ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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親友たちも、結構甘い

「えっ? お、俺!? いや、流石に雄介の前で七瀬さんをかわいいとか言ったら、命の危険が……!!」

 

 僕を何だと思っているんだという気持ちが半分、実際その通りかもしれないという納得が半分。

 そんな複雑な感情を抱えながら微笑みを浮かべ、静かに見守る僕の前で、ひよりさんが楽人へと言う。

 

「違う、違う! あたしは雄介くんにいっぱい褒めてもらって満足したから、自信なさ気にしてる優希を褒めてもらおうかなって!」

 

「「えっっ……!?」」

 

 ひよりさんの言葉に、楽人と熊川さんが驚きの呻きを漏らす。

 見事にその声をハモらせた二人が固まる中、鉢村さんが強引に熊川さんを楽人の前へと連れていった。

 

「はいはい、連れてきましたよ~! そんじゃ遊佐くん、後はよろしく!」

 

「同じ実行委員として頑張った相棒なんだし、しっかりバッチリ褒めてあげてね!!」

 

「ちょっ!? 玲香! ひより!!」

 

「あ、えっと、その……」

 

 強引だが、会話のきっかけは作れた。あとは二人次第だ。

 いきなりの状況に困惑する楽人がしどろもどろになる中、熊川さんが先に口を開く。

 

「い、いいよ、遊佐くん。そんな無理して私のことなんか褒めなくってもさ……」

 

「そ、そんなことは――!!」

 

「わかってるって! ほら! 私ってひよりとか玲香と違ってペチャパイだし? 二人が胸のサイズで衣装選びに苦戦してる中、一人だけ速攻で決まっちゃったし? 見劣りするって自覚もあるからさ~……!!」

 

 苦笑を浮かべながら、自分を卑下する熊川さん。

 明るく振る舞いながらも自虐的なことを言う彼女に対して、意を決した楽人が待ったをかける。

 

「そんなことないって! 熊川さんも二人に負けないくらいかわいいよ!!」

 

「えっ……?」

 

 突然の楽人の言葉に、熊川さんは目を丸くして驚いている。

 そんな彼女の前で、楽人は早口で褒め言葉を連発していった。

 

「熊川さんは胸の大きさを気にしてるみたいだけど、意外と胸の大きさとかどうでもいいって男の方が多いから! 雄介だって、七瀬さんの胸が大きいから好きになったわけじゃないだろ!?」

 

「うん、そうだね。そこはどうでもいいかな」

 

「まあ、そうだよね~! 雄介くんはおっぱいじゃなくてお尻派だし……むぐっ!」

 

 親友の援護射撃をしつつ、余計なことを言ったひよりさんの口を塞ぐ。

 僕に自分の意見を肯定してもらった楽人は、そこからも熊川さんのことをフォローしたり、褒めたりしていった。

 

「だからそんな、自分のことを卑下しないでほしいっていうか……熊川さんは十分かわいい女の子だし、そのコスプレも似合ってるよ! 二人と比較してとか言う必要ないからさ! もうちょっと、自信を持ちなって!」

 

「あ~っ! わかった! わかったから!! そんな熱を込めて語ることじゃないでしょ!? もう……!!」

 

 ドストレートな褒め言葉に顔を赤くした熊川さんが大声を出してストップをかける。

 その態度にしまったといった表情を浮かべた楽人が、やり過ぎたかと不安げな雰囲気を纏い始める中……熊川さんは、視線を逸らしながら小さな声で言った。

 

「……ありがとう、褒めてくれて。嬉しかった」

 

「あっ……! えっと、そっか。そう思ってくれたなら、良かった……!」

 

 熊川さんからの感謝の言葉に、今度は楽人が顔を赤くする。

 そこからはお互い無言ではあるが、ギクシャクした気まずいというよりかは甘酸っぱい空気が二人の間に漂い始めた。

 

「ぷはぁ! 上手くいったね、雄介くんの作戦!」

 

「うん。ひよりさんたちが協力してくれたおかげだよ」

 

 口から僕の手を外したひよりさんが、笑顔を浮かべながら言う。

 コスプレという爆弾にも等しい衝撃を持つ材料を使って、強引に話すきっかけを作るという作戦であったが……想像以上の成果が挙がって、僕も嬉しい。

 

 同時に、この作戦のために力を貸してくれたひよりさんと鉢村さんに改めて感謝すれば、二人は優しく笑いながらこう言ってくれた。

 

「まあ、優希のためでもあったしね。コスプレも楽しそうだったし、別に大したことはしてないよ」

 

「そうそう! 雄介くんからのお願いだったし、断る理由はないって!! 結果として二人も気まずさを取っ払えたみたいだし、良かった、良かった!」

 

「……あっ、そうだ。私のチャイナドレス姿、写真に撮ってもらっていい? 後で大我くんに見せておいてね。これで貸し借りなしってことでいいから」

 

 なんだか最後、少し不穏な気配があった気がするが……まあ、良しとしよう。

 別に誰かが困るわけでもないし構わないかと思いながらも、若干の恐怖を感じているのはどうしてだろうか?

 

 という、不安材料を生み出しつつも、こうして僕たちは実行委員であり、両片思い状態の二人の間にあったギクシャクとした気まずさを払拭することができた。

 そのことを喜びながら、僕たちは今度こそみんなで文化祭の打ち上げを楽しんでいくのであった。

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