ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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メイドさんへの興味に答えよう

 普段通りの雰囲気でからかい半分の言葉を投げかけてきたひよりさんへと、苦笑を返す。

 彼女がやや凹んだ状態から回復してくれたことを喜びながら、僕はその質問に答えた。

 

「う~ん……メイド喫茶には興味ないかな~?」

 

「ええ~っ? ホントに~? 怪しいな~!?」

 

 正直に答えはしたが、それで追及を止めてくれるひよりさんではない。

 からかいと疑いを半分ずつ含めた眼差しを向けてくる彼女へと、僕はさらに言葉を重ねていく。

 

「本当だよ。少なくとも、A組のメイド喫茶には微塵も興味が湧かないな。なんか、脳裏に紫村さんの存在が常に浮かんできそうだしさ」

 

「あ~……まあ、ねえ?」

 

 僕の答えに対して、ある種の納得を抱いたであろうひよりさんが呻く。

 あまりいい感情を抱いていない相手がメイド服を着て、接客をしていても、正直げんなりする気しかない。

 だからC組のメイド喫茶に興味を持てないと僕が答えれば、ひよりさんは続けてこんな質問をしてきた。

 

「じゃあ、紫村以外のメイドには興味あるんじゃない? A組以外のメイド喫茶とかは興味ある?」

 

「それもないかな。わざわざ行こうとか思えないしさ」

 

「うえっ、珍しい! 普通は高塔先輩みたいな反応するんじゃない?」

 

 かもね、と苦笑しながら答えた僕であったが、それが本心なのだから仕方がない。

 なんというか、相手にご奉仕されるというのが微妙に居心地が悪いというか、逆に気を使ってしまいそうで困る。

 

 お店に行くのが恥ずかしいというより、そういう立場に在る自分の姿が想像できない僕がそう答えれば、ひよりさんはふむふむと頷きながらこう続けた。

 

「そっか~……雄介くんはメイドさんに興味なしか~……」

 

「……なんで若干残念そうなの?」

 

「だって雄介くんがそういうコスプレが好みだっていうなら、からかうネタが増えるじゃん!」

 

 屈託なく笑う彼女の答えに苦笑を返しつつ、ラーメンをすする。

 そんなことだろうなと予想していた僕は、そう言った彼女へとこう言葉を返した。

 

「メイド喫茶に興味がないだけであって、メイドさんのコスプレが嫌いってわけじゃないけどね。ひよりさんがメイド服を着た姿は見てみたいと思うよ?」

 

「おっ!? そうなの!?」

 

「そりゃあね。好きな人のかわいい姿は見てみたいって思うのが普通でしょ?」

 

「えへへ~……! そっかそっか~!」

 

 弱点を開示しているようでそうでもないというか、からかいのネタを提供しているようで微妙に違う僕の答えを聞いたひよりさんが満足気に笑う。

 そうした後でえへんえへんと咳払いをした彼女は、僕を上目遣いで見つめながら甘い声で囁いてきた。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様~♥」

 

「う゛っっ……!?」

 

 来るとは思っていたが、実際に言われるとかなり心臓にくるひよりさんの言葉を受けた僕が左胸を押さえる。

 その反応に満足したのか、満面の笑みを浮かべた彼女が僕へと問いかけてきた。

 

「どうだった!? ドキッとした!?」

 

「うん、かなり……」

 

「へっへ~ん! 雄介くんのツボがわかったぞ~っ! ひゃっほほ~い!」

 

 妙にテンションが高くなったひよりさんが再び咳払いをする。

 第二弾が来るかと身構える僕へと、彼女は先ほどよりもかわいらしさを増した声で言った。

 

「ご主人様~♥ ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……あ♥た♥し?」

 

「……それはメイドさんじゃなくて、お嫁さんじゃない?」

 

「うん! 自分で言ってて途中で気付いた!」

 

 あはは、とかわいかったがシチュエーションが違うひよりさんの言葉に二人して笑う。

 ちょっと前までのシリアス目な雰囲気が嘘であるかのような明るさを取り戻した空気の中、ひよりさんがくすくすと笑った後でまたからかってきた。

 

「この後、モンキホーテに行く? メイド服、着てあげよっか?」

 

「それはいつかのお楽しみってことで。それに、ひよりさんに合うサイズの服があるかわかんないしね」

 

「あ~っ! そういうこと言っちゃう? はいはい、どうせあたしは身長に見合わないおっぱいとお尻してますよ~だっ!」

 

 べ~っと舌を出した後でやけ食いするようにラーメンを食べるひよりさんの反応に、僕は小さく微笑みを浮かべる。

 少し話し過ぎてしまったし、麺が伸びる前にラーメンを食べきってしまおう……と僕が考えた、その時だった。

 

「ん? あれ?」

 

 制服のポケットの中でスマホが震えたことに気付いた僕は、それを取り出すと共に画面を見た。

 『遊佐楽人』と表示されている名前を見ながら、どうして急に楽人が電話をかけてきたのか不思議に思いながらも、僕はその着信に応える。

 

「はい、もしもし? 楽人、どうかした?」

 

『……雄介。俺、やっちまった……』

 

「は……?」

 

 電話に出て早々に聞こえてきた絶望に打ちひしがれている声に、驚きながら顔をしかめる。

 急に何を言うのかと困惑する僕に対して、楽人はがっくりとしている姿が想像できる声で、こう報告してきた。

 

『俺の片思い、終わったかも……』

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