ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ふわぁ~……! 外はカリカリ、中はふわふわ! やっぱりたこ焼きの定番といえばこれだよね!」
「うん。この形が嫌いな人はいないだろうし、形としてはこれがいいね。ただまあ、焼き続けると体が油臭くなっちゃいそうなところが心配かな?」
ずらっとテーブルに並んだタコ焼きの中から、まずはオーソドックスなたこ焼きを頬張る。
出来立て熱々のたこ焼きは皮はカリッと香ばしく、中はふわふわとろとろで、定番かつ王道の内容だ。
ソースとマヨネーズという絶対に間違いない味付けに加え、青のりとかつお節という基本中の基本といったトッピングのたこ焼きは、まさにお手本といった感じだった。
「まあ、作り方とか素材は真似できないと思うけど、こんな感じを目指していきたいって基本は見えたね! あとはバリエーションの研究ってことで、こいつもいただきま~す!」
そう言いながらひよりさんが手を出したのは、明太マヨネーズのたこ焼きだ。
通常のたこ焼きのマヨネーズを明太マヨに変え、さらに細かく薄いチーズをトッピングに追加したそれを頬張ったひよりさんは、満足気な唸り声を漏らしながら笑みを浮かべ、言う。
「ん~っ! 明太マヨのピリッとした味とチーズのまろやかさが絶妙なハーモニーを奏でてる~!」
「へえ、それも美味しそうだね。じゃあ、僕はこっちをいただこうかな?」
実に幸せそうなひよりさんの笑顔を見つめながら、僕はまた別のたこ焼きに手を出す。
選んだのはここまでのたこ焼きとは全く趣が違う、てりたまのたこ焼きだ。
通常のソースではなく、照り焼きソースをかけた上からタマゴサラダをトッピングしたそのたこ焼きは、甘みの強い濃厚な味わいだった。
これぞバリエーション! といった感じの全く違う味わいながらしっかりたこ焼きとして作られているてりたまたこ焼きを味わった後、僕たちは揃って同じたこ焼きに手を伸ばす。
「明太マヨに照り焼きソースと味が濃いものが続いたわけだし、ここは一旦リセットってことで……!」
「ポン酢たこ焼き、いってみようか!」
たっぷりの刻みねぎが乗せられたたこ焼きへと手を出し、同時に頬張る。
ザクッ、ザクッというねぎの食感と冷たさが熱々とろとろのたこ焼きの食感に上書きされ、やがて絡み合って……ポン酢のさっぱりとした味わいですっきりと仕上げられたそれによって、ここまでの濃厚なたこ焼きたちの味わいがリセットされていく。
「これも美味しい! さっぱりしてるから、すごく食べやすいよ!」
「そうだね。女性人気は間違いないと思う。ただ、ねぎの量が多くなっちゃいそうだな……」
「ここまでねぎだくにする必要はないんじゃない? ちょっと多めくらいに調整してみようよ」
「現実的に考えるとそうなるよね。無理のない、美味しく感じられる量がどのくらいか、今度家で作って確かめようか」
ここまで食べたたこ焼きたちの内、明太マヨとてりたまは既製品のソースやトッピングを使えば簡単に再現できる。
唯一難しそうなのは最後のねぎだくポン酢で、文化祭の店で下のたこ焼きが見えなくなるほど大量のねぎを盛り付けるのは現実的ではない。
他のたこ焼きたちもトッピング量に関しては調整する必要があるだろうし、そこはまた家で作って確認するか……と考えたところで、ひよりさんが声を弾ませて言う。
「ふふふっ! じゃあ、今度雄介くんちでタコパ開催決定だ! どうせならそのままお泊りしちゃおっかな~?」
「僕は構わないよ。母さんたちも歓迎してくれると思うし、吾郎さんと睦美さん次第だね」
「だったら絶対大丈夫だよ! そもそも、今さらって感じじゃない?」
それもそうか、とひよりさんの言葉に苦笑を浮かべながら納得する。
一か月と少しの間、同じ屋根の下で寝泊まりしていたのだ。今さら泊りがけで僕の家に遊びに行くと言ったところで、拒否反応を示すこともないだろう。
「流石に今日、帰ってからタコパってわけにもいかないし……来週のお楽しみかな? 祝日もあるし、いっそ連泊しちゃうのもありじゃない?」
「それはやり過ぎじゃない? ほどほどにが一番だよ」
今さら二日連続でひよりさんが泊まるからって何かあるわけではないが、何事も調子に乗り過ぎるのは良くない。
ほどほどがちょうどいいし楽しいのだと、そう話す僕に対して、彼女はニヤニヤと笑いながら言う。
「まあ、その話は一旦置いておくとして……今日はあ~ん、しないの?」