ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「本っ当に……ご心配、ご迷惑をおかけしましたっ!! すんませんっ!!」
あたしたち以外の人影がない露天風呂の中、優希がいきなり謝ってくる。
どんなタイミングだよと思いながらも玲香と苦笑し合ったあたしは、問題を解決させた親友をからかうようにこう言ってやった。
「いや~、遊佐くんと仲直りできて良かったよ~! あたしたちも
「そうそう。ほっと
「……そこで胸のワードを連呼してるのは私に対する嫌がらせか? お? 喧嘩売ってるなら買うぞ?」
そういういつも通りのツッコミができるようになるくらいには回復してくれた優希も加え、三人で笑う。
ようやくギクシャクしていた遊佐くんとの関係を修復できたことを喜ぶあたしたちは、温かい温泉に浸かりながら今日のことを話し合っていった。
「ホント、楽しかったね~……! 久々に心の底から楽しめたって感じがした」
「なんだかんだ、優希も遊佐くんとのことを気にしてたんだね」
「まあね。最初はぐあ~っ、って頭に血が上っちゃったけど、二人とか尾上くんから話を聞いていく内に段々冷静になってきてさ。言い過ぎたなって思ってたから」
「そこは優希の良いところでもあり、悪いところでもあるよね。でもまあ、優希も友達想いだったってだけだから、悪いことをしたわけじゃないでしょ」
「うんうん! 悪いのは紫村の奴だし、気にしないでよ!」
「……サンキュー。二人が友達で良かったよ」
ぼそっとそう言ってから、優希はお湯の中に潜った。
照れ隠しなのかなと思うあたしへと、再び浮かび上がってきた彼女が言う。
「ひよりもごめんね。尾上くんも言ってたけど、喧嘩の原因が自分にあるんじゃないかって凹んでたでしょ?」
「ん……まあ、少しだけね」
遊佐くんからの報告を聞いた時、本気でそう思ったことは事実だ。
紫村と江間とのいざこざは、なんだかいつまで経っても付き纏ってくるストーカーみたいで、そういう思いもあって凹んでしまった部分もある。
でも、問題が解決した今となってはどうでもいいことだし、それに――
「大丈夫だよ! なにせ、大好きな彼氏があたしのために頑張ってくれてるからさ!!」
――そう、あたしには雄介くんがいる。いつだって、どんな時だって、あたしのことを支えてくれる大好きな恋人がいてくれる。
今回のこともそう。即座に二人の喧嘩はあたしのせいじゃないって言い切ってくれたし、関係を修復するために一生懸命に動いてくれた。
それに、紫村に誘惑された時だってきっぱり断ってくれたし……その全部が嬉しくって、気持ちも回復している。
優希と遊佐くんが仲直りしたこともあって、今の気分は超快晴。
最初に感じた不安やモヤモヤも、完全に消え去っていた。
「か~っ! 惚気てくれるよね~!! ぶらついてる時も私たちの問題が解決したからって、心置きなくイチャイチャしてたしさ~!」
「え~? そうかなぁ? 別に普通だったと思うけど……?」
「ひより、あんたたちバカップルの普通は私たち一般人からすると、大分イチャついてるだからね? もう本当に基準がおかしくなってるよ?」
そう言われて改めて考えたのだが、やっぱりそこまでバカップルはしてないと思う。
あ~んもしてないし、手も繋いでないし、普通に話をしてただけだし……変なことはしてないはずなのだが、それでもイチャついてる判定になっちゃうんだろうか?
「玲香、多分だけどこの二人は普段、私たちが知らないところで死ぬほどイチャついてるんだよ。だから、あの程度だと普通だと思っちゃってるんだって」
「納得。まあ、そのくらいはしてそうだもんね」
どうやらそういうことらしい。と、あたしは親友たちの会話を聞いて納得する。
お父さんとお母さんやお義母さんもそうだったが、あたしと雄介くんのことを話す人たちはいつだってバカップル扱いしてくるよなと改めて思ったが、だからといって自制するつもりは一切ないので、気にしないことにした。
「で? この後はどうすんの? やっぱり夜は愛しの雄介くんと……!?」
「そういうことはしないって約束してるから、部屋にも行かないよ。ただ、寝る前に少し話はしたいかな……」
「了解。んじゃま、そろそろ出る? 男子たちを外で待ち受ければ、尾上くんとも話せるでしょ」
そうだね、と話しながら立ち上がったあたしは、名残惜しいが露天風呂を後にすることにした。
明日、ホテルを出る前に朝風呂に入っちゃおうかなと考えたところで……最後まで湯船に浸かっていた優希が口を開く。
「……あのさ、無自覚に
「大丈夫だよ、優希。そういうのが好みな人もいるからさ」
「うんうん! 希少価値だよ、優希!!」
「うっせぇ! 乳デカだけじゃなくケツデカのひよりにはこの気持ちはわかんないだろうよ!!」
「んだとぉ……!? ケツデカ言うな! それはライン越えだぞ!!」
禁忌に触れた優希は色々とわからせてやる必要がある。というわけで、決戦開始だ。
そんなふうにわーぎゃーと言い争うあたしたちのことを、玲香は黙って笑顔で見つめ続けていた。