ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ちょっとだけ格好つけてもいいかな?

「なんか高塔先輩にめっちゃ感謝されちゃったね! どうしたのかな?」

 

「あ、あはは……どうしたんだろうね……?」

 

 高塔先輩たちのクラスを出た僕たちは、そんな会話をしながら人で賑わう廊下を歩いていく。

 余談だが、先ほどおでん屋を出る際に号泣していた高塔先輩から「二人のおかげでからしの使用量がぐんと上がった! ありがとう!」と手を掴まれながら感謝されていた。

 ちょっとよく意味がわからない(ということにしてもらいたい)が、先輩の役に立てたのならまあ良しとしよう。

 そんなこんなで腹ごしらえを終えた僕たちは、次なる目的地に移動中というわけだ。

 

「さっきは僕の行きたいところに付き合ってもらったから、今度はひよりさんの行きたい場所に付き合うよ」

 

「へっへ~! そう言ってくれると思ってた!」

 

 どうやら、既にひよりさんはどこか行きたいところがあるらしい。

 そこに向かって歩いていることを察した僕が彼女と話をしながら進んでいけば、ほどなくして体育館に到着したではないか。

 

「いらっしゃ~い! ただ今、バスケ部が主催のシュートチャレンジ開催中で~す! 成功した方には豪華賞品をプレゼントしちゃいますので、是非是非ご参加くださ~い!」

 

「……もしかしてひよりさん、あれをやりたいの?」

 

「ううん! やりたいんじゃなくって、彼氏の格好いいところを見たいんだよ!」

 

 にこにこと笑いながらのひよりさんの言葉に、なるほどと頷く。

 少し気恥ずかしくもあったが、かわいい彼女のお願いとあっては無下にするわけにもいかないなと思いながら、僕は体育館の中に入った。

 

「おお、尾上じゃないか! どうだ? ちょっとやっていかないか?」

 

「そのつもりですよ、先生」

 

 バスケ部の顧問である田沼先生にいきなり捕まった僕は、苦笑を浮かべながらそう答える。

 ひよりさんが楽し気に見守る中、先生はチャレンジの説明をしてくれた。

 

「よし! コースは初級、中級、上級とあってな。それぞれゴール下、フリースローエリア、スリーポイントエリアからシュートして、三回中一回でも成功したら賞品が貰えるって感じだぞ! ちなみに、難易度が高ければ高いほど賞品も豪華になるからな!」

 

 いくつかあるゴールを見てみれば、それぞれの難易度に分かれてシュートを打っているお客さんたちの姿が見える。

 みんな、楽しそうでいいなとお客さんたちがバスケットを楽しんでくれていることを喜ぶ僕へと、先生は質問を投げかけてきた。

 

「それで、どうする? どの難易度に挑戦するんだ? まあ、まさかお前ほどの男が上級を選ばないわけがないとは思っているが、一応な?」

 

「あっ! 挑戦状を叩き付けられてるよ、雄介くん! これは乗るっきゃないよね!?」

 

「ええ~……?」

 

 なんだか勝手にスリーポイントチャレンジをすることになったような気がするが、仕方がない。

 なんとなくこうなることを予想していた僕は、そうこなくっちゃとばかりにいい笑顔を浮かべた田沼先生に案内され、コートの中に入る。

 

 久しぶりに足を踏み入れたバスケットコートはどこか懐かしい雰囲気があって……先生からボールを受け取れば、その感覚は一層強く感じられるようになった。

 

「練習はなし。三回中一回でもシュートが決まればクリアだ。張り切っていけ!」

 

「雄介くん、頑張れ~っ!」

 

 大きく腕を振って応援してくれるひよりさんに笑顔で応え、スリーポイントラインからゴールを見やる。

 上級コースに挑戦する人間が珍しいのか、待機中のお客さんや手持ち無沙汰なバスケ部のみんなからの視線が集まっていることを感じたが……軽くドリブルをした途端、全ての雑念が消えていった。

 

(懐かしいな、この感じ……とはいっても、試合中にスリーポイントなんて滅多に打たなかったんだけどね)

 

 部活を引退したのが去年の夏だから、バスケから離れてもう一年以上が経っていることになる。

 毎日のように触っていたボールも押入れの奥にしまって、取り出さなくなってから長い時間が過ぎた。

 

 それでも……こうして少しドリブルをするだけで、懐かしい感覚が蘇ってくる。

 「何百万本と打ってきたシュートだ、体が覚えてらっ」……大好きな漫画のキャラクターの台詞を思い浮かべた僕は、改めてゴールを真っすぐに見つめた。

 

(……今度、久しぶりにボールを出してみようかな。空気が抜けちゃってるかもだけど、綺麗にして、ちょっとハンドリングもして、それで――)

 

 無心……というわけではないが、今がどういう状況かも忘れて、ただただバスケットのことだけを考えながら跳ぶ。

 体に染みついていた動きのまま放ったボールは、綺麗な弧を描いてゴールへと飛び、そして――。

 

「……よし、いい感じ」

 

 ――心を蘇らせる、美しい音色を響かせながら籠の中に飛び込んでいったボールを見つめながら、僕は満足気に呟くのであった。

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