ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ふふふふふふ……! お待たせ~! とりあえず私からお披露目しにきたぞ~!」
「うおおおおおおおっ!!」
どうやらひよりさんたちは順番にコスプレした姿を披露するつもりのようだ。
まずはといった感じで扉を開けて入ってきたのは、警察官の服を着た鉢村さんだった。
流石にカラオケ店で用意してあるコスプレなので、一目で偽物の制服だとわかるクオリティなのだが……それが逆に良さみたいなものを生み出している。
タイトなミニスカートから覗く脚はチャイナドレスを着ていた時よりも露出度が落ちているが、きちっとした衣装のおかげか胸のふくらみは逆に強調されていて、セクシーさが売りではないはずなのに妙に色っぽく見えてしまっていた。
「ふふっ……! 逮捕されたい奴、並びな。たっぷり取り調べしてあげるよ」
「うおおおっ! 玲香様~! 手錠かけて~!」
「俺のことを捕まえてくださ~い!!」
手錠を指にかけ、くるくると回る鉢村さんは、なんだかアニメに出てくるような不良婦警さんに見えた。
やっぱり身長高めでスタイルもいいとどんな服も似合うんだなと思う中、僕へと視線を向けた彼女が言う。
「ちなみになんですがお義兄さま、大我くんの好みのコスプレとかってわかりますかね?」
「あの、お義兄さんじゃないです。色々すっ飛ばして懐まで潜り込んでくるのやめてください」
「まあ、細かいことは気にしないで。とりあえず、さっきのチャイナとこっちのミニスカポリスのどっちが反応良かったか、今度教えてね」
そう言いながら指で銃の形を作り、バ~ン! とウインクしながら決めポーズを取る鉢村さん。
弟に見せる写真を撮影しながらも、これのどこが「クール系のお姉さん」なんだろうかと思う僕の前で、彼女が手を叩く。
「さてさて、私のコスプレお披露目はこの辺でいいでしょ。次はいよいよ、遊佐くんと尾上くんの性癖公開タイムってことで!」
「……鉢村さん、その言い方止めてくんね?」
「非常に不名誉なんですけれども……」
笑顔でそう言う鉢村さんに抗議の声を上げつつ、僕と楽人は若干緊張していた。
ここからは残る二人のコスプレ姿をお披露目……という名目で僕たちの趣味がクラスメイトたちの前に晒される時間だ。
嬉しさがあるようなないような、そんな気持ちを抱えたままそわそわしている僕たちの前で扉が開き、二人目の女の子が部屋の中に勢いよく飛び込んでくる。
「イエーイッ! どうどう? 似合う!?」
「ウ゛ッッ……!!」
部屋に入ってきたのは、熊川さんだった。
魔女っ子のコスプレを披露した時とは真逆の明るい笑みを浮かべて質問してくる彼女の姿を見た楽人が、心臓を押さえながら命の危険に瀕している声を漏らす。
まあ、好きな女の子が自分の要望に応えてコスプレしてくれたら、こんな反応にもなるよな~とおそらくはこの後、僕も迎えるであろう未来を親友の姿から想像しながらその気持ちに理解を示した僕は、改めて熊川さんへと視線を向けると楽人がチョイスしたコスプレを確認していった。
大半が赤色で、少し白が混じっているミニスカートのチアガール衣装。
両手にはポンポンも握られていて、ノリノリの熊川さんはそれを揺らしながら応援のようなことをしている。
彼女が体を動かす度にスカートがふわりと捲れ、やや丈の短い上半身の衣装からおへそが覗き、肩が出ているデザインである故に脇も見えてしまう。
本人が気にしている胸の大きさとは関係なく、そういったチラリズムとでもいうべきものと熊川さん自身の無邪気な性格と快活さが合わさった結果、これはこれで……といった感じの鉢村さんとはまた違った趣きが感じられるようになっていた。
「そうかそうか、楽人……お前、こういうのが好きだったんだな……!!」
「鉢村の色っぽい太腿もエロかったけど、熊川の健康的な美脚もいいな。お前とはいい酒が飲めそうだよ、楽人」
「やっぱ応援されたいのか? がんばれ♥ がんばれ♥ って言われたいのか? このドスケベバスケットマンが!!」
「うるせえなぁ! 文句あっかよ、ちくしょうが!!」
クラスメイトたちから散々からかわれた楽人が羞恥をごまかすように怒鳴りながら開き直る。
僕も後でああなるんだろうなと改めて思う中、笑顔の熊川さんが楽人へと声をかけた。
「どう!? 遊佐くんのリクエストに応えてあげたわけだけど、言うべきことがあるんじゃな~い?」
「あっ、そ、その……すごく似合ってます。着てくれて、本当にありがとうございます……!!」
「えへへ……! どういたしまして! じゃあ、今度この衣装で遊佐くんの応援に行っちゃおうかな~?」
「えっ!? ええっ!?」
「あははははっ! 冗談だよ、冗談! 本気にしちゃった?」
……なんだろう。このやり取り、普段からよく見てる気がする。
というより楽人が他人に見えない。強烈なシンパシーを感じてしまう……。
「んじゃまあ、大トリいきますか! 尾上くん、覚悟はいい?」
と、そんなことを考える僕へと、上機嫌な熊川さんが声をかけてきた。
僕が息を飲む中、三度部屋の扉が開き……中にひよりさんが入ってくる。