ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
全員が集まって会場である大部屋に移動し、楽しい打ち上げが始まった。
山盛りのポテトや唐揚げを食べながらおしゃべりしたり、カラオケらしく歌を歌ったり、ちょっとしたゲームをしたり……と、中身もとても楽しいのだが、やはり楽人と熊川さんの空気は微妙なままだ。
ちょっと距離があるというか、微妙に噛み合わない。話を振ってもなんだか妙な反応をしてくるし、二人とも僕やひよりさんを間に挟んで近付かないようにしている。
紫村の時とはまた違うものの、似たような雰囲気を既に経験したことがある僕たちは、事情を知っていることも相まってそこまで焦ることはなかったが……しかし、放っておくのも良くないよなという気分でもあった。
大半のメンバーを部屋に残す中、僕たちはひっそりと集まって話し合いを行う。
「どうするよ、楽人と熊川のこと……?」
「どうするもこうするもなくない? 私たちが口とか手を出すと、それはそれで余計にこじれる原因になりそうじゃん」
「そうだよね……あと一歩ってところが地味に厄介だな……」
これが告白のこの字も出なかったというのならば逆に良かったのだが、あと一歩のところで寸止めされているから質が悪い。
僕たちが何かするのも気が引けるし、それで仲がこじれてしまったらより厄介なことになると考える中、一人の男子が言う。
「あっ! だったらさ、ここで楽人に告白させりゃいいんじゃね!? 場も盛り上がるし、色々はっきりするわけだからそれがベスト――」
「「「ダメ、絶対にあり得ない」」」
「ひぃん……」
この場で告白させてしまえばいいという男子の意見を、女子たちが一致団結して却下する。
ダメ出しされた男子が小さくなる中、女子たちは怒涛のツッコミを連打し始めた。
「そんなヤケクソ告白で納得できるわけないじゃん。少しは乙女心を考えなよ」
「そもそも、こんな大人数に囲まれて、見られてる状態だと圧を感じるでしょ? 優希がオーケーしなきゃいけないってプレッシャーを感じたらどうすんのよ?」
「遊佐くんも後悔するって。告白って、その場のノリとかでするもんじゃないんだよ」
「うぐっ、ふぐぅ……!! わぁ……ァ……!」
「泣いちゃった……!!」
なんでこっちまでカオスになるんだと思いつつも、僕までこの混沌に加わったら収拾がつかなくなると判断し、敢えて黙っておくことにした。
ひとしきりツッコミをしたところで、女子たちは振り向き、僕の方を見ながら口を開く。
「それで、尾上くん? 何かいい案とかない?」
「この中で唯一の彼女持ちに意見を聞きたいんだけど……」
「う、う~ん、そうだなぁ……?」
期待が籠っている視線を向けられてしまうと、若干緊張してしまう。
僕も必死に頭を働かせ、似たような経験はないかと考えていき……今の楽人と近しいシチュエーションを思い出す。
(気まずさでいえば、ひよりさんと江間の修羅場を見た翌日の僕に近いか。あの時の僕、ひよりさんとどんな感じで話せばいいのかわかんなくってテンパってたもんな……)
相手に声をかけにくいというか、どう接すればいいのかわからない状況は、あの日の僕に似ているだろう。
明るくいくべきか、相手の様子を窺うべきか、そういうのがわからずに思い悩んでいた記憶がある。
あの日の僕のように、楽人も熊川さんもどうすればいいのかがわからずに悩んでいるのだろう。
その状態で相手が自分と同じように戸惑っている雰囲気だと、気まずくなってしまって当然だ。
僕の場合はひよりさんが気にしていない風を装って明るく話してくれたからそこはどうにかなったが……と考えたところで、ここまでの結論を言葉として言う。
「二人の関係を進展させることに関してはノータッチでいくべきだと思う。僕たちが手を貸すとしたら、気まずい雰囲気を解消することまでにすべきだよ」
「それは私も賛成かな。二人の恋は二人のものだし、決着間近のところに私たちが手を出すってのは違うと思う」
「問題は、二人を普通に話せる状態にする方法なんだよね。話のきっかけみたいなものを作れればチャンスはあると思うんだけど……」
僕の意見に、鉢村さんも賛成してくれた。
あくまで手助けはギクシャクしている楽人と熊川さんを普通に会話できる状態に戻すまでだと、そこから進んで告白を促すような真似はしないようにすべきだという意識を共有したところで、これ以上長引くと楽人たちに不審がられると考えた僕たちは、一旦バラバラに分かれて順番に大部屋へと戻っていく。