ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ナイスアシスト&さらば大阪!

「えっっ!?」

 

「いや、ちょっ、待ってよ! 普通そこは、女子同士で私と玲香が隣じゃないの!?」

 

 鉢村さんの言葉に、二人は大いに驚くと共に疑問を投げかける。

 僕とひよりさんを隣同士にして、デートだのイチャつくだの話をした後だから、男女で隣の席に座ることに気恥ずかしさがあるのだろう。

 

 しかし、鉢村さんはそんな二人の様子に一切動じることなく、平然と話をしていく。

 

「いや、優希も遊佐くんも今日までギクシャクしてた自覚あるでしょ? 文化祭の打ち合わせもちゃんとできてなかっただろうし、帰る間にその辺もやっちゃいなよ」

 

「うっ……!」

 

「さっき尾上くんも言ってたけど、席が隣になるくらい友達でも普通でしょ? 学校でも普通にそうしてるじゃん。あのバカップルを見て、妙に意識してるだけだよ」

 

「ん、ん……?」

 

「……ねえ、雄介くん。もしかしてあたしたち、ダシにされてる?」

 

「しーっ! ひよりさん、気持ちはわかるけど今は黙って!」

 

 クールでサバサバしている雰囲気の鉢村さんの言葉は、なんだか妙に説得力がある。

 多分、きっと、絶対……彼女も思惑があって楽人と熊川さんを隣の席に座らせようとしているだろうが、そういった狙いを一切感じさせないのはすごいと思う。

 

 現に彼女にそう言われた二人は、微妙に恥ずかしそうにしながらもその言葉通りだなと納得したのか、お互いに視線を交わらせ、弾かれたようにそれを逸らした後でこう言ってみせた。

 

「そ、そうだね! ひよりと尾上くんを意識し過ぎてたけど、文化祭実行委員会として話せなかった分の埋め合わせはしないとだもんね!」

 

「弁当とか食べながら、のんびり話そうよ! 別にほら! 雄介たちみたいにイチャつく必要なんてないんだしさ!」

 

「そうそう! そうだよ! あははははははは……!!」

 

「おっ!? じゃあ、駅に着いたらあたしたちと一緒に駅弁選びに行こうよ! 友達四人で、ねっ!?」

 

 二人とも顔が赤くなっているように見えるのは、僕の気のせいじゃあないだろう。

 ひよりさんもその辺りのことをわかっているようで、『友達』の部分を強調しながら一緒に行動することを提案する。

 

 そうやって話し合う三人を一歩引いた位置から見守る僕は、隣を歩く鉢村さんへとひそひそ声で言う。

 

「……鉢村さん、流石だね。上手く説得して、あの二人をくっ付けた」

 

「遊佐くんの気持ちは知ってるからね。今回のことで優希も多少は意識し始めただろうし、ぐぐっと距離を縮めるチャンスでしょ?」

 

 ふっ、とクールに笑う彼女の手腕と気遣いに感謝しつつ、僕も同じく笑みを浮かべる。

 周囲からここまで応援してもらえるだなんて、やっぱり楽人や人望があるな……と思いながら頷く中、苦笑を浮かべた鉢村さんが口を開いた。

 

「それはそれとして……私だけソロっていうのは寂しいものがあるんだよね~。なんか、置いてかれてる感がすごい」

 

「ああ~……それは、お気の毒としか……」

 

「いいよね~、ひよりも優希も一途に想ってくれる男の子がいてさ~……」

 

 微妙に拗ねているというか、悲しんでいるというか……本気なのか冗談なのかわからない鉢村さんの言葉に、僕は乾いた笑い声を漏らすしかない。

 そんな僕に対して、彼女はやや真剣な表情を浮かべながらこんなことを聞いてきた。

 

「ねえ、尾上くんの周りにいい男とかいない? 尾上くんと遊佐くんレベルに性格がいい男子の知り合いに心当たりとかない? 良ければ一時期とはいえ同じバイト先で働いた仲間のよしみってことで、誰か紹介してください……!!」

 

「えっと……クラスの男子はどう?」

 

「ああ、あいつらはダメ。腹筋が割れてないのは論外」

 

「ええ~……?」

 

 地味に難易度が高い要求だなと思いつつ、ここまでお世話になっている彼女の親友のために必死に頭を働かせる。

 ややあって、自信はなかったものの僕は思い付いた相手について鉢村さんに話してみた。

 

「あの、最近知り合った先輩が筋肉質で性格もいい人だと思うんだけど……どうかな?」

 

「あ~……ごめん。私、年下派なんだよね……」

 

「そ、そっか……」

 

 ごめんなさい高塔先輩。勝手に紹介して、勝手にフラれる結果になってしまいました。

 この話は絶対に先輩には秘密にしておこうと固く決心する中、鉢村さんが大阪の空を見上げながら呟く。

 

「はぁ~……どっかにいないかな~? 性格が良くってかわいい、腹筋が割れてる年下の彼氏候補……私も恋人がほしいな~……」

 

「あ、えっと……元気出して。僕もいい人が見つかったら、紹介するから」

 

「ありがとう、尾上くん……やっぱり君は優しくていい男だよ、腹筋も割れてるし……」

 

 鉢村さんって筋肉フェチなんだなと思いながら、僕はちょっとだけ彼女のことを不憫に思った。

 その後、無事に駅に着いた僕たちは購入した駅弁を新幹線の中で食べながら帰路に就き、これまた無事に家に辿り着いた。

 

 楽人と熊川さんがちょっといい雰囲気になったことと、みんながひよりさんがお弁当を三つ買って美味しく平らげたひよりさんに若干引いていたのは、ここだけの話だ。

 

 何にせよ、この大阪旅行は最高に楽しい思い出が作れたと思う。

 気持ちも新たに、僕たちは目前にまで迫った文化祭の準備に全力で取り掛かっていくのであった。

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