ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「はぁ~あ、こうなっちゃったか~……」
「まあまあ、どんまい……で、いいのかな?」
深いため息を吐く優希を、玲香が慰めつつ首を傾げる。
そんな二人の様子を見つめながら、あたしもまたどう反応すればいいのかわからずに苦笑を浮かべていた。
人もまばらな校内。大半の生徒たちが体育館や校庭で騒ぐ中、廊下に設置されたベンチで座って話をするあたしたちは、優希の話(愚痴?)を聞いていく。
「いやさあ、微妙にそんな感じはしてたっていうか、頑張ってるのはわかったんだけどな~……タイミングが悪過ぎというか、運がなかったというか……」
雄介くんも言っていた、遊佐くんの優希への告白大作戦。
実行委員の活動の中で仲良くなり、文化祭が終わった後に告白する……というシンプルな計画は、最終段階までは上手くいっていたと思う。
さあ、最後は告白だ! というところになり、お疲れ様会の途中で教室から出て行った二人のことを、あたしもクラスのみんなもドキドキしながら見送った。
遊佐くんの告白に対して、優希はどう答えるのか? という部分にあたしも期待していたわけなのだが……途中で邪魔が入ってしまったらしい。
「まさか、先生が呼び出しに来るとはね。最後の最後でブレーキがかかっちゃうだなんて、遊佐くんも残念だな~……」
二人きりになった後も微妙にもたついてしまって、それでも一生懸命に頑張ってあと少しで告白にこぎつけるところまでいった遊佐くんであったが、そこでバスケ部の顧問である田沼先生が彼を探しに来てしまった。
どうやら、あたしたちのたこ焼き屋でマネージャーの紫村や部長が騒ぎを起こした件について話を聞きたかったそうなのだが……一刻も早く問題を把握しようとするその姿勢が、今回は完全に仇になった。
結果として、空気がぶち壊しになったことで告白は中断。
遊佐くんもそのまま田沼先生に連れて行かれ、中途半端な状態で二人だけの時間は終わってしまったということだった。
「そんなラブコメ漫画みたいなことある?
「まあ、そこは告白までもたもたしてたり、人が来ない場所を選ばなかった遊佐くんにも原因があるからね。どんまいって感じだわ」
「そういう時、どういう感じでいけばいいのかわかんなくて大変そうだね。何事もなかったようにすべきなのか、少しは親密にすべきなのか……」
「ホントだよ!! あの空気の中で寸止めされた私の気持ちにもなってくれ!! あ~っ! 明日から遊佐くんにどう接すればいいんだ~っ!?」
ツイてないという感覚もあるが、あたしとしてはまた紫村のせいで被害が出てしまったという気持ちがある。
ただ今回に関しては流石に「あたしがあいつと揉めてなければ……」という感じではなく、完全に割り切って「あのクソ女……!」と心の底から憤っている感じだ。
たこ焼き屋の嘘クレームに関してもあいつがボロを出してくれたから良かったものの、そうじゃなかったら嫌な思い出としてクラスのみんなの心に刻み込まれるところだった。
無事に撃退できたとしても、モヤつきに近しい感情があるというのに……と、飲み終えた紙パックのフルーツオレの容器を苛立ちのままにぐしゃっと握り潰したあたしは、それをそのままゴミ箱へと放り投げる。
「おお、ナイッシュー。やるじゃん、ひより」
「ちょっと今はバスケを想像させるようなこと止めて……なんか複雑な気持ちになるから……」
見事にゴミ箱にシュートが決まったところで親友二人からそんなことを言われたあたしは、気になったことを優希に聞いてみることにした。
「ところでなんだけどさ、遊佐くんに告白されてたとしたら、優希はどうするつもりだったの?」
「ど、どうするって……?」
「OKしたのか、断ったのか、どっちだったのってことだよ」
「あ、それ私も気になってた。ぶっちゃけどうだったの?」
告白の返事はどうするつもりだったのか? その部分に関して尋ねれば、優希は顔を真っ赤にして俯いた。
何か言おうとしているが、上手く言葉にできない親友の反応を見て、答えを理解したあたしはそれ以上は追求せずにこう言う。
「まあ、今回は運が悪かったわけだけどさ……その内、再チャレンジしてくると思うよ。その時にちゃんと答えを聞かせてあげれば、それでいいんじゃない?」
「ハードル高くなっちゃってるけどね。いっそ優希の方からアプローチかけてみるのはどう?」
「そういうのはちょっと……やっぱ男の子の方から行動してほしいっていうか……ねぇ?」
同意を求めるように問いかけてくる優希に対し、苦笑を浮かべながらも気持ちはわかると答える。
あたしの時も雄介くんから告白してもらったしな……と考えて懐かしい気持ちになったところで、勢いをつけてベンチから立ち上がった。
「あ? そろそろ行くの?」
「うん。約束もあるしね」
「了解。じゃあ、楽しんできなよ。優希のことは任せて」
そう言って見送ってくれる玲香に感謝しつつ、小走りに走り出す。
向かう先は屋上。後夜祭に参加するわけでも、何かを見に行くわけでもない。だけれども……あたしたちの文化祭は、まだ終わらない。
今日という一日を締めくくる、大切な人と過ごす二人だけの時間が、あたしを待っていた。