ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「『ダイエットに必要なのは、適度な運動とカロリーを摂取する食事の調整、そして何より生活習慣を改善することです』……だって。やっぱり基本的なことからやっていくべきなんだよ」
「な、なるほど……」
昼休み、屋上でご飯を食べることにした僕たちは、ついでとばかりに朝、家から持ってきた母のダイエット特集の雑誌を広げ、その中身を確認していた。
あまり派手なことをするのではなく、基本的な部分を押さえた方がいいというご尤もな内容に納得した僕は、ひよりさんがお昼ご飯になりそうなものを何も持っていないことに気付き、言う。
「ひよりさん、お昼ご飯は?」
「あ、あはははは……ダイエットのために、今日は抜こうと思って……」
ばつの悪そうな顔をしながらの彼女の言葉に、僕は渋い顔を浮かべる。
パラパラと雑誌を捲った僕は、そこに書かれていることを声に出して読み上げていった。
「『絶食や過度な食事制限によるダイエットは、体が必要な栄養素を摂取できなくなり、逆に健康に害を及ぼす危険があります』。『極端なカロリー制限は大きなストレスとなり、挫折やリバウンドにもつながる可能性があるため、おすすめできません』……って、この本に書いてあるよ」
「うぐぅ……っ!!」
「それに何かで聞いたことがあるけど、食事の回数を減らすと、少ない食事の中で体が栄養を補給しようと必死になって、逆に太っちゃうんだって。リバウンドみたいなことが起きるらしいよ」
「えっ!? うそぉっ!?」
「まあ、これが本当かどうかはわからないけどさ。ご飯を抜いたりするんじゃなくて、三食しっかり食べた上で栄養バランスを計算すべきだってことなんだと思うよ?」
ダイエットに興味があったわけではないが、母が色々と悪戦苦闘していたことは知っている。
食事を抜いたりするダイエットは肌荒れや体調不良を引き起こしたり、痩せたと思っても食事を元に戻したらダイエット前以上に太ってしまうことになるようだ。
やはりダイエットにおいて大切なのは、特別な何かをするのではなく、生活習慣全般の見直しをするということなのだろう。
食事の内容を見直し、運動の量を見直し、生活習慣を見直す。そうすることで、良くない部分を改善し、健康的に体重を落としていくことが一番なのだ。
そういうのって時間はかかるが、大体は地道な努力をした方がいい結果につながるということはわかっている。
バスケでも派手なパスやシュート技術よりも、何よりまず基礎となる体力が大事だったし、そういう練習は往々にして地味できつかったが大事だった。
ダイエットも同じことがいえるんだろうなと思いながら、僕は自分のお弁当を半分に分けてひよりさんへと差し出す。
「はい、とりあえず今日はこれ食べて」
「えっ? わ、悪いよ。雄介くんのお弁当じゃん!」
「大丈夫だよ、そこは。足りなかったら購買で何か買って食べるからさ」
「うぅぅ……申し訳ない。あたしがダイエットの正しい方法を知らなかったばっかりに……」
しょんぼりとしながらも僕の厚意を受け取ってくれたひよりさんがお弁当をパクつき始める。
そんな彼女と雑誌を見やりながら、ふんふんと唸った僕は結論を出すと共に言った。
「まずはしっかりと計画を立てるのが大事だね。ダイエットは明日からにしよう」
「ええっ!? それはダメなんじゃない? ほら、『明日から頑張るんじゃない、今日だけを頑張るんだ! 今日を頑張った者にのみ、明日が来るんだよ』的な名台詞もあるじゃん!!」
確かにその通りだ、と思いながらどこか地下でチンチロリンをやってそうな雰囲気を纏いながらものまねをしたひよりさんの言葉に頷く。
しかし、同時にこうも考えている僕は、自分の考えを彼女へと伝えた。
「確かにひよりさんの言うことにも一理あるけど、無計画に動き出すのは良くない事態を招くことになるよ。今だって、ダイエットについて詳しくない状態でご飯を抜くって判断をした結果、良いとは言えない状況になってるでしょ?」
「うっ……!」
「今日頑張ることと、無鉄砲に動くことは違うよ。今日はダイエットの計画を立てることを頑張って、明日からはそれを実行することを頑張る……これが、ひよりさんのすべき
「仰る通りです……」
僕の言うことに納得してくれたひよりさんが項垂れながら答える。
やっぱり、太ったという事実にショックを受けて、冷静に考えられなかったんだろうなと思いながら、僕は彼女へと言った。
「大丈夫だよ。やるべきことは一緒に考えていこう。そのために僕がいるんだしさ」
「雄介くん……! ありがとう……! 本当にあたしにはもったいないいい彼氏だ……!!」
「ひよりさんの方こそ、僕にはもったいないと思うけどな……」
それはそれとして、とこの話は置いておいて、痩せるための行動は明日から開始することになる。
今日はダイエットを頑張るぞという決意を固めることに注力すべきだと判断した僕は、そのためにとある行動を彼女に提案した。