ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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初めてのお客さんは弟たち

 文化祭は開会式から始まる。

 とはいっても全校生徒が集合するものではなく、実行委員長が放送で挨拶をして、文化祭の始まりを宣言する程度のものだ。

 

 だから僕たちが「ああ、文化祭が始まったんだな」と思うのは、最初のお客さんが店にやって来たタイミングになる。

 そんなこんなで僕たちのたこ焼き屋にも初めてのお客さんがやって来たのだが……僕はその顔を見て、複雑な表情を浮かべていた。

 

「おいっす~! 雄介、遊びに来てやったぞ~!」

 

「たこ焼き食わせろ~! 美味いたこ焼きを食わせろ~っ!!」

 

「よりにもよって、最初のお客さんがお前らかよ……!?」

 

「おうおう、なんだ!? この店は客を文句をつけるっていうのか!?」

 

「クレームを入れてやる! 本社はどこだ!?」

 

 笑顔を浮かべながら手を振ってくる弟たちへと、ため息を吐きながら応える僕。

 雅人と大我がいつも通りのノリで騒ぎ始める中、笑顔のひよりさんが二人に声をかけた。

 

「いらっしゃい! 遊びに来てくれて嬉しいよ!」

 

「うっす! 義姉さ……七瀬さんも、お疲れ様です!」

 

 どうやらクラスメイトたちの前でひよりさんを義姉さん呼びしない程度の配慮はしてくれているみたいだ。

 ただまあ、僕の家族とひよりさんが仲良くしていることがわかるやり取りだけでも、みんなをざわつかせるには十分だったらしい。

 

「え~っ? ひより、尾上くんのご家族とも仲良しなの!? もうそこまでいってるんだ……!!」

 

「別にそんな大したことじゃないって! ご飯とか、一緒に食べたくらいだしさ~!」

 

「いや、十分大したことだと思うよ? やっぱあんた、感覚バグってない?」

 

 実際にはお泊りどころか一か月の同棲生活までしてしまったわけだから、今さら夕食を一緒に食べている程度のことだとその程度だと思ってしまっても仕方がない気がする。

 世間一般から考えれば僕たちが十分にすごいことをしているということを知ってクラスメイトたちがざわめく中、ホール担当の鉢村さんが興味深そうに弟たちを見ながら言った。

 

「それにしても、弟くんたち尾上くんにそっくりだね~! 今、中学生だっけ? 体格に差はあるけどみんな背が高いし、顔もかわいかったりカッコ良かったり……んん?」

 

 そう言いながらまじまじと弟たちの顔を見ていた鉢村さんが、大我の顔を見つめながら変な声を漏らす。

 そのまま、目を細めながら首を捻った彼女は、何かを思い出そうとしているような雰囲気を醸し出しながら口を開いた。

 

「君さ、どこかで会ったことない……? なんか知ってる気がするんだよね……」

 

「え? ええ……?」

 

 急にそんなことを言われた大我も困惑しながら首を捻り始めた。

 この二人に接点があるとは思えないが……と考える僕であったが、あることを思い出すと共に二人に言う。

 

「あっ! もしかして『やっぱ寿司!』で顔を合わせたんじゃない? ほら、紫村が暴れた時の……!!」

 

「ああ、なるほど!!」

 

 夏休みのある日、僕は柔道部の友人たちと回転寿司屋で食事をしていた大我から、紫村がひよりさんを探して暴れているという報告を受けた。

 時を同じくしてひよりさんもその店でアルバイトをしていた鉢村さんから、紫村の突撃報告を聞いていたはずだ。

 

 暴走して鉢村さんを問い詰める紫村を止めたのは大我だったし、その際に会話はせずとも二人は顔を合わせていたのだろう。

 ということを僕が指摘すれば、鉢村さんも大我も納得したように頷きながら会話に花を咲かせ始めた。

 

「あの時の子だったんだね! 本当、助けてくれてありがとう!」

 

「いえいえ! 俺もちょっと兄貴から話を聞いて気になったから、首を突っ込んだだけですし……!!」

 

 偶然の再会を喜ぶ二人を見ながら、僕も「こんなこともあるんだな~」とどこか微笑ましい気持ちになっていたのだが……話をする鉢村さんの姿を見て、違和感に気付く。

 

 頭の上から下まで、何か意味深な目線を向けながら大我を観察した彼女は、口元に手を当てて何かを考え始める。

 なんだか嫌な予感がするぞ……と、鉢村さんの様子を窺っていた僕は、不意に微笑みを浮かべた彼女が発した呟きを聞き逃さなかった。

 

「……大いに()()、ね……!!」

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