ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「はい、お弁当。良ければ後で感想聞かせてね」
「うわ~……! ありがとう! 何から何まで、本当に申し訳ない……!!」
ウォーキングを終え、学校に登校し、朝のホームルームが始まる前のタイミングで、僕はひよりさんにお弁当を渡した。
色々とダイエットについて勉強して作ったわけだが、それ用の料理を作るだなんて初めてのことだったので、若干不安だ。
そんな僕たちの様子を見ていた熊川さんと鉢村さんが、二人で相談するようにこんなことを言ってきた。
「あのさ、そういうのって普通逆じゃない? 彼女が彼氏に手作り弁当を渡す……的なさ」
「逆もありっちゃありだけどさぁ……」
「うっ……! 実は若干気にはしてるけど、これには色々わけがあって……」
「そ、そういうのは一旦置いておいてさ! 食べられないものがないか、確認してもらってもいいかな!?」
ひよりさんに食べられないものなんてないとは思っていたが、凹む彼女のためにも話題を変えた方が良さそうだ。
とりあえず中身を確認してもらうことにした僕は、お弁当箱の蓋を開けるひよりさんの反応を緊張しながら見守っていた。
「わっ! 鶏そぼろだ! こんにゃくも入ってる!」
「ああ、うん。鶏肉はカロリーが低いから、ダイエットにうってつけだって聞いてさ。副菜は嚙み応えがあるものを選ぶと満腹感が出ていいって話だったから、こんにゃくを入れてみたんだ」
本日のメニューは鶏そぼろ丼。オクラと細切りにしたニンジンを付け合わせとして入れつつ、副菜としてねじりこんにゃくの甘辛煮も加えてみた感じだ。
慣れないダイエット弁当の出来に自信はないが、見るだけならば美味しそうではある。
「うわ、すっご……!! 彩りもしっかり考えられてて、完璧じゃん!」
「っていうかひより、ダイエット始めたんだ? いいことだと思うよ。普段から食べ過ぎだったしさ」
「……もしかしなくてもだけど、雄介くん、これを早起きして作ってくれたんだよね? 本当、ありがたいやら申し訳ないやら……!!」
「気にしないでよ。僕がやりたくてやってるだけだからさ」
これに関しては本当にそうだから気にしないでもらいたい。それに、母も「ひよりちゃんと一緒にダイエットするわ!」と意気込んでいたから、いいきっかけを作ってもらえたと思う。
別にひよりさんの分がなくても、自分や弟たちの分のお弁当を作るのはいつものことだし……と答えたところ、熊川さんがうんうんと頷きながらこんなことを言ってきた。
「いや~、これはあれですな~! 尾上くんは将来、いい夫さんになりそうですな~!」
「っていうか、いいパパさんじゃない? 妻のことを気遣い、子供のこともしっかり愛せる。その上、家事もできるんだから最高じゃね?」
「そんな、買いかぶり過ぎだよ。実際にそうなってみないとわからないことも多いし、僕なんて全然さ」
褒めてくれるのはありがたいが、僕なんてまだまだだ。
家族のサポートがあってできてることでもあるし、一人で何でもかんでもこなせるわけではない。
という感じで謙遜してみたのだが、ひよりさんがそんな僕の言葉に反論するようにこう言ってくる。
「でも、こうしてあたしのために色んなことをしてくれるわけだしさ。そこは結婚しても変わらないと思うけどな。あたしだって、雄介くんのためになら色んなことをしてあげたいし……そこはお互いそうでしょ?」
「まあ、うん……いい恋人、いい夫婦にならなれる自信はあるかな?」
「おぉう……! こいつら、普通に自分たちが結婚することを疑ってねえよ……!!」
「今の内からお義兄さん、お義姉さんって呼んでおこうかな……?」
「玲香は一旦ストップね。まだ尾上くんの弟くんとも付き合ってないのにそんなこと言ったら、ただの危ない人だよ?」
自称「クールで格好良くておっぱいが大きいお姉さん」という設定はどこに行ったのだろうか?
まあ、そういうところも鉢村さんのいいところだと思うから、敢えてツッコミはしなかった。
そんなこんなで、食事の面でもサポートをさせてもらいながら、ひよりさんのダイエットは順調に進んでいったのである。