ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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幸せの重みを背中に感じながら

「ほら、立ってひよりさん。家に帰るよ?」

 

「む~りぃ~! お尻が重くて立ち上がれない~!」

 

 お店を出てすぐの道端で、ひよりさんが僕の腕を掴んだまま、しゃがみ込んでしまった。

 全体重を込めて僕を引っ張る彼女の力は意外と強く、僕も引きずったまま歩くことができないでいる。

 

 元気そうなのはいいことだが、このままだと恥ずかしい上に周りの人たちの迷惑になるよな……と僕が考える中、ひよりさんが甘えた声で言う。

 

「雄介くん、おんぶして~! あたしのこと、お持ち帰りして~!!」

 

「あの、ひよりさん? 言いたいことはわかるけど、言い方を考えようね?」

 

「お~ん~ぶ~! お~も~ち~か~え~り~!!」

 

 実際に僕の家にひよりさんを連れて帰るのだから、お持ち帰りという形に関しては間違っていないのだが、言い方が問題だ。

 お酒に酔った女の子を家に連れ込むという状況も相まって、とても悪いことをしている気分になる。

 

 僕の腕を掴みながらだだをこねるひよりさんを説得するのは難しそうだし、ここで騒いでいる間に警察がやって来たりしたら、面倒なことになるぞ……と考えた僕は、ため息を吐くと共にひよりさんへと言った。

 

「わかったよ。ほら、おいで」

 

「えへへ~……! わ~い! 雄介くんのおんぶだ~!」

 

 嬉しそうに笑ったひよりさんが、僕の背中に圧し掛かる。

 彼女にたこ焼きが入った紙袋を持ってもらい、代わりにその両脚を掴んだ僕は、立ち上がると共に駅に向かって歩き始めた。

 

「ん~……♥ 雄介くんの背中、おっきいね……♥ なんか、安心する……♥」

 

「あ、あの、ひよりさん? 胸が当たってるから、もう少し体を離してくれると助かるかな~って……」

 

「んふふ~♥ 甘いね、雄介くん! チョコレートより甘々だよ! これは当たってるんじゃなくて、当ててるの!!」

 

「どわあっ!?」

 

 そう言ったひよりさんが、思い切り僕の背中に胸を押し付けながら抱き着いてくる。

 むにゅり、と形を変える柔らかい山の感触に驚くしかない僕に対して、彼女はからかうように耳元で囁いてきた。

 

「んふ~♥ どう? 雄介くんの背中もおっきいけど、あたしのおっぱいもおっきいでしょ? 遠慮せずに楽しんじゃっていいからね~♥」

 

「楽しんじゃってって……! そういうの良くないってば! もう……!!」

 

「怒らないでよ~! 折角雄介くんにおんぶしてもらってるんだから、あたしだっていっぱいぎゅ~ってしたいんだもん!! おっぱいが当たるのは仕方ないじゃん!!」

 

「だったらせめてそう言ってよ……! それだったら許すからさぁ……」

 

「……だって雄介くんをからかうの、楽しいんだもん♥」

 

 そう言いながら体重を前に預けたひよりさんが僕の背中にさらに胸を押し当ててくる。

 抱き着く腕も脚も結構力が籠っていて、結構全力で抱き着いてくる彼女の動きに僕はさっきからドキドキされっぱなしだ。

 

「えへへ……♥ あったかいなぁ……♥ ずっとこうしてたい気分だよ……♥」

 

 そう囁いたひよりさんが、少しだけ腕と脚の力を緩める。

 程よい力加減で抱き着いてくる彼女は、すりすりと顔や胸を僕の体に擦り付け、小さく微笑んでみせた。

 

「匂い付け完了~♥ 雄介くんはあたしの彼氏だって、アピールしてやるんだいっ!」

 

「僕はひよりさんの方が心配だよ。お願いだから、大学生になっても不用意に飲み会とか行かないでね?」

 

「ん~……? そんなに心配しないでも、ここまで油断した姿を見せられるのは、雄介くんだけだって……」

 

「そう言ってもらえるのはありがたいけど、そういう問題じゃないんだよなぁ……」

 

 甘えたりしっとりしてきたり、酔ったひよりさんの感情は本当に忙しい。

 こういう姿を他の男に見せてほしくないというか、ここまで酔っ払ったら間違いなく手を出されてしまうだろうから、不用意な真似はしてほしくないなと思いながら、僕はひよりさんを背負い直した。

 

(……小さくて軽いな。だけど、ちょっとだけ重いかも)

 

 わかっていたことだが、ひよりさんは小さい。僕とは三十センチ以上の身長差がある小柄な女の子で、だから体重も軽い。

 楽々と背負える体重だけど……自分の背中に圧し掛かる確かな重みを、僕は感じていた。

 

 きっとこれは、幸せの重みってやつなんだろう。こうして背負いたい相手がいて、信頼して体を預けてくれる相手がいる。そういう幸せが形となった重みだ。

 ……まあ、本人に重いだなんて言ったらデリカシーがないと怒られるだろうから何も言わなかったが……僕は少しだけ、ひよりさんを背負えることを喜んでいた。

 

「ひよりさん、そろそろ駅だけど調子はどう? 乗り物酔いとかしなさそうだったら、タクシーに乗って……あれ?」

 

「すぅ……すぅ……んっ、ん……」

 

 そろそろ駅に到着する頃になってひよりさんに声をかけた僕であったが、彼女は僕の背中で気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 穏やかな表情で夢の世界に旅立っている彼女を見て、笑みを浮かべた僕は、ひよりさんを起こさないようにタクシーに乗り、家へと帰っていくのであった。

 

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