ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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「恐ろしく自然なイチャ付き、俺でなきゃ見逃しちゃうね」by雅人

「……で、今日の晩飯がたこ焼きに決まったってわけ」

 

「謎ポーズ決めてるところ悪いけど、ふざけてるとお前の分の飯が食われるぞ」

 

「ヘイッ! 何やってんだ、お前らっ!? 譲り合いの精神を持てよ!」

 

 文化祭の出し物がたこ焼きにほぼ決まったのと同時に、僕は楽人から調理に関するあれこれを任されることになった。

 料理は嫌いではないし、たこ焼きにしようと提案したのも僕だし、何より友人のためならば断わる理由なんてない。

 というわけで早速、練習兼バリエーション開発のため、家族の協力の下、僕はたこ焼き作りに励んでいた。

 

「それにしてもたこ焼きなんて久しぶりね~! 何年ぶりかしら?」

 

「作ろうと思うと地味に面倒ですもんね。あたしの家にはそもそもプレートがないですし、雄介くんの家に置いてあって助かりました」

 

 そう言いながら、ひよりさんも大きく口を開けてぱくりとたこ焼きを頬張る。

 当たり前のように我が家で食事している彼女も、僕の仕事に協力してくれていた。

 

「うん! やっぱりこの味だよね! 定番にハズレ無しって感じ!」

 

「刻みねぎに揚げ玉、紅ショウガを生地に混ぜてタコをドン。このレシピを弄る必要はないんじゃね?」

 

「僕もそう思う。あとはバリエーションに関してだけど……とりあえず、中身を変えるのは止めておくべきなんじゃないかって考えてる」

 

「ええっ? 折角こんなに試作品を作ったのに!? このエビマヨとか、結構美味いぞ!? 折角だから出せばいいのに……!」

 

「デザート系のたこ焼きもあると女の子からも人気が出そうじゃない? それも無し?」

 

「うん、そのつもり」

 

 普通のたこ焼き以外にも中身をエビマヨにしたり、チョコレートを入れたデザートたこ焼き(タコが入っていないからたこ焼きではないとは思うが)を試作してみたが、これは出さない方がいい気がする。

 種類を増やせばその分、生地も別のものを用意しなければならない。調理作業は複雑化するし、料理に慣れていない人たちがそこでてんやわんやになる可能性を考えるとメニューは絞った方がいいだろう。

 

 それに、プレートの問題もある。

 ロシアンたこ焼きを提供することを考えるとそれ専用の小さなプレートが欲しいところだし、文化祭で提供する量やペースを考えると、大きなたこ焼き用プレートが三台は必要だと思う。

 

 種類を増やすと、どのたこ焼きをどのプレートで作っているのかわからなくなる問題が発生するかもしれない。

 例えばエビアレルギーの人に誤ってエビマヨたこ焼きを出してしまったら大問題になるし、メニューの取り違えをなくすためにも中身に関しては全部共通にした方がいいだろう。

 

「はぁ~、なるほどな~。確かに俺らは料理に慣れてるから大丈夫だろうけど、そうじゃない人たちも絶対にいるもんな」

 

「忙しくなったらどこで何のたこ焼きを作ってるかわかんなくなるってこともあるだろうし、絞った方が無難か」

 

「でもやっぱり、基本メニューが普通のたこ焼きオンリーってのは寂しいよね。そこはどうにかしないと……あ、雄介くん、あ~ん!」

 

「あむっ、んっ……ありがと、ひよりさん。だからバリエーションに関しては、トッピングやソースで増やそうと思ってるんだ」

 

「待ってくれ。今なんかおかしなやり取りなかったか?」

 

「恐ろしく自然なイチャ付き、俺でなきゃ見逃しちゃうね」

 

 料理を続けている僕に、ひよりさんが軽く息を吹きかけて冷ましてくれたたこ焼きを食べさせてくれる。

 僕がレシピ通りに作っても美味しいたこ焼きの味に満足しつつ、弟たちの話を聞く中、母が口を開いた。

 

「ソースとトッピング、いいんじゃない? 野菜やタコのカットとか生地作りは家庭科室でやって、教室ではたこ焼き作りとトッピングをするって形にすれば、色々スムーズにいきそうだしね」

 

「あとはそのトッピングをどうするかだよな……」

 

「パッと思い付くのってやっぱねぎだくポン酢たこ焼きとかか? あとは全然わかんねーや」

 

 作業の流れなんかは見えてきたが、問題はたこ焼きのトッピングについてだ。

 先ほど、母も言っていたようにたこ焼きなんて滅多に作らないし、食べるのも夏祭りくらいのものだろう。

 

 実際、トッピングに変化を付けると言われてもパッと思い付くものなんてないし……と悩む僕へと、笑顔のひよりさんが言う。

 

「だったら実際に食べに行けばいいんだよ! たこ焼きの専門店なんていっぱいあるんだし、次の休みに一緒に遊びに行って、研究しよう!」

 

「そうだね……そうした方が良さそうだ」

 

 確かに探さずともたこ焼き屋さんなんてすぐに見つかるし、食べに行けば実際に作れたり人気が出そうなメニューも判断しやすいだろう。

 『百聞は一見に如かず』なんてことわざもあることだ、ここはひよりさんの言う通り、実際に食べて判断しよう……と僕が結論を出したところで、弟たちの会話が聞こえてきた。

 

「見たか、あのスムーズな流れ……! デートが決まるまで十秒もかからなかったぜ?」

 

「あの二人、文化祭準備にかこつけてデートの予定を作りやがった。流石だぁ……!」

 

「甘いな。別に文化祭の準備があろうとなかろうと、僕はひよりさんとデートしてたね」

 

「目的地がたこ焼き屋以外になってただけだね!」

 

「わァ……ぁ……!」

 

「開き直られちゃった!」

 

 小さくもかわいくもない弟たちの反応をスルーしつつ、最後に作り上げたたこ焼きを皿へと乗せる。

 というわけで、僕たちは次の休日にたこ焼き屋さんに研究も兼ねてデートに行くことが決まったのであった。

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