ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「えっ……!?」
僕も、ひよりさんも、普段から冷静で落ち着いている鉢村さんでさえも、その報告に驚きを隠せなかった。
驚愕に目を大きく見開いて言葉を失う僕たちであったが、一足早くに立ち直った鉢村さんが熊川さん同様のひそひそ声で言う。
「それ、マジなの? 何かの聞き間違いじゃなくって?」
「私も最初は信じられなかったけど、田沼先生もガチ凹みしててさ……マジっぽいんだよね」
少しそそっかしいところがある熊川さんだが、彼女が目撃した田沼先生の姿や楽人の様子から考えると、バスケ部が活動停止処分を喰らったという話は間違いではないのだろう。
思っていたよりも大きな話が飛び出したことに僕が困惑する中、落ち込んだ様子の熊川さんが言う。
「これってさ、もしかしなくても文化祭での
熊川さんの言う
嘘を吐いてひよりさんを陥れようとした彼女は、所属しているバスケ部の先輩たちを味方に付けて騒ぎを起こした。
幸いにも、彼女の自爆や二年生の高塔先輩の協力もあって、問題は無事に解決したが……その際に紫村だけでなく、彼女の取り巻きでもあったバスケ部も評判を下げ、問題視されてしまったということなのだろう。
文化祭は校内だけでなく、校外からもお客さんが来る。
中にはこの学校への受験を考えて雰囲気を見に来た人たちもいただろうし、そんな中で『クレーマーメイド』なるパワーワードが爆誕するレベルの騒ぎを起こした紫村たちには、なんらかの処分が下ってもおかしくはない。
あれから暫く、紫村はクラスメイトたちから白い目で見られて針の筵のような学園生活を送っていると聞いていたが、停学のような処分は受けていなかったはずだ。
厳重注意程度で終わったのかもしれないと考えていたが、予想外の方向からこれまた予想外の処分が飛んできた形になる。
「でもさ、文化祭からそこそこ時間が経ってるわけじゃん? もしもあの一件が活動停止の原因だとしたら、処分が決まるのが遅過ぎない?」
「あたしもそう思うけど……でも、まるっきり無関係とは思えないよ。少なくとも、あの出来事がきっかけみたいな形になったんだと思う」
鉢村さんに対するひよりさんの意見には、僕も完全に同意だった。
文化祭からおよそ三週間ほどの時間が過ぎているし、確かに鉢村さんの言う通り、処分が下るまで期間が空き過ぎているとは思う。
でも、やっぱりあの出来事が無関係とは思えない。ひよりさんの言う通り、少なからず活動停止処分に関わっているはずだ。
「その話を聞いて、遊佐くんも凹んでるんじゃないかって心配になってさ……教室に来てみたら、想像通りだったわけでしょ? 元気付けたいんだけど、どう声をかければいいのかわかんなくって……」
そう、テンションが低かった理由を話した熊川さんが深いため息を吐く。
彼女の話に色々納得しつつ、同じく楽人のことを心配し始めた僕たちは、声を潜めて会議を始めた。
「励ましてあげたいけど、確かにどう声をかければいいかわからないよね……下手なことすると、また傷付けちゃいそうだし……」
「優希が声をかければ解決する、みたいな簡単な話じゃないもんね。どうしよっか……?」
悩む彼女たちの話を聞きつつ、僕も少し考え込む。
そこで数日前に目にしたあるものを思い出した僕は、これが使えるかもしれないと考えながら口を開いた。
「……多分、ひよりさんたちよりも僕が話を聞いた方がいいと思う。女の子が相手じゃ、言えない本音とかもあるだろうしさ」
「そうだよね。遊佐くんもあたしたちより、雄介くんの方が弱音を吐きやすいと思う」
「でも、その後どうするの? 何か遊佐くんを前向きにできる方法、思い付いてる?」
「そこもまあ、多少はね。とりあえず、昼休みあたりに楽人から話を聞いてみるよ」
自信があるわけではないが、とりあえず使えそうな手は思い付いた。
何よりもまず、詳しく事情を聞くべきだと判断した僕は、女子たちからの期待を背負いながら、詳しく作戦を練り始めるのであった。