ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

294 / 426
ひよりさんと僕と結果発表の秋

「で~ででっ! で~ででっ!」

 

「ちゃらんららららん! ちゃらんららららん!」

 

 ひよりさんとダイエットを始めて早二週間と少しが過ぎた頃、帰宅した僕はどこか聞き覚えのある音楽を口でコピーする弟たちと、自信満々といった様子でポーズを取るひよりさんに迎えられ、困惑の表情を浮かべていた。

 これ多分、結果にコミットするあのジムのCMをパロディしてるんだよな……と考える僕の前で、えっへんと胸を張ったひよりさんが言う。

 

「痩せた~! まだ油断はできないけど、危険域からは脱出できたよ~!」

 

「ああ、それはその……良かったね!」

 

「本当だよ~! これで『全体的にデカくて丸いひよりさん』になることは回避できた~! 危ないところだったぜ!!」

 

 何かよくわからない部分で安心しているひよりさんだが、彼女の努力が実を結んだことは僕にとっても喜ばしいことだ。

 リバウンドの危険性があるからまだ油断はできないが……こうして彼女が喜ぶ姿を見ていると、協力して良かったと素直に思える。

 

「義姉さん、お疲れ様です! ついにやりましたね!」

 

「雅人くんと大我くんもありがとね! 雄介くんへのお披露目会、手伝ってくれてさ! 本当はビキニとかでやった方が完成度が高くなったと思うんだけど……」

 

「大丈夫っす! 義姉さんの水着姿を拝むことになったら、その後で雄介に殺されかねないんで!」

 

 はっはっはと、どこかホームドラマっぽいやり取りを繰り広げるひよりさん&弟たちが高らかに笑う。

 そんな三人のことをどんな顔で見ればいいのかわからずに渋い表情を浮かべる僕へと向き直ったひよりさんは、上機嫌な様子で口を開いた。

 

「雄介くんのおかげであたしの食べ過ぎ&幸せ過ぎで増えた体重もどうにかなったよ~! 本当にありがとう!!」

 

「気にしないでよ。僕もひよりさんと一緒にいられて嬉しかったしさ」

 

「むっふっふ~……! とまあ、ここで感謝はしつつもダイエットは終わりじゃないからね! もう少し絞りつつ、リバウンドがないことを確かめてようやく終わりだけど、ここからはそこまで雄介くんの手を煩わせることはないからさ!」

 

 そう笑顔で言うひよりさんへと、僕も笑顔を返す。

 まだ暫くはこの楽しい日々が続きそうだなと考えながら頷く僕に対して、彼女はこう続けた。

 

「いや~! それにしても本当にあたしは幸せものだな~! 彼氏もその家族もこんなに協力的で、いい人たちに恵まれてるしさ!」

 

「それはひよりさんがいい人だからだよ。いい人の周りにはいい人が集まるってこと」

 

「えへへ~……! ありがと! でも、一番いい人は雄介くんだと思うよ!」

 

 ご満悦なひよりさんがそう言ったところで、母が料理をテーブルに並べ始めた。

 全員でそれを手伝った後、僕たちは楽しい晩ご飯タイムに突入する。

 

「ふふふっ! 今日は一際ご飯が美味しい! でも油断は禁物だから、食べ過ぎないようにしないとね!」

 

「そうよね~! ダイエットって痩せ始めた時が肝心だしね~! 私たちも協力するから、最後まで頑張りましょう!」

 

「ありがとうございます! ふふっ! やっぱりお義母さんも弟くんたちもいい人だよね! 明日から本当の家族になっても何の心配もいらないよ!」

 

「んっ!? ぐふっ! ごふっ!!」

 

 ひよりさんの大胆な発言に驚いた僕が思い切りせき込む。

 母と弟たちはそんな僕の反応をにやにや笑いながら見つめていて、それが若干癪に障った。

 

「見てろよ。お前たちに彼女ができたら、思いっきりからかってやるからな……!」

 

「残念だけどね、雄介。この子たちに彼女はできないわよ。だから、あなたが反撃できる日は永久にやってこないわ」

 

「そうそう、母さんの言う通り! ……あれ? なんか俺たち、地味に刺されてね? グッサリやられてね?」

 

「あれ~? そうなの? 大我くんはそうでもないと思ったんだけどなぁ……?」

 

「ちょっと義姉さんが何を言ってるかわからないっすねぇ……」

 

 母の言葉を受けたひよりさんが、普段僕に向けるあのからかいの笑みを浮かべながら大我へと話を振る。

 視線を背け、バクバクとご飯を口に放り込むことでごまかす三男と、母に思い切り言葉のナイフを突き刺された次男の姿を見て少し溜飲を下げた僕は微笑みを浮かべながら何度も頷いた。

 

「あ、そうだ。ご飯食べ終わったらお散歩行くつもりだけど、雄介くん、付き合ってくれる?」

 

「もちろんだよ。夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないでしょ?」

 

「へっへっへ~! ありがとね! やっぱり雄介くんはいい人だ!」

 

 ダイエットの一環として取り入れている夜のウォーキングも、まだ続けるつもりのようだ。

 僕としてはひよりさんと二人きりで過ごせるのは嬉しいし、特に断る理由もないから、当然OKする。

 

 嬉しそうにはにかむひよりさんの横顔を見つめながら、僕はもう少しだけこうして彼女と過ごす口実が通用してくれることを静かに喜ぶのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。