ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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親友たちとちょこっと話そう

「悪い、雄介。ホント、色々気を使わせちゃって……」

 

「いきなりどうしたんだよ? この旅行はひよりさんのご両親が企画してくれたものなんだから、僕に何か言う必要はないって」

 

 いきなりの謝罪に対し、笑みを浮かべながら軽い口調で返す。

 しかし、楽人は渋い表情を浮かべながら、そんな僕へとこう続けた。

 

「そういうんじゃなくて、俺と熊川さんのことを気にしてくれてるんだろ? あんまり気まずくならないようにとかさ」

 

 その言葉に、まさか今回の旅行が仲直り目的であることがバレたのかと一瞬動揺した僕であったが、ちょっと違うようだ。

 俯きがちになりながら、楽人は話を続けていく。

 

「この席の組み合わせとかもそうじゃん。本当なら、お前は七瀬さんの隣が良かっただろうに、俺に気を使って隣にいてくれてるだろ?」

 

「うん、まあ……それはそうかな……」

 

 そこは実際そうではある。目的地に着く前に色々と話をしておきたかったところがあるから、ひよりさんではなく楽人の隣に座ることにした。

 他にも今の状況で僕とひよりさんが一緒に座ると、残った三人が微妙に気まずい雰囲気になるよなという考えがあったため、こんな席順にした感じだ。

 

 だがしかし、僕はそのことで楽人に恩や責任を感じてほしいだなんて思ってない。

 凹む親友へと、笑顔を浮かべて僕は言う。

 

「気にしないでよ。今回の旅行は、純粋にみんなで楽しむものだと思ってるからさ」

 

「いや、でも……」

 

「大丈夫。熊川さんとのこともわかってる。花火大会とかもそうだけど、楽人には色んなところで世話になったし、借りもあるからさ……そろそろそれを返すつもりだよ」

 

 僕がひよりさんと上手くいっている要因の一つに、いい友達に恵まれたというものがある。

 ひよりさんにとっての熊川さんや鉢村さんが、僕にとっては楽人がそれに当たるわけで……恩も強く感じていた。

 

 だったら僕も、楽人にとって良き友人でありたい。

 楽人がそうであってくれたように、親友の恋が上手くいく要因の一つになることで、彼に恩を返したいと思っている。

 

「まあ、それを抜きにしたって、友達が困ってたら手を貸すよ。当たり前でしょ?」

 

「雄介……」

 

 そして、そういった事情を抜きにしても、助け合うのが友達だと僕は思っている。

 そんな僕の言葉を受けた楽人は小さく息を飲んだ後、静かに言った。

 

「……本当、ありがとな」

 

 そこで謝罪の言葉が出てこなくなったということは、気持ちが前向きになった証拠だろう。

 それを喜び、軽く手を振って応えた僕に「ちょっとトイレに行ってくる」と言って、楽人が席を立つ。

 

 この調子でいけば、大阪に着く頃には気持ちも整理できているだろうと僕が考えていると……?

 

「やっほ~! 尾上くん、調子はどう!?」

 

「ん? 絶好調だよ。今からみんなで遊ぶのが楽しみだ」

 

 空いた席へと軽快な雰囲気で座ってきた熊川さんが僕へと言う。

 その質問に答えれば、彼女はニヤニヤと笑いながらこう言葉を続けた。

 

「ひよりから聞いたよ~! 紫村の奴に迫られたけど、ばっさり斬り捨てたんでしょ? いや、流石だよ!」

 

「はははっ、まあね。でも、褒められるほどのことじゃないよ」

 

「褒められることだって! ひよりを不安にさせたくないって考えて、付き合う相手を考えたんでしょ? いい彼氏だよ、うん!!」

 

「う~ん……だとしたら、それは楽人のおかげかもね」

 

「えっ?」

 

 先日の紫村とのやり取りに関して、僕を褒めてくれる熊川さんへと僕は苦笑を浮かべながら言う。

 その言葉に驚き、困惑する彼女に対して、その理由を話していった。

 

「僕は楽人から紫村がそういうことをしてくるって話を事前に聞いてたから、心構えができてたんだ。仮に話を聞いてなくても拒むつもりではあったけど……あいつに付け入る隙を作らないくらいにはっきり断れたのは、言いにくいことをちゃんと話して警告してくれた楽人のおかげだよ」

 

「………」

 

「……熊川さんの失望した気持ちもわかるけど、僕と楽人だと立場が違う。紫村はバスケ部のマネージャーで、楽人からすると嫌でも関係を断ち切れない相手だしさ……対応に迷いが出て、当然だと思うんだ」

 

「……うん、そうだね」

 

 熊川さんも頭では楽人にも事情があったことを理解しているのだろう。

 それを納得できない心の問題も、時間が経ったことで解決しつつあるようだ。

 

「ごめん、尾上くん。ひよりと玲香もそうだけど、気を使わせちゃってるね」

 

「そんなことないって。二人も僕も、普通に友達を心配してるだけだよ」

 

「ん……ちょっと、ちゃんと考えておくよ。遊佐くんのことも、ちゃんと考えておくから」

 

 そう言って、熊川さんも自分の席へと戻っていく。

 二人の反応を確認した僕は、帰りの新幹線ではひよりさんの隣に座れそうだなと思いながら、満足気に微笑むのであった。

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