ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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市民大会と久々の現役復帰

「ん? なんだよ?」

 

 顔を上げた楽人へと、僕は自分のスマホを差し出す。

 その画面を見た楽人は、目を細めながらそこに映っている文字を読み上げた。

 

「プレデターズバッシュ……? なんだ、これ?」

 

「毎年、市が開催してるバスケットの大会だよ。期限ギリギリだけど、今からでも申し込みすれば僕たちでも参加できる」

 

 少し前にイベントを宣伝するポスターを目にしていた僕は、楽人に話をする前にこの大会について調べておいた。

 十二月の中旬に行われるこの大会は年齢と人数さえ満たしていれば参加できるようで、申込期限もギリギリ間に合っている。

 

「バスケ部としては活動できないかもしれないけどさ、こういうイベント的な大会なら問題ないでしょ?」

 

「確かにそうだな……! これなら、みんなも……!!」

 

 僕の提案を聞いた楽人の表情に、明るさが戻る。

 みんなのモチベーションが上がらない理由が目標や未来が見えないことにあると、彼も気付いていたのだろう。

 

 率先して動く者もいなければ、その動機も見当たらない。このままずるずる怠惰に引き摺られていってしまえば、活動再開しても戻ってこないメンバーだって出てしまう可能性が高かった。

 そこに、試合というわかりやすい目標を提示する。そうすればバスケットをやりたがっているメンバーは飛びつくし、それがモチベーションになるはずだ。

 

「……ありがとな、雄介。こんなうってつけのイベントがあるのに、俺は全然気付けなかった。お前が教えてくれなきゃ、再起のきっかけを逃すところだったよ」

 

「そんなに気にすることないって。僕だって、偶然思い出しただけだし……普段の楽人の行いがいいから、こうしてチャンスが転がり込んでくるんだよ」

 

 僕がこういうふうに提案をできているのも、楽人がいい奴だからだ。

 バスケを愛し、真剣に部活に取り組み、友達を大切にする楽人だからこそ、僕も力になりたいと思った。

 

 困っている時に手を差し伸べてもらえるのは、楽人自身の普段の行いが返っているだけだと……そう伝えれば、彼は小さく微笑みながら嬉しそうに頷いてくれた。

 

「よし! とりあえずだけど、参加申し込みをしなくっちゃな! あとは当然だけど、試合をするためにメンバーが必要か。最低でもあと四人は集めねえと……」

 

「……()()だ」

 

「えっ……!?」

 

 バスケットボールは最低でも五人の選手が必要な競技。自分を除いて、あと四人の仲間を集める必要があるという楽人の言葉を、僕が訂正する。

 驚く彼へと、僕は小さく息を吐いてから言った。

 

「僕も出る。だから、必要なメンバーは残り三人だ。まあ、人数が多いに越したことはないんだけどさ」

 

「い、いいのか? 家のこととか、色々あるんじゃ……?」

 

「心配しないで。家族も話をすればわかってくれると思うから」

 

 母や弟たちなら、ちゃんと話をすれば理解してくれるだろう。

 期間もそう長いわけではないし、反対はしないはずだ。

 

 そう、心配する楽人へと僕が答えれば、親友は申し訳なさそうな顔をしながら口を開く。

 

「悪いな、雄介。何から何まで、世話になっちまって……」

 

「気にしないでよ。困った時に助け合うのが友達でしょ?」

 

「……サンキュー。お前が友達で良かった」

 

 緩く握った拳を突き出してきた楽人と、拳を付き合わせる。

 こんなことを言ったら親友に悪いが……この状況に少しだけ、僕は心を弾ませていた。

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