時に、今度は僕が彼にパスを出す番だと、花火大会の日にできた借りを返す時が来たことを感じ取った僕へと、照れ臭そうに笑いながら楽人が言った。

 

「サンキューな、雄介。頑張ってみるわ」

 

「うん、応援してるよ。僕にできることがあったら、何でも言って」

 

 楽人の恋路が上手くいくことを心の底から祈りながら……僕は、親友の決意を見届け、同時にその背を押すのであった。

 

 

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