ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
ダイエット開始から三日後、ひよりさんは順調にメニューをこなしていた。
世の中にある『三日坊主』なんて言葉とは無縁なくらいにダイエットを頑張る彼女だが、まあ普通にこんな短期間で結果が出るはずもない。
継続こそが大事だとわかっているからこそ、僕も一生懸命にひよりさんのサポートを続けていた。
朝のウォーキングとダイエット用弁当の製作はもちろん、晩ご飯に関しても一緒に作ったりしてカロリー計算をしっかりと行う。
これに関しては僕がひよりさんと一緒にいられる時間を長くするという目的もあったため、それが達成できたことは素直に嬉しかった。
しかしまあ、これだけを続けていても飽きがくる。少しはバリエーションというか、変化を付けなければダメだ。
というわけで、本日は運動のメニューを少し違う、ややハードなものに変えて行うことにしてみた。
「よし、準備オッケー! 気合い入れて頑張るぞ~っ!!」
「やる気満々だね、ひよりさん。普段のウォーキングよりも大変だけど、これなら大丈夫そうだ」
「何せ、今日はお弁当も普段よりもエネルギー補給に優れたガッツリ系にしてもらっちゃったからね! その分のカロリーも消費しないと!!」
と、ひよりさんは言っているが、別にダイエットに適していないものを作ったわけではない。
運動をすることを踏まえて少し量を多くしたのと、豚肉をメインにメニューを組み立てただけだ。
カロリーに関しては普段のお弁当とそこまで差はないのだが、ひよりさんのやる気のためにそれは黙っておいた。
「くっ……! 雄介くんのためにスパッツを履いて来ようかと思ったけど、流石に微妙に太った状態でお尻のラインが出るのは恥ずかしくって断念してしまった……!! ごめん……!!」
「ひよりさん? そういうことは言わなくていいからね? あと、別に期待してないから、妙な気遣いしなくていいよ?」
朝のウォーキングの時は寒さ対策で長袖長ズボンの服装でいる彼女だが、今はゆったりめのTシャツとハーフパンツというやや軽装気味の運動着スタイルだ。
そのことに対して、ぺちんぺちんとゆっくり自分のお尻を叩きながら悔し気に語るひよりさんにツッコミを入れた僕は、咳払いをした後で彼女へと今日のメニューについて話していく。
「ダイエットに効果的な運動だけど、有酸素運動と無酸素運動を上手く組み合わせることが大事なんだって」
「ゆーさんそうんどーとむさんそうんどー……?」
本で読んだ知識を口にした僕であったが、ひよりさんは頭の上にはてなマークを浮かべて首を傾げている。
流石にこれだけじゃわかりにくいよなと思いつつ、僕は詳しく説明をしていった。
「有酸素運動っていうのは、僕たちが毎朝やってるウォーキングとかのことかな。体への負荷が少ないから筋肉は育たないけど、脂肪が燃えやすい運動のこと」
「じゃあ無酸素運動はその逆だ! 筋トレみたいな負荷がすごいやつ!」
「そう、正解。こっちは脂肪は燃えにくいけど基礎代謝が上がってカロリーを消費しやすい体になるんだって」
「なるほど……! つまり筋トレでカロリーを消費しやすくしつつ、軽い運動で脂肪を燃やしまくってボン! キュッ!ボン! な体型を目指すってことだね!?」
「……なんか微妙に表現が古臭くない? でもまあ、そういうことだね」
きっちりとこちらについても勉強しておいた僕は、ひよりさんの言葉に若干苦笑しながら改めて本日の運動を伝えた。
「というわけで、今日はこれを使っていつものウォーキングよりも少し激しい運動をしていくよ」
「おお、縄跳び! 懐かしい……! 小学生の頃に使った以来だ……!!」
僕が懐から取り出したトレーニング器具こと縄跳びを見たひよりさんは、そう言った後で「あの頃から身長が伸びてない……」と何かぶつぶつ呟き始めた。
何かよろしくない状態に突入する前に彼女に縄跳びを手渡し、長さの確認をしてもらいながら、僕はトレーニングの効果について話していく。
「縄跳びは有酸素運動で、全身を使った運動でもあるからね。ウォーキングよりもハードだけど、その分心拍数が上がりやすいから、脂肪も燃えやすいはずだよ。あっ、跳ぶ前にちゃんと準備運動を忘れないでね? いきなり動き出すと、怪我の元になっちゃうから」
「はいは~い! やっぱ運動部の人はそういうトレーニングについて詳しいね!」
「元だけどね。ウォーミングアップが大事なのは身に染みてわかってるから」
特にこういう寒い日こそ、しっかり体をほぐしておかないと危険だ。
それで怪我をした友達を何人も見てきたし……と思いながらひよりさんの準備運動を手伝った僕は、体が温まってきたであろう彼女へと言う。
「じゃあ、まずは軽く跳んでみようか? 体が慣れてきたら、本格的にメニューを消化していく感じでいこう」