ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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状況も気分も最悪なまま新学期が始まってしまった……(二奈視点)

 ――状況も気分も最悪なまま、新学期が始まってしまった。

 私の今の心境を語るとすれば、それ以外にない。本当に、何もかもが……最悪だ。

 

 夏休みに入る頃から感じるようになった謎の視線……最初は無様にも周囲からの評価を落とした江間仁秀が私に付き纏い始めたのだと思っていたが、それは違うという事実を証拠付きで突き付けられてしまった。

 事実、新学期になってもあいつは学校に来ていない。それなのに、私は今もどこかから自分を見つめる視線を感じている。

 

 人が多い学校にくれば、生徒以外はいないここならば、安心できると思ったのに、その期待すらも裏切られた。

 私はこれから、どこにいるのかも誰なのかもわからないストーカーに怯えながら生活するしかないと考えると、気が狂いそうになる。

 夏休みの間に手懐けた男子たちのガードも役に立っているのかどうかわからない状況で……毎日が不安で不安で仕方がない状況だ。

 

(寿司屋で会ったあの大男みたいに、私の情報を知ってる奴らが大勢いるかもしれない。ってことは、私の情報をばら撒いてる奴もいる。そいつはどこまで私のことを知ってるの……!?)

 

 私には姉の彼氏から始まり、多くの男を奪っては数々のカップルを破滅させてきた秘密がある。

 そのことを、ストーカーは知っているのだろうか? もしそうだとしたら、その秘密をどこかで言いふらしているのではないだろうか?

 

 そんなことになったらキラキラの一軍女子という私の立場が崩れ去ってしまう。

 それは阻止しなければならないとは思っているが、犯人がわからない以上、手の打ちようがない。

 

(ムカつく……ムカつくムカつくムカつく! ムカつくっ!!)

 

 姿の見えない犯人に怯えさせられ、秘密を握られているかもしれないと不安にさせられているのに、何もできない。そんな状況は私のプライドを大きく傷付けていた。

 どうしようもない苛立ちを覚えながらトイレを出た私は、そこで話をする男子たちの声を耳にして、足を止める。

 

「なあ、聞いたか? C組の尾上と七瀬の話!」

 

「ああ、知ってるよ。付き合ってるんだろ?」

 

「ちっ……!!」

 

 興奮気味に語る男子たちの口から飛び出した、死ぬほどムカつく女の名前。

 七瀬ひより……私が今、一番聞きたくない女の名前を耳にして、小さく舌打ちを鳴らす中、それに気付いてもいない男子たちが話を続ける。

 

「いいよな~、尾上の奴。七瀬、顔もかわいいし胸もデカいしさ~! あんな子が彼女だったら、絶対に毎日楽しいだろ!?」

 

「あんなパッとしない奴なのに、どうして七瀬を彼女にできたんだろうな?」

 

「えっ? お前、知らないの? 七瀬の奴、A組の江間に付き纏われてたらしいぜ。それで不安になってたところに上手いこと近付いたんだろ」

 

「うわっ! 尾上って意外とやり手なんだな~! あ~、くっそ。俺もそれを知ってたら、同じようにやったのにな~。そうすれば、あのデカパイを好きにできたってことだろ?」

 

 ギャハハ、と下品な会話をしながら下品に笑う男子どもの会話を聞いていると、苛立ちがさらに募ってくる。

 七瀬の奴、どうして私より幸せそうにしている? あいつは私に彼氏を奪われた負け組で、しかも尾上みたいなパッとしない奴に弱っているところを狙われ、まんまと捕まってしまった馬鹿ではないか。

 

 それなのにあいつは……能天気に笑って、楽しそうにしている。

 ムカつく。私がこんな目に遭っている責任の一端はあいつにあるというのに、そんな私の前で「あたしは今、とっても幸せです!」みたいな面をしているあの女が、憎くて憎くて仕方がない。

 

 本来ならばあいつは引きこもりになって、惨めになって、私を満足させるための道化になっていたはずなのに……と考えたところで、私はいい案を思い付いた。

 

(そうだ、同じことをしてやればいいんだ……! またあいつから彼氏を奪ってやればいいんだ!)

 

 七瀬への復讐も、私を守るボディガードの確保も、どちらも果たすことができる。

 尾上も江間に浮気されて弱っていた七瀬に手を出し、自分の女にするような男だ。江間と同類だし、簡単に落とせるはず。

 

 ボディガードは確保できずとも、私にまた男を奪われたとあれば七瀬もトラウマになるだろう。

 そうすれば、今度こそあいつは惨めに泣きじゃくる無様な女と化すはずだ。

 

(ストーカーの問題は後回しにしよう。まずは、七瀬の幸せそうな面を泣き顔に変えてやる……!!)

 

 正体のわからないストーカーへの対処よりも、目の前の七瀬への復讐が先だ。

 そう決意した私は、じっくりと策を練るべく頭を働かせていった。

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