ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ごめん、ちょっと質問してもいいかな?」
「おお、雄介。もちろんいいぜ! なんでも聞いてくれ!」
手を上げた僕の発言に対して、楽人が笑顔で言う。
その言葉に甘えることにした僕は、早速質問を投げかけていった。
「文化祭当日、料理を作る場所って家庭科室だよね? どのくらいのスペースが使えるとかわかる?」
「その辺はまだなんとも言えないけど、コンロとか包丁とかは十分使える割り振りになる予定みたいだな」
「ありがとう。それと、作り置きは禁止って言ってたけど、調理全般を文化祭当日にした方がいいってことなのかな?」
「そうだな。文化祭の朝に材料全般が届くようにして、始まるまでに準備を終わらせておくって形がベストらしい」
「そっか……わかった、ありがとう」
調理スペースや器具に関しては、一般家庭の台所と同じと考えて良さそうだ。
同時に、食中毒対策として当日中の調理が推奨されているとなると……と色々考える僕へと、熊川さんが言う。
「尾上くん、料理得意だったよね? なにかいい感じの料理とか思い付かないかな?」
「う~ん、そうだなぁ……」
ちょっとプレッシャーを感じるけれど、僕もクラスの一員として貢献したい気持ちはある。
屋内で食べる。簡単に作れる。準備も簡単。インパクトも欲しい。そしてお祭り感のある料理といえば……と頭の中にインプットした情報から候補を絞り込んでいった僕は、その果てに出した答えをみんなの前で発表した。
「たこ焼きなんてどうかな? 意外と簡単だし、色んな条件も満たせると思うよ」
「たこ焼きか……! 確かにお祭りの定番の一つだよな」
楽人が僕の出した意見に賛成の言葉を述べながら黒板に大きく『たこ焼き』の文字を書く。
少し緊張している僕に対して、クラスのみんなが色々な質問を投げかけてきた。
「意外と簡単って本当? なんかちょっと難しいイメージがあるけど……?」
「そうでもないよ。生地は専用のミックス粉があるし、その中にたことか細かく切った材料を入れて焼くだけだからさ。少なくとも、大きさにバラつきが出ちゃうかもしれないお好み焼きとかよりは簡単だと思う」
「祭りの定番っていったら他にも焼きそばとか唐揚げとかあるじゃん? そっちはどう思う?」
「焼きそばもいいけど、屋内で調理すると最大の武器である香りが無駄になっちゃうからね。そこはもったいないし、野外でお店を構えてる人たちに譲った方がいいかなって。あと、唐揚げは万が一にも火が通り切ってない状態で提供しちゃった時が怖いから、避けた方がいいと思う」
「たこ焼きなら俺でも作れそうだけど……インパクト、あるか?」
「そこはロシアンたこ焼きとかも提供すれば大丈夫じゃないかな。普通のたこ焼きだけじゃなくてそういうネタ料理も提供すれば、十分インパクトも出せると思うよ」
自分でも驚くくらいにすらすらと質問に答えていけば、みんなも「なるほど……!」といった様子で納得してくれたようだ。
同時に、前向きにたこ焼きという案を検討し始めてくれる。
「たこ焼きか……確かに練習すれば私でも作れるようになるかも……!」
「アレンジのし甲斐もあるよな! ロシアンたこ焼き以外にも中身を変えたやつとか用意してみようぜ!」
「待った! それだと中に何を入れたかわかんなくなって、間違った商品を提供しちゃう可能性もあるでしょ? アレンジするならソースの方にしない?」
「たこ焼き機に関しては家庭科室にあるわけないから、そこはレンタルしないとだね。幾つ必要になるかな……?」
「飲み物も用意してさ! たこ焼き喫茶とかにしようぜ! そんで、ロシアンたこ焼きでハズレ引いた奴に高値でドリンク売りつけるあこぎな商売しよう!」
「よし! みんなも乗り気だし、うちのクラスの出し物はたこ焼き喫茶にしよう! 案が通ったら調理担当と接客担当の調整とか、必要な物を洗い出すって感じでいこうぜ!」
反対意見がないことを確認した楽人が黒板に書いた『たこ焼き』の文字に大きく花丸を描く。
というわけで、僕たちのクラスの出し物は無事に決まり……楽しそうな雰囲気の中、第一回目の会議は終わりを迎えるのであった。