ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「うわっ、思ったより混んでるね……!」
「そうだね……こういうお店って夜の方が混むと思ったけど、違うのかな……?」
電車に乗って数十分、調べておいたお店に着いた僕たちは、思っていたよりも賑わっている店内の様子を見て、少し驚いた。
『たこ焼き酒場 ごおるでん』という名前の通り、ここはたこ焼きをおつまみにお酒を飲むようなお店だと思っていたから、昼間は空いていると考えていたのだが……その予想は間違いだったようだ。
今日が特別なのか、それとも平常運転なのかはわからないが……それは一旦置いておくことにしよう。
幸いにも席は空いていたので、無事にお店に入ることができた僕たちは、早速メニューを確認し、どんなたこ焼きがあるのか見ながら話を始めた。
「ふんふん! 普通のたこ焼きにねぎたっぷりポン酢たこ焼き、あとは明太マヨたこ焼きなんかもあるんだね!」
「へぇ~……! 照り焼きソースにタマゴサラダを乗せたたこ焼きなんかもあるんだ……!」
「あはっ! こっちは紅ショウガマシマシたこ焼きだって! こう見ると意外と種類があるんだね!!」
流石はたこ焼きを売りにしているお店だけあって、種類が数多く揃えられている。
ソースとトッピングだけでもかなりのバリエーションがあることがわかって、僕たちもちょっとテンションが上がってきた。
「あとは実際に食べてみて、美味しいかどうかだよね。それと、あたしたちでも作れるかを確認しないと」
「とりあえず、気になるやつを頼んでみようか。定番のたこ焼きと、それから――」
色んな種類があることはわかったが、あとはそれを僕たち高校生が再現できるかどうかだ。
美味しいかどうかも気になるところだし、そこは実食するしかない。
というわけで、ノーマルなたこ焼きも含めて何種類かのたこ焼きと飲み物を注文した僕たちは、完成を待つ間に店内の内装を見てみることにした。
椅子に座ったまま、首を動かして椅子やテーブルなどを確認しながら、文化祭当日の飾り付けの参考にできそうな部分を探していく。
「やっぱりテーブルは四角いのが基本なんだね。普段使ってる机をくっ付けて再現しようか」
「となると、テーブルクロスも必要だね。飲み物がこぼれたり、ソースで汚れた時のことも考えて、多めに用意していく必要がありそうだ」
「あとはやっぱり、調理場とお客さんたちのスペースを分ける仕切りも要るよね? ただのボードだと殺風景で寂しいし、いいのがあるといいけど……」
「注文を受けるレジの場所も考えないとね。それと、オーダーがスムーズに通るようにしておかないと、忙しくなった時にトラブルになっちゃいそうだ」
ただたこ焼きを作るだけでなく、お店という形で提供するとなるとやることも考えなければならないことも山ほど生まれる。
その一つ一つを考えながらお店の中を見回していた僕は、隣の席に疲れた様子のサラリーマンさんたちが座る様を目にして、軽く彼らを観察する。
(土曜日なのにスーツ姿って珍しいな。時間も早いし、まさか今まで仕事だったとか……?)
目の下にクマがあるサラリーマンさんたちは、もしかしたら徹夜で仕事をしていたのかもしれない。
だとしたら、こんな時間だが仕事終わりに一杯やろうという感じでこのお店を訪れたのかも……という僕の予想は、見事に的中した。
店員さんにビールやらサワーやらの注文をする彼らに心の中で本当にお疲れ様ですと伝える中、対面の席に座っていたひよりさんがくすくすと笑う。
「ん? ひよりさん、どうかしたの?」
「なんか、あたしたちって別に文化祭の実行委員でもないのに、一生懸命頑張ってるなって思ってさ。お店で出すメニューだけじゃなくって内装まで考えちゃってるし、今からでも優希たちと交代した方が良くない?」
そう言われた僕も、確かにと思いながら小さく噴き出す。
自分で言うのもなんだが、実に真面目で協力的な生徒じゃないかと思いながら気を取り直した僕は、笑みを浮かべたままひよりさんへと言った。
「確かにちょっと考え過ぎだったね。内装とかは楽人と熊川さんに任せて、僕たちはメニュー作りに集中しようか」
「うんうん! 文化祭はみんなで協力してやるものなんだし、雄介くんが何でもかんでもやるのは違うもんね! というわけで、実食のお時間です!!」
ちょうどそのタイミングで、たくさんの種類のたこ焼きを乗せたトレイを手に、店員さんが近付いてきた。
注文した料理がテーブルに並べられていく様子と、実に美味しそうなたこ焼きたちを眺める僕たちは、メニュー開発の参考のため……という名目の下、美味しいたこ焼きを楽しむデートを楽しんでいく。