ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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風呂上がり、親友と二人で

「ほい、お茶。他にも色々あったのに、それで良かったのか?」

 

「ありがとう。今はさっぱりしたものを飲みたい気分だったから、これが良かったんだ」

 

 たこ焼きの食べ歩きを終え、夜。ホテルに戻り、ひとっ風呂浴びた僕と楽人は、脱衣所を出てすぐのところにある休憩所で一息ついていた。

 奢ってもらったお茶を飲み、火照った体を冷ます中、サイダーを飲んでいる楽人が口を開く。

 

「……雄介、サンキューな。お前のおかげで熊川さんと仲直りできたよ」

 

「僕は大したことはしてないよ。普通に時間が解決してくれただけさ」

 

「そんなことねえよ。お前が間に入ってくれなきゃ、解決までまだ時間がかかってたと思う。そうなったら文化祭の準備にも大きな支障が出ただろうし、みんなにももっと迷惑かけてた。お前がいてくれて良かったよ」

 

 しみじみと語った後、ペットボトルに口を付けて中身を一気に飲み干す楽人。

 この飲み物は彼からの感謝の証だということは、僕にもなんとなく理解できていた。

 

 僕としては、そこまで感謝されることをした覚えはないが、楽人にとっては大きなことだったのだろう。

 これが仮に僕がひよりさんと喧嘩して、親友がその仲裁をしてくれたとしたら……と考えたら、その重大さが身に染みて理解できる。

 

「これでまたチャンスが戻ってきたね。ここからは、楽人の頑張り次第だよ」

 

「お、おう……!! そうだな。いつまでもお前頼りじゃあダメだもんな……!!」

 

 熊川さんとの関係も修復できたし、これで楽人の恋路が途中で終わりにならずに済んだ。

 でも、僕が手を貸せるのはここまでだ。この先は、誰よりもまず親友が頑張らなくちゃならない。

 

 気合いを入れた楽人は飲み干したペットボトルを放り投げると、ごみ箱の中にシュートしてみせる。

 小さくガッツポーズをした後、僕の方を向いた彼は何かを言おうとして……苦笑を浮かべてから、改めて口を開いた。

 

「今、お前から告白とかに役立つアドバイスを貰おうかと思ったんだけどさ……参考にならなそうだなって気付いたわ」

 

「確かにね。僕とひよりさんの場合、かなり特殊だって自覚があるからさ」

 

 楽人と同じような苦笑を浮かべつつ、僕はそう答える。

 親友にアドバイスしてあげたい気持ちはあるのだが、僕の場合は状況が状況過ぎて間違いなく参考にならない自信しかない。

 

 初手が恋人に浮気されて修羅場になっている場面を目撃したところから始まるだとか、告白以前からほぼほぼ付き合っていたようなものであったところとか、他にも様々な部分が世間一般のカップルとはかけ離れてるよな~と思う中、楽人が僕へと言う。

 

「やっぱお前ってすげーわ。色々考えたら、滅茶苦茶尊敬できる奴だってことを再認識した」

 

「なんだよ、急に? 褒めても何も出ないよ?」

 

「いや、今回改めて紫村さんと関わって、その厄介さを身を以て経験したってこともあってさ……あれと多少なりとも関わって、平然としてるお前ってすごいよな~って思ったんだよ」

 

 そう楽人は言うが、僕は紫村と本格的に関わった覚えはない。

 先日、変に関わろうとしてきた彼女を拒絶したのが最初で最後じゃないかと思いつつ、それは周囲の人が気を使ってくれたおかげだと答えようとしたのだが、それよりも早くに楽人が口を開いた。

 

「それと、七瀬さんをあそこまで立ち直らせたのってすげえよ。普通に考えて、信頼してた幼馴染で恋人だった相手に浮気されたら、べっこべこに凹んで引きこもったりしてもおかしくないだろ? でも、七瀬さんはずっと元気でさ……それって絶対、お前の存在があったからだと思うんだ」

 

「大したことはしてないよ。ひよりさんは強い人だから、自然と立ち直ったってだけ」

 

「謙遜すんなよ。お前はすごい奴だって。お前と七瀬さんを見てると、正しい付き合い方してるっていうかさ……いいよなって、自然と思える。俺もこんなふうになれたらいいなって、そう思うんだよ」

 

 流石にお前たちレベルでイチャつくのは恥ずかしいからやらないと思うけどな、と苦笑を浮かべながら付け足す楽人。

 冗談交じりではあるが、そういうふうに褒められることに慣れていない僕は、親友から目を逸らしながらお茶を飲んで感じている照れを誤魔化した。

 なんだか、周囲の人たちは僕を異様に高く評価してくれるよなと思いつつ、褒めてくれた親友に何も言わないのは悪いと思った僕は、小さな声で彼へと言う。

 

「……頑張れよ。大丈夫、絶対に上手くいくさ」

 

「おう、ありがとな」

 

 いつかの花火大会の日、僕とひよりさんが上手くいくことを祈って楽人が背中を押してくれたように、今度は僕が彼の背中を押す番だ。

 あの日の借りは返せたかな……と、親友にエールを送りながら微笑んでいたところで、女子たちの声が聞こえてくる。

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