ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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五章プロローグ・ひよりさんと僕と、バスケットとの再会
冬の朝、二人で登校中の会話


(寒っ! 一気に冷え込んだな~……)

 

 起床して即、冬の寒さを肌で感じた僕は、体を震わせながらそんなことを思った。

 文化祭が終わるのとほぼ同時に秋も終わり、季節は冬。十一月に突入してから増していく寒さのせいで、布団から出るのも億劫になる。

 

 しばし、眠気と怠惰な気持ちと格闘した末にようやく布団から這い出た僕は、今日も学校に行くための準備を始めた。

 顔を洗って歯を磨いて、朝食を取った後で制服に着替えて……と、準備を終えたところで、リビングから母の声が聞こえてくる。

 

「雄介、ひよりちゃん来たわよ~! 早くしなさ~い!」

 

 母のその言葉に反応した僕は、鞄を手に取ると急いで玄関に向かう。

 そこで待っていた小さな女の子は、僕の顔を見ると明るい笑顔を浮かべて挨拶をしてくれた。

 

「おはよう、雄介くん! 今日はあたしの方が早かったね!」

 

「おはよう、ひよりさん。迎えに来てくれてありがとう」

 

 楽しそうにはしゃぐ彼女は、ふふんと鼻を鳴らして大きな胸を張る。

 普段は僕が迎えに行く側だから、珍しく立場が逆になったことが嬉しいんだろうなと思いながらひよりさんと一緒に家族に声をかけてから家を出た僕は、改めて冬の寒さを感じて顔を引き攣らせながら言った。

 

「この間までちょっと肌寒いくらいだったのに、急に寒くなったよね。冬に入ったって感じだ」

 

「だよね~。もう少しゆっくり気温を下げてほしかったよ」

 

 僕の方は箪笥から出すのが間に合わなかったから着ていないが、ひよりさんはブレザーの下にピンク色のセーターを着こんで寒さ対策をしている。

 多分、インナーシャツも着ているから、ほぼフル装備なんだろうなと思う僕の考えを読み取ったのか、彼女は白い息を吐いてから愚痴っぽくこう言ってきた。

 

「いや、上はいいんだよ。問題は下の方なんだよね……」

 

「あ~……確かにそうか……」

 

 ひよりさんの言葉に反応した僕が彼女の下半身……正確には、彼女が履いているスカートを見やる。

 脚を剥き出しにしているその格好に冬の寒さは堪えるだろうと、彼女が味わっている寒さを想像した僕へと、ひよりさんはもう一つため息を吐いてから言う。

 

「冬は男子が羨ましくて仕方ないよ~! ズボンって見るからに温かそうじゃん!」

 

「まあ、間違いなくスカートよりは温かいだろうね。冬服用は生地も厚めだしさ」

 

「でしょ!? 今日はまだいいけど、これに風とか雪が加わったら、もう地獄だからね!? 寒さ倍増なんてレベルじゃないから!」

 

 そう、熱く語るひよりさんの言葉に、僕は苦笑を浮かべる。

 既に中学時代の三年間で嫌というほどスカートを履いた状態で冬の寒さを耐えなければならないつらさを味わったであろう彼女の感情が乗りに乗った話を聞いた僕は、一つ提案をしてみることにした。

 

「それだったらさ、下にジャージを履いてみるのはどう? ほら、やってる人もそこそこいるでしょ?」

 

「あれか~……確かに温かいんだけど、見た目がな~……」

 

 体育の授業で着る、ジャージの長ズボン。

 スカートの下にそれを履いて冬を過ごす女子の姿をちょこちょこ目にしてきた僕は、寒さ対策としてうってつけなのではないかとひよりさんに提案してみたが、彼女はあまり乗り気ではないようだ。

 

 まあ、彼女の言いたいことはわかる。正直、スカートの下にズボンを履いた女子の姿は、だらしないという印象が強い。

 女の子的には、そういう部分も気になってしまうんだろう。まさに、()()()()()()()というやつだ。

 

「でも、下に何か履くってのはいいと思うんだよね。ジャージじゃなくてタイツとかなら、見栄えも気にならないかな?」

 

「問題は校則だよね。タイツの着用を禁止してる学校もあるみたいだしさ」

 

「それもあるんだけど、あたし的にはサイズの方が問題なんだよな~……」

 

「サイズ? どういうこと?」

 

 げんなりとした様子で呻くひよりさんの言葉が気になった僕がそう問いかければ、彼女は恥ずかしそうにしながらもその理由を教えてくれた。

 

「いや、あのね……タイツのサイズを選ぶ時って、身長とお尻の大きさを参考にするんだよ。それで、雄介くんもご存じの通り、あたしはお尻が大きな女の子なわけじゃん? そうなると、自ずとワンサイズ大きなタイツを選ぶことになるわけで……」

 

「別に気にすることないんじゃない? 自分の体に合ったサイズの服を選ぶだなんて、普通のことでしょ?」

 

「気にするよ! もしも、万が一だよ? クラスのみんなにあたしが履いてるタイツのサイズがバレたとするじゃん!? そうしたら、え~? ひよりって身長百五十センチもないのに、Mサイズのタイツを履いてるんだ~! 胸だけじゃなくてお尻もデカいんだね~! ……って弄られる未来が見えるでしょ!?」

 

「さ、流石に考え過ぎじゃないかな……?」

 

 若干、被害妄想が入っているような気がしなくもないひよりさんの話へと、困惑しながら緩くツッコみを入れる。

 でも、ひよりさんにとっては大変な悩み事なんだろうなと考えた僕は、多少の恥ずかしさを感じながらもフォローの言葉を口にしてみた。

 

「まあ、その、あれだよね。ひよりさんは気にしてるかもしれないけど、お尻が大きな女の子が好きって男の子も結構いると思うよ? 僕も嫌いじゃないし……」

 

「……ほう? へ~? ふ~ん……!!」

 

 僕の言葉を聞いた途端、機嫌を回復させたひよりさんがにやにやと笑いながら意味深に呟く。

 彼女を励ますためとはいえ、隙を見せ過ぎたかと少し後悔し始めた僕へと、ひよりさんはいつも通りのからかいの言葉を口にし始めた。

 

「そっかそっか~! 雄介くんもついに尻フェチであることを認める気になったか! めでたい、めでたい!」

 

「いや、そうは言ってないでしょ!?」

 

「え~? 今、大きなお尻が好きだって言ってなかったっけ~?」

 

「言ってないから! 捏造はやめて!!」

 

 冬の寒さが気にならなくなるくらいに顔を熱くした僕がその言葉を全力で否定する。

 そんな僕のことを実に楽しそうに見つめるひよりさんは、ぺんぺんと自分のお尻を叩いて挑発してきた後、からかうような笑みを見せてくるのであった。

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