ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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文化祭の朝

 大阪旅行を終えてからの楽人と熊川さんは、これまで以上に熱心に文化祭の準備に没頭していった。

 クラスのみんなも二人に引っ張られ、ラストスパートとばかりに本番に向けて動いていく。

 

 僕とひよりさんもトッピングに合わせてレシピを改良したり、美味しく作れるように練習したり、それをみんなに教えたり……と、調理担当としての役目を果たすべく一生懸命に頑張っていった。

 そうやってみんなで協力して準備を進めている間に、時間はあっという間に過ぎ……いよいよ今日が、文化祭当日だ。

 

「食材、届いたっぽいよ! 家庭科室に持ってくね!」

 

「たこ焼き機も作るのに必要な道具と一緒にセットしとくぞ~!」

 

「使えるかどうかの確認のために軽く試作しとこうぜ!」

 

「そのためにも、まずは仕込みからやんないと……!」

 

 届いた食材の確認や調理器具の設置、さらには飾り付けた教室の最終確認など、みんなはそれぞれの作業を慌ただしくこなしている。

 かく言う僕も調理担当の責任者として、仕込みを任されていた。

 

「尾上くん! 材料届いたから、不足がないか確認しておいて! 大丈夫そうだったらそのまま仕込みお願い!」

 

「機材のチェックはこっちでやっとく! 朝から悪いけど、頼んだ!!」

 

「了解。じゃあ、家庭科室に行ってくるね」

 

「あたしも一緒に行くよ! みんなで手分けして、ちゃっちゃと終わらせちゃおう!」

 

 教室の準備は楽人たちに任せ、僕はひよりさんと料理の心得があるメンバーと一緒に家庭科室へと向かった。

 そこに届いていた大量の食材をチェックした後、それぞれに作業を割り振って仕込みを進めていく。

 

「生地は多めに用意しておいて。ネギもたくさん必要になると思うから、今のうちに切って冷蔵庫に入れておくよ。紅ショウガと揚げ玉に関してはすぐに用意できるから、袋から出すのは少し慎重にね」

 

「トッピング系列も多めに用意しておくからね! 少なくなってきたなと思ったらすぐに報告して、無くなる前に補充できるようにする! これを忘れないでね!」

 

 ガシャガシャ、トントンという音が家庭科室に響き渡る。

 多分、僕たちが一番慌てて作業しているんじゃないかなと思いながら、僕は自分の仕事を進めていく。

 

(どれだけの量を使うかわからないけど、事前に用意するなら多めの方がいいはずだよな……)

 

 食材の中で一番面倒なネギのみじん切りを大急ぎで量産し、同時にネギだくポン酢たこ焼きで使う青ネギもカットしていく僕は、色々と考えながら多めに用意していくことにした。

 最終的に余ってしまったとしても、途中で抜けてまた仕込みに入る手間を考えたら、一番初めの段階で多めに用意しておいた方が楽なはずだ。

 

 それは生地も同様だと思うから、こちらは特に多めに用意しておいてもらうことにした。

 最悪、後夜祭の時にクラスみんなで食べるために使ってしまえばいいやと思いながら、黙々と作業を進めていく。

 

「雄介くん、あたしも手伝うよ! 二人でやっちゃおう!!」

 

「ありがとう、ひよりさん。本当に助かるよ」

 

 ちょっと苦戦する量のネギを相手に奮闘していたところで、ひよりさんの援護が入る。

 おかげでかなり余裕ができた僕は、文化祭の開会式まで時間の余裕を残した状態で全ての仕込みを終わらせることができた。

 

 調理スタッフ全員が作業を終えたことへの安堵のため息を吐く中、ひよりさんが言う。

 

「ふぃ~、なんとか終わったね。高塔先輩から包丁とまな板を貸してもらえたおかげかな?」

 

「そうだね。僕たちのクラスの分だけだったら危なかったと思う」

 

 調理器具とスペースを割り振られた段階で抱いた不安は当たっていたようだ。

 あのまま少ないまな板と包丁だけで仕込み作業をしていたら、かなりギリギリになっていただろう。

 

 コンロを貸し出すことを条件に自分たちのクラスの調理器具を僕たちに貸してくれた高塔先輩に感謝しないとなと思いながら、彼がいるであろう隣のテーブルへと視線を向けた僕であったが……そこに広がる光景を見て、目を点にしてしまった。

 

「あの、高塔先輩? 何をしてらっしゃるんですか……?」

 

「ああ、尾上くん……愚かな俺を笑えよ、笑ってくれ……」

 

 床に正座し、首から『反省中』と書かれた札をぶら下げている高塔先輩の姿に驚きながら声をかければ、彼はどんよりとしたムードを漂わせながら自嘲気味にそう呻いてみせた。

 いったい、先輩の身に何が起きたのか……? と訝しがる僕に対して、高塔先輩は自分の背後にある物を指差しながら言う。

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