ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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……は?(二奈視点)

 入り口から聞こえてきた声の方へと私たちが顔を向ければ、そこには尾上が立っていた。

 七瀬と同じく、私に屈辱を与えた相手……もう一人の復讐の相手である尾上の登場をこっそりと喜ぶ中、部長があいつへと言う。

 

「なんだ、お前? 余計な口出ししてくんじゃねえよ!」

 

「僕は実行委員の二人に頼まれて、調理部門の責任者を担当しています。料理のことで何か問題あったのなら、僕の責任です」

 

「じゃあ、お前もそいつと一緒に二奈ちゃんに謝れよ! お前らのせいで、大変なことになったんだぞ!?」

 

 想像以上に喜ばしい展開に、私の心臓は高鳴っていた。

 まさか、七瀬だけでなく尾上も一緒に私の前に跪かせることができるだなんて、最高としか言いようがない。

 

 バスケ部の部長たちに詰め寄られる尾上の姿を見て、私は内心大喜びしていたのだが……あいつは顔色を一切変えずにこう言ってきた。

 

「もちろん、謝罪はするつもりです。ですがその前に、何があったのかを詳しく聞かせてください。それで、どこに問題があったのかを確認しますので」

 

「何があったかって、簡単だよ! そこのチビがオーダーミスをして、ロシアンたこ焼きを作って俺たちに提供した! そのせいで二奈ちゃんが大変な目に遭った! そういうことだ!」

 

 まずは状況確認を、と言った尾上に対して、部長が大声で怒鳴る。

 威圧感たっぷり、怒りもマシマシな部長の態度に他のクラスメイトたちは若干引き攣った表情を浮かべていたのだが……尾上は一切怯むことなく、冷静にこう返してきた。

 

「わかりました。そちらの方がロシアンたこ焼きを食べてしまったんですね? 申し訳ありませんが、詳しくお話を聞かせていただけませんか?」

 

「……え?」

 

 部長の話を聞いた尾上が、私を真っすぐに見つめながら言う。

 このタイミングで話を振られるとは思っていなかった私が思わず間抜けな声を漏らす中、男たちが必死にそんな私のことを庇い始めた。

 

「いや、そんな必要ないだろ!? こういうことがあったって話だけで十分じゃないか!」

 

「お前、そうやって話を聞くふりをして、二奈ちゃんに圧をかけるつもりだな!? そんなの許さないぞ!!」

 

「何があったのかを正しく把握するためにも、しっかりと話を聞かせていただくだけです。圧をかけてなかったことにしようだなんて、そんなことは考えていませんよ」

 

 先輩たちからの言葉を軽くスル―して、尾上が私の前に立つ。

 じわりと滲み出る怒気を必死に押し殺しているであろう尾上は、高い位置から私を見下ろしながら淡々と言った。

 

「紫村二奈さん……いったい何があったのか? 詳しく教えていただけますね?」

 

「っ……!!」

 

 その声色と表情を見れば、こいつが私を心の底から疑っていることがわかった。

 まあ、それも当然だろう。尾上からすれば、この間の仕返しを目論んで私がこんな真似をしたと考えるに決まっている。

 

 だけど、それを証明することはできない。証拠はどこにもないんだから。

 どうにか逆転の方法を探すために私に圧をかけながら話を聞き出そうとしたんだろうが……それも無駄だ。

 こうなることも十分に想定していた私は、すすり泣きながら尾上の要望に応えるように話をしていく。

 

「詳しくって言われても……今、部長が話した通りです。たこ焼きを食べたら辛くって、それでびっくりしちゃって……」

 

「普通のたこ焼きを注文したはずなのに、届いたのはロシアンたこ焼きだったということでしょうか?」

 

「そうです。普通のだと思ってたから、中にあんなにいっぱいわさびが入ってるだなんて思わなくって……慌ててドリンクと一緒に飲み干しちゃったから証拠はないですけど、まさかなんで飲み込んじゃったんだとか言いませんよね?」

 

「そうだぞ! 女の子がそんなはしたない真似できるわけがないじゃないか!!」

 

 証拠がないのはこちらも同じだが、こういう場合は声が大きい方が勝つのだ。

 こっちには私の代わりに大声を出してくれる男たちがいるし、こいつらに対抗して尾上が大声を出したら印象が最悪になる。

 

 結局、私の望み通りに七瀬も尾上も私に頭を下げるしか道はないのだと……ウソ泣きを続けながら勝利を確信する私へと、小さく息を吐いてから尾上が言う。

 

「……確認します。あなたは普通のたこ焼きを頼んだつもりで届いたたこ焼きを食べたら、それは中に大量のわさびが入ったロシアンたこ焼きだった。驚いたあなたは大慌てでドリンクと一緒にそれを流し込んだ……今の話に、間違いや嘘、何か勘違いのようなものはありませんね?」

 

「そんな! 私を疑ってるんですか!? 全部、本当のことを話したのに、ひどい……っ!!」

 

「二奈ちゃん! お前、いい加減にしろよ! 二奈ちゃんをいじめるために話を聞くって言うなら、これ以上は――!!」

 

 私が顔を覆って大泣きするふりをすれば、単純な部長が尾上の胸倉を掴んで大声で怒鳴ってみせる。

 ここまでくればこれ以上私から話を聞くことなんてできないだろうと、そう考えていた私だったが……尾上は、この状況でなおも表情を変えずに口を開いた。

 

「いじめてなんていません。それに、まだ話を聞かなければならないことがあります」

 

「ふざけるなよ!? もうこれ以上、二奈ちゃんに何を聞く必要なんてないだろうが!!」

 

「……この店にはもう、わさびが残ってないとしてもですか?」

 

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