ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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あいつらに復讐してやる……!(二奈視点)

 

「二奈ちゃん、次はどこ回る?」

 

「喉とか乾いてない? 良ければ俺が奢るよ!」

 

「あんまり歩き回ると疲れるだろうし、どこかで休むのもいいんじゃないかな?」

 

(あ~……ウザいな~……)

 

 取り巻きの男たちからのご機嫌取りの言葉に対して、心の中ではげんなりとした思いを抱えながらも私は笑顔で対応する。

 バスケ部のキャプテンをはじめとした男たちは、メイド服を着ている私に夢中になっているようだ。

 

(まあ、私は元がかわいいし? 何を着ても似合うわよね~!)

 

 そんな私と文化祭を回れるのだから感謝しろよなと取り巻きの男たちに思いつつも、自分がこいつらに頼っている現状が少し嫌でもある。

 ただ、こうして大勢の男たちにちやほやされていると、いい気分になれるという思いもあった。

 

 元々は、こいつらは少し前から感じている謎の視線対策のボディガードとして呼んだ部分もあるのだが……こうしてお姫様扱いされるのは正直悪い気分じゃない。

 周囲から羨望と嫉妬が入り混じった眼差しを向けられることもあるが、そういうのは大概がブスどもの妬みなのだから無視するに限る。

 

(今のところ、ストーカーの気配は感じないわね……人が多いから警戒してたけど、今日は大人しくしてるつもりかしら?)

 

 折角ボディガードを用意したというのに、これでは意味がないではないか。

 あわよくば、今日で犯人を見つけて、こいつらに捕まえてもらおうかと考えていたが……何も起きないのなら、それはそれで良しとしよう。

 

 まあ、たまには取り巻きの男たちにご褒美をあげるのも私の役目かと思い直した私は、メイド服を着たまま、笑顔で彼らに言った。

 

「そうだな~! ちょっとお腹も空いてきたし、歩き疲れちゃったし……どこかで座って休みたいかも~!」

 

「わ、わかったよ! じゃあ、いいところを探すね!」

 

「近くにたこ焼き屋があるみたいだから、そこでどう?」

 

「わ~っ! 私、たこ焼き大好き~! 行こ行こ!」

 

 営業スマイルを浮かべながらちょっと甘えるふりをしてやれば、それだけで男たちは有頂天になってだらしのない顔になる。

 チョロいな~、とこいつらのアホさ加減を心の中で嘲笑う私であったが、そこで不意にあの尾上のことを思い出してしまった。

 

(あいつ、私をコケにして……! 絶対に許さないんだから……!!)

 

 この私がわざわざ胸を押し当てて、全力で誘惑してやったっていうのに……尾上の奴は靡く素振りを見せもせず、冷ややかな目で見ながら拒絶してきた。

 二度も私に男を奪われた七瀬に惨めさを味わわせるはずが、あべこべに私が辛酸を舐めさせられる羽目になったことへの怒りは、未だ収まっていない。

 

 絶対に……この借りは返す。この文化祭中に復讐すると決めていた私は、計画を実行に移そうとしていた。

 何を隠そう、こうして男たちを集めたのも、わざわざ尾上たちのたこ焼き屋の近くで何か食べたいと言って店に行くように誘導したのも、全てはこの計画のためだ。

 

 それなりに込んでいたたこ焼き屋の列に並び、数分待って……少し苛立ち始めたところで、私たちは店の中に案内された。

 メイド服を着た美少女が入ってきたことで他の客や働いている連中が私に視線を向ける中、厨房に復讐対象である七瀬の姿を見つけた私は、小さく笑みを浮かべる。

 

(見てなさいよ、七瀬……!!)

 

 心の中で復讐心を燃え上がらせながら、私は平静を装った。

 愛想よく取り巻きたちに笑顔を振りまき、進んで会計を担当する彼らに感謝の気持ちを伝えて、ノーマルのたこ焼きを注文する。

 

 その間に、もう一人の復讐対象である尾上を探したが、今はどこにもいないようだ。

 もしかしたら休憩時間中かと思いつつ、作業をさせられているせいで恋人と文化祭を回ることもできない七瀬を嘲笑していた私の下に、注文していたたこ焼きとドリンクが届けられる。

 

「わ~っ! すっごく美味しそ~っ! じゃあ、いただきま~す!!」

 

 本当は微塵もそんなことは思っていない。私に幾度となく屈辱を味わわせた七瀬が作った料理なんか、口に運ぶ前に踏みにじってしまいたいくらいだ。

 そういった怒りを必死に押し殺し、たこ焼きを頬張った私は……少し経った後、盛大にむせ込む演技をし始めた。

 

「げほっ! ごほっ!」

 

「あはは、もしかして熱かった? 出来立てだし、油断してるとそうなっちゃうよね」

 

「ごほっ! ごほっ! ごほごほっ! げほっっ!!」

 

「に、二奈ちゃん? 大丈夫? 水、飲む……?」

 

 私の迫真の演技に騙された男たちが不安そうな表情を浮かべたタイミングを見計らい、たこ焼きと一緒に届けられたドリンクを一気に飲み干す。

 ぜぇ、ぜぇ……と息を荒げ、顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべた私は、大変な目に遭った美少女を演じながら、大声で叫んだ。

 

「辛~い! これ、ロシアンたこ焼きだよ!!」

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