ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「泊まりで旅行に行きたい!?」
「うん! その許可を貰いたいんだけど、いいよね!?」
――その日の夜、僕はひよりさんのご自宅に居た。
正確には僕だけでなく、僕の家族たちも一緒だ。
さらにひよりさんのご両親も今日は早めに帰っていたため、両家の家族全員が勢揃いしたことになる。
そんな状況の中でひよりさんは、少し前に僕にしたのと同じ話をご両親に切り出していた。
「来週の三連休に大阪に行ってさ、本場のたこ焼きを食べてみたいんだよね! あたしと雄介くんと、友達三人! 合計五人でお泊り旅行に行きたいんだ!!」
「ちょ、ちょっと待って。そんな急に言われても、はいそうですかなんて言えないわよ。子供たちだけで旅行だなんて……!!」
当然ながら、突然こんな話を切り出された睦美さんは驚きつつ難色を示している。
僕もひよりさんからこの案を聞かされた時は同じような反応をしたし、無理もないよなと考える中、吾郎さんが口を開いた。
「文化祭の準備のためにそこまでする必要はないだろう? 遊びに行きたいという気持ちはわかるが、旅行となるとお金もかかるだろうしな……」
「……すいません。たこ焼きを食べに行くっていうのは建前で、本当の目的は別にあるんです」
「ん? どういうことだね?」
これまた当然の意見を述べた吾郎さんへと、ひよりさんに代わって僕が言う。
改めて尋ねてきた彼に対して、僕は詳しく説明をしていった。
「実は、この旅行は喧嘩してる友達を仲直りさせるためのもので――」
クラスの文化祭実行委員が、紫村の行動のせいで気まずい関係になってしまっていること。
二人は僕たちにとってとても仲のいい親友で、なんとかしてあげたいと思っていること。
ひよりさんも少なからず責任を感じ、胸を痛めていること。
その上で、環境を大きく変えつつ間に僕たちが入ることで、二人を仲直りさせられるのではないかと、そうひよりさんが考え、提案した案であるということを僕はこの場にいる全員へと説明する。
「楽人……気まずくなっている友達の内の一人は、僕の親友なんです。もう一人の友達と一緒に江間とのトラブルの時も親身になって話を聞いてくれたし、色々と協力もしてくれました。だから、今度は僕が友達のために何かしてあげたいんです」
「ふむ……」
色々な事情を話した後、僕はこの案に乗った理由を吾郎さんへと告げた。
楽人はもちろん、熊川さんだって僕とひよりさんがピンチだった時に協力してくれた、恩のある相手だ。
その恩を返すのは今だと、そう思ったからこそひよりさんの提案に賛成したのだと、そう話す僕へと睦美さんが言う。
「気持ちはわかるわ。でもやっぱり、女の子の親としては心配なのよ。本当にお友達と一緒に行くのかだとか、お泊りにかこつけてあなたたちが
「それは……確かにそうですね……」
これに関しては本当に睦美さんの言う通りだと思う。
僕たちはまだ高校生で、宿泊込みの旅行に行くにも親の許可がいる。
子供たちだけで旅行に行くことはもちろん、恋人という関係である僕とひよりさんが親から離れたところで変なことをするのではないかと心配するのは親として当然だと思い、言葉を詰まらせる僕であったが、意外なことに吾郎さんがそんな睦美さんを宥めてくれた。
「いや、それは心配し過ぎだと思う。雄介くんは信用できるよ」
「でも、あなた――!!」
「現に彼は夏休みの間、いくらでもチャンスがあったというのにひよりに手を出さなかったじゃないか。そもそも、私たちは彼を信用して、尾上さんのお宅にひよりを預けたんだろう?」
「う、ううん……」
吾郎さんの言葉に、睦美さんが唸る。
夫の言うことに納得しながらも、やはり不安が拭えないであろう彼女は、僕とひよりさんを順番に見つめた後で再び口を開いた。
「……私も別に雄介くんを信用していないというわけじゃあないのよ。でも、親の目が離れたところで子供が何をするかなんてわからないし……」
「あの、睦美さん。差し出がましいでしょうが、少しよろしいでしょうか?」
不安を拭えないであろう睦美さんに対し、なんと母が声をかけた。
何を語るのだろうと固唾を飲んで見守っていた僕の前で、母はこんなことを言ってのける。
「心配するお気持ちは痛いほどわかりますが、大丈夫ですよ。この二人は親の前だろうがそうでなかろうが、いつでもどこでもイチャつくバカップルなので」