ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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酔っ払ったひよりさんも可愛い

「大変申し訳ございません! 当店のスタッフが、とんでもないミスを……!!」

 

 それから十分後、僕はお店のスタッフルームでたこ焼き屋さんの店長さんに猛烈な勢いで頭を下げられていた。

 

 仕事で忙しいところを抜けてきた彼の額は大粒の汗でびっしょりと濡れており、それが熱気や仕事で動き回ってかいたものではなく、この状況に対する冷や汗であることが見て取れる。

 未成年に誤ってお酒を提供してしまったのだから、焦って当然か……と思いながらも、僕は店長さんへと言った。

 

「頭を上げてください。幸い、彼女も気分が悪くなったりはしていないようですし……」

 

「本当に申し訳ありません。なんとお詫びをしたらいいのか……!!」

 

 烏龍ハイを一気飲みしてしまったひよりさんだが、今のところ体調に異変は見られない。

 アルコールを中和するためにお水も大量に飲んだし、急性アルコール中毒なんかのマズい状態になる雰囲気もないから、とりあえずは安心だろう。

 

(でもまあ、問題がないわけでもないんだよなぁ……)

 

 ――とりあえず安心とは言ったが、あくまでそれはひよりさんの体調に関する話だ。不安点が一切ない、というわけではない。

 その部分をどうするか……と考えていたところで、ガチャリと扉が開いてひよりさんが部屋の中に入ってきた。

 

「たっだいま~! めっちゃおしっこ出た~っ!! ふい~っ! すっきり~!!」

 

「あぁ、うぅん……」

 

 とても陽気に、明るく、下品なことを言うひよりさんは非常にご機嫌だ。

 普段から元気な彼女だが、今日はいつにも増してハイテンションである。

 

「ひよりさん? あんまり人の前でそんなこと言わない方がいいよ?」

 

「んにゃ~? そういうことってなに~? あたし、よくわかんな~い!」

 

 きゃはは、と楽し気に笑うひよりさんは……明らかに酔っていた。

 そこまで度数の高いお酒ではないと思うのだが、一気飲みしたせいか、あるいは元々彼女がお酒に弱いのか、かなりご機嫌な状態である。

 

「本当に……申し訳ありません。このようなことになってしまって……!!」

 

「だ、大丈夫です。半分くらいはこっちの問題な気がしますし……」

 

「にゃはは~! そんなに謝らなくても平気だって~! あたし今、ふわふわでいい気分だもんね~!」

 

 ひよりさんがこういう状態だからか、店長さんも必要以上に責任を感じているようだ。

 なんだか逆にこっちが申し訳なくなってしまうが、当のひよりさんはとても元気にはしゃいでいる。

 

「んふ~……! ごろごろにゃ~ん……! 雄介くん、もっとたこ焼き食べようよ~! あたし、まだまだお腹ぺこぺこだしさ~!」

 

「あ~……今日はもう帰るよ。ひよりさんもそんな状態だしさ」

 

「な~んで!? どうして!? あたしは別に平気だって!! まだたこ焼き食べたい! 雄介くんとデートしたい~!」

 

「あ~あ~、もう……!」

 

 僕の腕を掴み、ぶんぶんと振り回しながらひよりさんがだだをこねる。

 まるで子供のような彼女の暴れっぷりに困り果てる僕は、かといってこの状態のひよりさんを連れ回すわけにもいかないため、とりあえず店長さんに言った。

 

「あの、すいません。たこ焼きの持ち帰りってできますか? 可能なら、いくつかお願いしたいんですけど……」

 

「できます! すぐに作りますので、少々お待ちください! あっ! お代は結構です! ご迷惑をおかけしたお詫びということで、既に当店で召し上がっていただいた分の代金も無料にさせていただきます!」

 

「すいません、ありがとうございます」

 

 僕の問いかけに勢いよく返事をした店長さんが、ぺこぺこと頭を下げながら持ち帰り用のたこ焼きを作るためにスタッフルームを出て行く。

 彼を見送った後、今度は少し落ち着いたひよりさんへと声をかけた。

 

「ひよりさん、今からたこ焼きを持ち帰りで包んでもらうから、家でデートの続きしよっか?」

 

「ん~……? お家デート? 雄介くんの家でタコパするの……?」

 

「そうだよ。だから、今日は一旦帰ろうね」

 

「あはぁ……! タコパだ~! じゃあ、今日は雄介くんの家にお泊りしちゃおっと!」

 

 にへら~、と笑いながら僕の腕を抱き締めるひよりさんは、本当にかわいい。

 酔っ払ってちょっと面倒くさいところもかわいいし、お家デートを楽しみにしているところもかわいいし、お泊りすることを嬉しそうに宣言するところもまたかわいい。

 

 かわいいの嵐だなと思いつつ、僕の腕を胸に谷間に挟む勢いで抱き締めてくるひよりさんを落ち着かせている間に、大量のたこ焼きを紙袋に入れて店長さんが戻ってきた。

 

「お待たせしました! こちら、お持ち帰り用のたこ焼きになります。それとお客様、もしよろしければお帰りに使うタクシーをお呼びいたしますが、いかがいたしましょう?」

 

「あ~……すいません。ちょっと様子を見たいんで、駅まで歩いてみます。その間に酔いが覚めるかもしれませんし」

 

 店長さんの申し出はありがたいが、酔った状態でタクシーに乗り込んで、調子が急におかしくなってリバースしてしまったりしたら大変だ。

 まずは少し歩いて、ひよりさんが車に乗っても大丈夫か確かめたいと僕が答えれば、店長さんが申し訳なさそうな表情を浮かべながら封筒を差し出してくる。

 

「それでしたら、せめてこちらをお受け取りください。お帰りのお車代になります」

 

「何から何まですみません。助かります」

 

「いえ、全てこちらのミスが原因ですから。重ね重ね、この度は私共のせいでお客様に多大なるご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした」

 

 そうやって深々と頭を下げる店長さんに見送られ、僕はひよりさんを連れてお店を出た。

 そのまま、駅に向かって彼女の様子を確認しながら、歩いていこうとしたのだが……?

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