ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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ひよりさんと僕と秋の朝

「おはよう、雄介くん! やっぱこの時期の朝は寒いね~……」

 

「おはよう。冬も見えてくる時期だからね。風邪ひかないようにしないとだ」

 

 翌日の朝六時過ぎ、僕はひよりさんの家の前で合流し、軽く挨拶をした。

 彼女の言う通り、秋の朝は日が昇るのが遅いこともあって肌寒く、ウインドブレーカーを着ていても若干冷えるくらいだ。

 

 ただまあ、体を動かしている間に温まってくるだろうと思いながら、僕はひよりさんに幾つかの質問を投げかける。

 

「朝ご飯は食べた? 抜いた状態で運動すると、体に悪いよ?」

 

「大丈夫! しっかりバナナ食べてきた! 重くなり過ぎない程度にね!」

 

「ウォーミングアップ代わりの筋トレは?」

 

「ちゃ~んとスクワットやってきたよ~! 太腿とかお尻とかの筋肉を動かすから最適だって色んなサイトに書かれててさ~! あっ! それでお尻がちっちゃくなっちゃったら雄介くん的には悲しい? だったら明日からは別の筋トレにするよ!」

 

 大丈夫だよ、と苦笑を浮かべながら本気なのかいつもの冗談なのかわからない彼女の言葉に応える。

 初日はやる気十分だなとひよりさんの準備に感心しながら、僕も大きく体を伸ばして残っていた眠気を吹き飛ばした。

 

「朝から運動することで脂肪が燃焼しやすい状態にできる……! これぞ早起きは三文の得ってやつだね!」

 

「ちょっと違うような気もするけど……でも、朝から頑張ることでいい成果が出せるから、実質そんな感じなのかな?」

 

 ダイエットは絶食や過度な運動によって行うものではなく、生活習慣を少しずつ変化させ、いい方向に向かわせることで行うものだ。

 その一歩目が、これ……朝早く起きてからのウォーキングである。

 

 朝の有酸素運動は基礎代謝を上げ、体の脂肪が燃焼しやすい状態を作ってくれるらしい。(本で読んだ情報である)

 時間はニ十分程度でいいとのことだったので、学校に行く前に早起きして、しっかり準備してからこうして二人でウォーキングをしようと昨日のうちに話をしていた。

 

 六時過ぎに集合は流石に気合いを入れ過ぎたかなと思いつつ、今日の内容によっては明日からはもう少し時間を遅らせようかなと考えた僕は、ひよりさんへと尋ねる。

 

「早起き、大変じゃなかった? 流石に六時集合はやり過ぎだったかも、ごめんね」

 

「ううん、大丈夫だよ! あたしのダイエットに付き合ってもらってるわけだし……朝早くから雄介くんとこうしてお話できて、嬉しいからさ!」

 

 笑顔を浮かべながら、ひよりさんはそう答えてくれた。

 僕の存在が彼女のモチベーションになってくれていることを喜びつつ、彼女が気にしていなくて良かったと思う僕へと、ひよりさんが言う。

 

「さっ、行こ行こ! おしゃべりは歩きながらってことで!」

 

「そうだね、行こうか」

 

 折角、朝早くから集まったのだ、こうしてもたもたしていてはもったいない。

 おしゃべりは歩きながらでもできるし……と思いながら歩き出したところで、ひよりさんが大きなあくびをする。

 

「ふぁ~あ……んっ、失礼しました……」

 

「あはは、気にしないで。やっぱり早過ぎたよね? 眠くて当然だよ」

 

 手を口で押さえて、かわいらしいあくびをしたひよりさんが少し顔を赤らめながら言う。

 やっぱり早く合流し過ぎたかなと思いつつ僕がそう言えば、彼女はこう答えてくれた。

 

「大丈夫だよ、本当に! それに今から三十分くらい歩いて、家に帰ってからシャワーを浴びて、学校に行く支度をして……ってやったら、あっという間に登校時間になっちゃうでしょ? このくらいがちょうどいいんだって!」

 

「ああ、そっか。女の子には色々あるもんね……」

 

 汗臭いまま学校に行くわけにもいかないし、シャワーだってじっくり浴びたいだろう。

 そうなれば髪も整え直さなくちゃならないし、朝の支度に時間がかかって当然だ。

 

 僕も理由があって早めの時間に設定したのだが、意外とひよりさんの事情にもマッチしていたらしい。

 偶然の幸運に喜びつつ、僕は彼女へと言う。

 

「だったら早寝の方を意識した方がいいかもね。今日の感じを見て、無理なく起きれる時間に設定しつつ、生活リズムを壊さないように早めに寝つつ……って感じに調整していこうよ」

 

「そうだね。早寝早起きはいいことなんだし、ダイエットに無理は禁物だもんね! う~ん、あたしってば雄介くんのおかげでどんどん健康になっていく……!! これが管理の力か……!!」

 

「いいや、愛の力だね」

 

 と、自分で言っておきながらクサ過ぎるなと苦笑する僕の脇腹を、にやにやと笑うひよりさんが突いてくる。

 温まってきた体の中に吸い込む冷たい空気の清々しさを感じながら、僕たちは秋の朝の心地良さを堪能しつつ、歩いていった。

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