ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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文化祭デートは終わりだけど、楽しい日々はこれからも続く

「賞品、それで良かったの?」

 

「うん! だってかわいいじゃん!!」

 

 僕の質問に対して、ひよりさんがぬいぐるみを抱き締めながら笑顔で答える。

 ここまで嬉しそうにしてくれるのなら、スリーポイントチャレンジを成功させた甲斐があったなと僕が考える中、ひよりさんは鼻歌を口ずさみながら上機嫌にこう言葉を続けた。

 

「水族館のイルカちゃんも含めて、これで二つ目だね! ベッドの上が雄介くんとの思い出で埋め尽くされちゃいそうだよ!」

 

「そっか、前にもぬいぐるみを買ったもんね」

 

「あの子とも一緒にお風呂に入ってるし、この子も早速入れてあげよう! 雄介くんも一緒にどう?」

 

「ひよりさん? 人が多いところでそういうのは止めようか? ねっ?」

 

 流石にこの喧騒の中で僕たちの会話に耳を澄ませている人がいるとは思えないが、人に聞かれたら恥ずかしい会話であることは確かだ。

 小さく咳払いをした後で僕がツッコミを入れれば、ひよりさんはてへっと舌を出してごまかしてきた。

 

「そろそろ休憩時間も終わるし、教室に戻らないと。名残惜しいけど、みんなを待たせるわけにもいかないしね」

 

「は~い! 十分に楽しかったし、また暇な時間ができたら色々回ってみようよ!」

 

 気が付けば、大分時間が過ぎていた。たこ焼き屋を回してくれているみんなのためにも、そろそろ戻らなくては。

 初めての文化祭デートを存分に楽しめたし、思い出に残るぬいぐるみも手に入った。それで十分かと考える僕に、微笑みを浮かべたひよりさんが言う。

 

「この子、前に話したバスケットボールチームのマスコットなんだって。ほら、京都旅行の時に話したでしょ?」

 

「ああ、北海道の……!! もしかして、それがそのぬいぐるみを選んだ理由?」

 

「うん! いつか、雄介くんと一緒に旅行に行く時、この子も連れて行ってあげようと思ってさ!」

 

 二人で旅行に行くなら……という少し前に京都のホテルでした話を思い出した僕は、笑いながらのひよりさんの返事に心臓をときめかせる。

 こういうことを堂々と言える彼女ってすごいよなと思いつつ、僕も北海道旅行への期待を膨らませる中、ひよりさんはこう続けた。

 

「その時には一緒に温泉に入ろうね~! この子を含めて三人で行く旅行で、四人目を作っちゃうのも悪くないかも……!!」

 

「ひよりさん? 完全にアウトだよ? ひよりさん?」

 

 前言撤回、堂々と物を言うにも限度というものがある。

 まあ、今日は文化祭デートでテンションが上がっているのだろうと、そう考えて大目に見ることにした僕へと、柔らかい笑顔を浮かべたひよりさんが言う。

 

「まあ、冗談はさておき……これからも今日みたいに楽しい思い出、いっぱい作ろうね。学校でも、旅行先でもさ」

 

「……うん。約束するよ。ずっとずっと、傍に居るから」

 

 もう少しで教室に到着してしまうというところで、ひよりさんの手を強く握りながら僕は彼女の言葉にそう応える。

 ひよりさんも優しく、強く……小さな手に力を込めて僕の手を握り返したところで、僕たちはたこ焼き屋の前に戻ってきた。

 

「二人とも、お帰り! 悪いんだけど、急ぎでやってほしいことがあるんだよね!」

 

「調理担当の男子たちが調子に乗っちゃってさ、材料を多めに使っちゃったんだよ。他にも足りない食材が出てきそうだったから、尾上くんが戻ってきたら相談しようって話してたところだったんだ」

 

「そっか、わかったよ。じゃあ、家庭科室に仕込みに行ってくるね。あと、足りない材料に関してもどうにかしてみるよ」

 

 教室に戻って早々、働いていた熊川さんからそんな話をされた僕は、仕込みをするためにすぐに教室を出ることになってしまった。

 ひよりさんの方は調理スタッフとしてここに残るみたいで、離れ離れになってしまうことが残念でならない。

 

 でもまあ、仕方がないよなと考えながら熊川さんと相談しつつ、教室を出ようとした時……ひよりさんが僕へと声をかけてくれた。

 

「雄介くん、いってらっしゃい! 頑張ってね!」

 

「うん、ありがとう。いってきます」

 

 笑顔で手を振る彼女に見送られながら、教室を出る。

 朝、出勤の時に奥さんに見送られる男の人って、こんな気分なのかなと、僕はそんなことを思った。

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