ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
文化祭の打ち上げなんですが、親友の様子がおかしいです
「あの、楽人? 本当に大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫、大丈夫だ……!!」
(とてもそうは見えないんだよなぁ……)
無事に文化祭が終わり、翌日の土曜日。僕は隣に座る親友の様子にとてつもない不安を抱いていた。
本日、僕たち一年C組の面々は文化祭の打ち上げをすることになっており、クラスメイトの大半が集まることになっている。
僕も打ち上げ会場であるカラオケのお店にやってきたのだが……そこでとても様子が気になる楽人を見つけてしまった、というわけだ。
(まあ、仕方ないよなぁ……熊川さんとの関係が中途半端なところで寸止めされちゃってるし、どんな顔で話をすればいいのかわからないんだろうな……)
僕の親友、遊佐楽人は同じクラスの熊川優希さんに想いを寄せている。
このままの関係でストップしたくないと考えた楽人は一念発起し、熊川さんと文化祭実行委員として活動する中で仲を深め、最終的に告白するという計画を立てた。
途中、紫村の邪魔が入ったりもしたが、大阪旅行などを経て、楽人の目的は無事に達成できたはずだ。
というわけで文化祭が終わった後、ついに勝負の時を迎えた楽人であったが……残念ながら、間接的にまた紫村に邪魔をされ、告白一歩手前でストップしてしまうというなんとも中途半端な結果になってしまったという。
告白できなかったことに関してはもう仕方がないと割り切るしかない。次の機会を見つけ、再びアタックすればいいだけの話だ。
問題は、今現在の二人の間にある微妙な空気である。
楽人は告白するつもりだったし、熊川さんもその雰囲気を察していただろう。
そんな状態で最後の一歩だけを踏み越えなかったのだから、お互いに気まずくて仕方がないはずだ。
楽人は熊川さんに自分の好意がバレたことと告白までいけなかったことを悶えているし、ひよりさんからの情報によれば、熊川さんも自分が好意を向けられていることを自覚して落ち着かない様子を見せていたという。
そんな二人が今日、文化祭終了後に初めて顔を合わせる。
流石に実行委員である二人がこの打ち上げに参加しないなどという選択肢はなく、色々なものを抱えながらこうしてやってきた……という感じのようだ。
「なあ、雄介……俺、どうすればいいのかな……? 絶対熊川さんも気まずく思ってるよな……?」
「いや、まあ、それはそうだろうけど……でも、紫村に絡まれた時と比べれば、状況としては良い方でしょ?」
「そうかなぁ……? そうかもなぁ……もしも昨日、告白してフラれてたらって考えたら、そっちよりかはマシかぁ……」
ダメだ。楽人の奴、かなりネガティブになってる。早く何とかしないと……!
そんなふうに焦りつつもどう言葉をかけるか悩む中、背後から元気な声が聞こえてくる。
「うぉ~い! 雄介く~ん! おっはよ~!」
「あっ、ひよりさん! ……ん?」
僕に声をかけてきたのは、僕と同じく親友を気遣って別行動をしていたひよりさんだ。
仲のいい親友二人と合流してからここに来たのだろうが……よく見れば、熊川さんは鉢村さんの背中に隠れている。
しっかりばっちり、あっちも気まずいと思ってたんだな~と考える中、ひょっこりと顔を出した熊川さんが楽人と目を合わせ、お互いにフリーズしてしまった。
「ほら、優希。さっさと出てきなさい」
「あ、うん……」
「楽人も、いつまでそうしてるつもりだよ?」
「ああ……」
お互いに促され、のろのろと動いた二人が近付く。
普段ならばここで明るく挨拶をするところなのだが……今は楽人も熊川さんも何かを言おうとして口を開けては何も言えなくなり、視線を泳がせながら口を閉ざすということを繰り返していた。
「う~ん……重症だね、こりゃあ……」
「そうだね……」
ひよりさんを間に挟み、腕を組んで唸る鉢村さんと話し合いながら二人の様子をそう評する。
仕方がないことだが、文化祭直後に顔を合わせると気持ちの整理もできてないよなと思いつつ、僕はこれから始まる打ち上げでどう二人の関係を修復すべきかを必死に考えていくのであった。