ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ちっちゃくてデカくてかわいい巫女さんのひよりさん

「やっほ~! お待たせ、お待たせ~!」

 

「っっ……!!」

 

「おっ! おおっ!! これは……!!」

 

「なるほど、そう来たか!!」

 

 熊川さんに負けないくらい元気よく部屋に入ってきたひよりさんの格好を見たみんなが、ニヤニヤと笑いながら頷く。

 同時に、僕の方にも「こういうのが趣味なのか~!」といった視線を向けてきていて、恥ずかしさに顔を赤くする僕の下へと、ひよりさんが歩み寄ってくる。

 

「ふっふっふ~……! かわいい彼女にリクエストを聞いてもらって、コスプレしてもらった気分はどう?」

 

「あ、ありがとう……! それとその、かわいいよ……!!」

 

 そう言って笑うひよりさんを見つめながら、正直な感想を申し上げる。

 白い小袖と緋袴の組み合わせ……というとかしこまった感じがするが、もちろんコスプレ衣装がそんなガチガチなもののわけがない。

 上の白衣はゆったりとしたサイズ感でかわいさを優先したデザインになっているし、下は袴というよりそれを元に作られたミニスカートだ。

 

 俗に言う、巫女装束のコスプレをしているひよりさんは、くるりとその場で一回転してから再び僕に声をかけてきた。

 

「いや~! いい感じのサイズの服があって助かったよ! でもちょっと胸が窮屈なんだけどさ~!」

 

「そこはほら、本職の巫女さんもサラシで潰してるっていうし、本物っぽさが増していいんじゃない?」

 

「ミニスカ履いてる時点で本物も何もないでしょ~よ!」

 

 コスプレ女子三人組が楽し気な会話を繰り広げる中、僕も改めてひよりさんの姿を観察していた。

 普通に……というより、かなりかわいい彼女だが、確かに先ほど言っていた通り、胸が窮屈そうに見える。

 

 露出の激しい衣装を着てほしくなかったから比較的防御力がありつつ、場を白けさせない衣装を選んだつもりだったのだが……逆に危険な雰囲気が出る格好になってしまっていることに、僕は自分の誤算を後悔していた。

 

「なるほどな~! 尾上はどっちかって言うと和風が好みってことか!!」

 

「ここまで洋風のコスプレばっかりだったから、こういうのも新鮮でいいな!!」

 

「もうちょっと脚が見える衣装だったら嬉しかった……」

 

(うぐ……好き勝手言われるの、想像以上に心にくるなぁ……)

 

 楽人も味わった感覚だが、こういうふうに趣味(性癖?)を弄られるというのは思ったよりダメージが大きいものだ。

 親友が怒りながら開き直ったことも納得できるが、ちょっとした理由のおかげで僕は少し余裕があった。

 

 そんなこんなで僕が苦笑……あるいは、引き攣った表情を浮かべて羞恥に耐える中、弄りを堪能したクラスのみんなは改めてどんなコスプレ衣装があるのかを確認し始めたようだ。

 

「当然だけど、男子と女子で着れる服に違いがあるんだな。女装可って書いてあるけどさ」

 

「サイズの問題とかもあるもんね~。でも、こうして見るとそれなりにバリエーション多くない?」

 

「アイドル衣装とか、学校の制服にデザイン違いが多く用意されてるだけじゃね? セーラー服とブレザーで種類が違います、みたいなさ」

 

「学生の私たちからすると、こういうのってコスプレにならないもんね。やっぱ本当は大人向けのサービスなんじゃない?」

 

 やいのやいのと騒ぐみんなは、ただコスプレのメニューを見るだけでも楽しそうに話している。

 ちょっとだけその気持ちもわかるなと思いながらジュースを飲んだところで、一人の男子がわっと大きな声を出した。

 

「えっ!? スモックあるじゃん!! うわ~! 尾上、なんでこれ七瀬に着せなかったんだよ!?」

 

「え? ああ、スモックね……」

 

「合法ロリ巨乳幼稚園児とか絶対映えるのに! 見てみたかったな~!」

 

 その男子が言ったように、このカラオケ店には幼稚園児が着るスモックも用意されているようだ。

 なんだか妙な熱意を持つ彼の言葉に苦笑を浮かべながら、僕はその疑問に答える。

 

「あんまりそういうの、好きじゃないんだよね。彼女を使って笑いを取ろうとしてるみたいでさ」

 

「確かにな。俺も雄介の立場だったら、七瀬さんが笑われるようなコスプレはさせたくないわ」

 

「熊川さんが胸の大きさを気にしてたみたいに、ひよりさんも背の低さを気にしてたりするかもしれないしね。そういうコンプレックスを刺激するようなことを、彼氏の僕が率先してやるわけにはいかないでしょ?」

 

「そうだね。ひよりは尾上くんの彼女であって、道具じゃないもの」

 

「こういう意識の差だな~! モテる男とそうじゃない奴の違いってさ~!」

 

 当たり前のことを当たり前に言ったつもりだったが、みんなの間からは「おお~」というどよめきが漏れた。

 その後、スモックを着せたかった男子が言葉で袋叩きに遭う中、隣に座っていた楽人が恐る恐るといった様子で声をかけてくる。

 

「なあ、雄介? 正直に答えてほしいんだけど……お前、怒ってる?」

 

「いや、そこまでは怒ってないよ。ひよりさんにセクハラされた時はイラっとしたけどね」

 

「そこは普通にキレていいところだもんな……空気読んでやんわり言ってくれて助かった。あと、ごめんな」

 

 楽人が謝ることじゃないし、本当にそこまで怒ってない僕は気にしないでと言って中身が空になったグラスを手に立ち上がった。

 部屋を出て、ドリンクバーへと向かったところで……後を追ってきたひよりさんが声をかけてくる。

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