ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
いい先輩と隣になった
「失礼します。1-Cの尾上です。文化祭で使う調理器具の確認に来ました」
「ああ、はいはい。一年C組の子ね。あれ? 確か実行委員は遊佐くんと熊川さんだったはずだけど……?」
「二人の代理です。調理関係は僕たちが担当することになりそうなので」
家庭科室にやって来た僕たちは、担当の先生とそんな会話を交わしていた。
「ああ、そうなの」と納得した先生は、そのまま僕たちが当日使えるスペースへと案内してくれる。
家庭科の授業で使うテーブルの上には、使用できる器具が置いてあって……それと水道、コンロを確認しつつ、僕はひよりさんと話し合う。
「包丁とまな板が二セットずつか。仕込みはちょっと大変そうだね」
「確かに。ねぎと紅ショウガとタコをいっぱい切るわけだし、朝は大忙しになっちゃいそうだ」
用意されていた調理器具の中で、最も使用するまな板と包丁が二組ずつしか用意されていなかったことに、僕たちは不安を抱いた。
前日からの用意ができない以上、仕込みは当日の朝にやるしかないのだが、包丁とまな板が二つしかないとなると作業効率はかなり落ちる。
生地の中に入れる具材は四つあって、揚げ玉を除いた三つはある程度の大きさに切らなければならないわけで、そこが問題だ。
切らなければならないものは三種類あるのに、使える調理器具は二組……何か一つが後回しになってしまうことになる。
せめてもう一組まな板と包丁があれば助かるんだけどな……と、僕たちが考えていた時だった。
「なあ、君たち。ちょっといい?」
「はい……?」
不意に声をかけられた僕たちが顔を上げれば、隣のテーブルからこちらへと近付いてくる大柄な男子の姿が目に映った。
日に焼けた浅黒い肌をしているその男子は、僕と同じくらい背が高い上に筋肉もムッキムキだ。
シャツの上からでもわかるくらいに鍛え上げられた肉体をしているその人は、軽く腕を上げながら僕たちに挨拶をしてきた。
「俺、二年D組の
「ええ、まあ……」
「だったらさ、俺らの使っていいよ。俺らが使うのガスコンロだけで、包丁とか持て余しちゃってるからさ」
「えっ!? 本当ですか!?」
「ああ。代わりと言っちゃなんだけど、君たちのガスコンロを使ってもいいかな? 足りなくなった時とか、緊急時にもう一口あると助かるんだよ」
「もちろんです! 僕たちはコンロは使わないので、自由に使っちゃってください!」
高塔先輩からの申し出に、大いに驚きながら感謝した僕たちが頷きながら答える。
火を使った調理は教室でやる予定だから、僕たちはガスコンロを使うつもりはない。お互いに不要な設備を交換し合う形だから、これぞWIN-WINというやつだろう。
「ありがとう! 助かったよ!」
「こちらこそありがとうございます。先輩のおかげで、準備が格段に楽になりそうです」
「でも、包丁もまな板も使わないって珍しいですね? 先輩たちのクラス、何を出すんですか?」
「ああ、おでんだよ。おでん。レトルトで袋に入ってる奴を湯せんで温めて出すんだ。でも流石にお客さんの前でレトルト食品を開けて、そのまま出すわけにはいかないだろ? だから家庭科室で温めたのを他の鍋に移し替えて、教室では保温しておくだけにしようって話になってるんだよ」
「ああ、なるほど……!」
「いいですね、おでん! 寒くなってきてますし、美味しく食べられそう!」
「良ければ二人で遊びに来てくれよ。サービスできるかはわかんないけど、美味いもん食べさせてあげるからさ! まあ、レトルトなんだけどね!」
そんな高塔先輩の自嘲気味な冗談を笑う僕たち。
少し威圧的な見た目をしているが、気のいい先輩が隣のテーブルにいてくれて良かったと思う中、先輩がこんなことを言ってくる。
「そう言えばだけど、一年生にすごい出し物するクラスがあるよね。A組だっけ?」
「え……? そうなんですか?」
「あれ? 君たちも実行委員じゃない系? ってか、聞いてないんだ? 結構話題になってるけど……」
高塔先輩の言葉に、僕はひよりさんと顔を見合わせる。
A組は確か、江間や紫村さんのクラスだったよなと考えた僕は、ちょっと嫌な予感を覚えながら先輩へと尋ねた。
「すいません。A組の出し物って、いったい何なんですか?」
「ああ……
「えっ? ええ~~~っ!?」