ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「北海道に限らず、全国のご当地ラーメンを食べに行きたいよね! 博多の豚骨ラーメンとか、富山のブラックラーメンとかさ!」
「ラーメンとは違うけど、沖縄のソーキそばも美味しそうだよね。サーターアンダギーとかも僕は好きだな」
「沖縄! 紅イモ! パイナップル!! 北海道とは真逆の位置だけど、美味しそうなものがいっぱいあるのは変わらない……!!」
頬を押さえ、目を閉じ、幸せそうな表情を浮かべながらひよりさんが呟く。
きっと、全国各地の美味しいものを食べる自分の姿を想像しているんだろうなと考えた僕は、小さく笑みを浮かべながら彼女へと言った。
「……いつか、全部食べに行こうか」
「え……?」
「北海道も沖縄も、二人で遊びに行こう。他のところにも、海外にだって……二人で旅行して、美味しいものを食べて、綺麗な景色を見て……楽しい思い出をいっぱい作ろうよ」
一度にあっちもこっちも行くことなんてできない。だけど、長い人生の中で旅行に行く機会はいくらでも作れるはずだ。
今日話した行きたい場所も、やってみたいことも、食べてみたいものも……これから二人で歩いていく人生の中で、全部楽しもう。
そうやってたくさんの思い出を作っていこうという僕の言葉に、ひよりさんが嬉しそうに笑いながら応える。
「うん、いいね。二人で一緒に、か……すごく楽しそう」
しみじみとそう言いながら目を閉じたひよりさんが、微笑みを浮かべる。
僕と二人で行く旅行や、そこで作る楽しい思い出についてイメージを膨らませてくれているのだろう。
「いいな~、うん。温泉も名所巡りも食べ歩きの旅も、全部楽しそうだって感想しか出てこないや」
「想像するだけじゃなくって、現実にしようね。今回はみんなでだったけど、二人で行く旅行も絶対楽しいはずだしさ」
「うん……」
そっと手を重ねながらの僕の言葉に、ひよりさんが幸せそうな声で呟く。
ほっこりとした温かい感覚を胸に抱きながら、彼女とゆっくり時間を過ごす僕であったが……不意にひよりさんが口を開いた。
「でもさ、別に二人きりじゃなくってもいいよね? もっと大人数の方が楽しめると思うよ?」
「えっ? そう……?」
「うん、きっとそうだよ」
ひよりさんの口から飛び出してきた言葉に、僕は少し困惑する。
二人きりよりもみんなで一緒に旅行した方が楽しいという意見はわかるけど、なんだか少し複雑な気分だ。
まあでも、今回の旅行も楽しかったし……と気を取り直そうとする僕であったが、ひよりさんはそんな僕の手をきゅっと握りながらこちらを見つめてくる。
彼女が何かを伝えようとしていることに気付いた僕は、ひよりさんがもう片方の手で自分のお腹をそっと撫でる姿を見て……全ての答えに辿り着き、顔を真っ赤にした。
「あっ……!」
「ふふっ……! やっと気付いた? 二人だけの旅行も楽しいだろうけどさ、
明るい声でそう言うひよりさんだが、僕としては恥ずかしくってそれどころではない。
いや、彼女が言っていることは間違いないのだが、急に不意打ちみたいな真似をされると心が落ち着かなくなってしまうではないか。
「もう、照れ過ぎだよ。元々、将来の話をし始めたのは雄介くんの方でしょ?」
「いや、それはそうだけどさ……!!」
自分が始めた話が、こんな展開につながるとは思わなかった。
顔を耳まで赤くしながらしどろもどろになる僕へと、ひよりさんは声を弾ませながらこんな質問を投げかけてくる。
「ちなみにだけど……雄介くんは
「うぐぅ……!!」
あまりにも恥ずかし過ぎるその質問に答えられない僕は、さらに顔を赤くしながら呻くことしかできなかった。
こんな話を堂々としているから、バカップル扱いされるんだろうな……と改めて周囲からの評価に納得しつつ、僕は自分を落ち着かせるために必死に深呼吸を繰り返すのであった。