ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「――作り方としてはこんな感じかな。あとは出来上がったたこ焼きにそれぞれのトッピングを乗せれば、完成だよ」
「ほほ~ん、なるほどな……思ったより簡単そうで助かったぜ」
「中身に関しては全部同じだから、個別に変える必要がないのが助かるね!」
「わかりやすいレシピにしてくれてありがとうな、雄介!」
休日明けの登校日、文化祭準備に割り当てられた時間で、僕はこの週末に考えたたこ焼きのレシピをみんなの前で披露していた。
ただレシピを公開するだけでなく、イメージしやすいように実際にみんなの前で作ってみたのだが、これが結構好評でちょっと嬉しかったりする。
ひよりさんたちと話した通り、大量のワサビを入れるロシアンたこ焼き以外は全て中身の具材は同じにした。
トッピングに関してはたこ焼き屋さんで食べたものを仮案として出し、中身ではなくそこで差別化するという僕の提案にクラスのみんなも乗ってくれている。
「とりあえず、班をいくつかに分けなくちゃだよな。調理班と接客班、宣伝に回る呼び込み班も必要だし――」
「調理も教室でたこ焼きを作る班とネギとかを切る下ごしらえ班に分ける必要があるんじゃね?」
「そこよりも今は教室をどう飾り付けるかとか考えようぜ。まだ準備段階なんだし、当日のシフトよりもやるべきことがあるだろ?」
「調理に関しては尾上くんとか料理が得意な人たちに任せて、私たちは自分たちにできることぉした方が効率いいでしょ?」
みんなも出し物が無事に決まったことでやる気が出たのか、活発に意見を交換してくれている。
段々と盛り上がっていくクラスの空気を感じる僕へと、楽人が声をかけてきた。
「サンキューな、雄介。マジで助かったよ」
「気にしないでよ。料理は好きだし、結構楽しかったしさ」
「それだけじゃなくって、お前が動いてる姿を見せてくれるおかげでみんなもやる気を出してる。そういうのは実行委員の俺がやるべきなのに、任せてごめんな」
「いいよ。僕もクラスの一員だし、みんなのためにやれることは頑張るさ。楽人の方こそ、頑張らなくちゃいけないことがあるだろ?」
「……おう」
この文化祭準備期間の間に熊川さんとの距離を縮め、当日に告白を目指す親友の背中を二つの意味で押してやれば、楽人は少し緊張した様子で頷いてみせた。
親友の恋が実るといいな……と思いつつ、クラスのためにも楽人のためにも頑張ろうと僕が考えているところに、熊川さんが声をかけてくる。
「遊佐く~ん! ちょっと教室の飾り付けで相談したいことがあるから、こっち来て~!」
「あ、ああ! 了解!! ちょっと待ってて!」
いきなり熊川さんに声を掛けられて焦る楽人の様子がおかしくってついつい笑ってしまった僕へと、彼はちょっと恥ずかしそうな表情を見せた。
その後、口を開いてこんな頼みをしてくる。
「雄介、悪いんだけどもう一つ頼まれてくれるか? この後、家庭科室で割り当てられた調理器具の確認作業があるんだけどさ、お前に見てもらいたいんだ」
「別に構わないよ。包丁とかまな板に不備がないか見ておけばいいんだね?」
「おう。悪いな。何でもかんでも任せちゃって。あっ! なんだったら七瀬さんと一緒に行ってもいいから!」
そう言い残し、楽人は熊川さんの下に小走りで向かっていく。
僕としても下ごしらえの時に使う調理器具を確認しておきたかったし、ちょうどいい。
お言葉に甘えて、ひよりさんに手を貸してもらいながら……僕たちは、家庭科室へと向かっていった。