ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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マネージャーのひよりさん!

「……というわけで、しばらく家のことができなくなりました。申し訳ないんだけど、少しの間、我がままを聞いてください」

 

「な~に大袈裟なことを言ってんのよ? そのくらい、良いに決まってんでしょ~!」

 

「そうそう。気にし過ぎなんだよ、雄介はさ」

 

 その日の夜、市民バスケットボール大会に参加することを報告した僕は、家族から温かい言葉をもらっていた。

 最早当然のように食卓に着いているひよりさんも含め、誰一人として僕の行動を咎めたりはせず、むしろ歓迎してくれている。

 

「俺も夏は柔道部の大会関連で負担かけたし、雅人も受験シーズンは同じくなんもできない日が続くわけじゃん? 雄介だけがどうこうって話じゃねえんだし、気にする必要ないだろ?」

 

「そもそも高校生が家事をしなくちゃだとか、そんなくだらないことを気にする必要ないのよ。その辺はお母さんに任せときなさいって!!」

 

「……ありがとう」

 

 最初から心配していなかったが、こうして実際に家族の厚意を受け取るとその温かさに感謝の気持ちがこみ上げてくる。

 改めて、いい母親と弟に囲まれている僕は幸せだなと考える中、楽し気に笑ったひよりさんが口を開いた。

 

「やっぱり雄介くんは優しいよね。バスケの大会のことを調べただけじゃなくって、自分も参加するって言っちゃうなんて、すっごい友達想いだ」

 

「少しでも楽人の力になりたかっただけだよ。色々と、手助けしてもらったことがあるしさ」

 

 楽人は熊川さんや鉢村さんと並ぶ、色々と僕たちの事情を知っている数少ない友人の一人だ。

 文化祭以前から江間や紫村関連のあれこれで気を回してもらっていたし、その借りを返したいという気持ちもある。

 

 でもまあ、一番の理由は()()かと自分でも笑ってしまうくらいにクサいことを考える僕へと、今度は雅人が言う。

 

「いいよな~、雄介! 義姉さんっていう彼女がいる上に、期間限定とはいえ、バスケも復帰だろ? 恋愛とスポーツとか、青春ナンバーワンって感じじゃん!」

 

「確かに、思わず拍手したくなるくらいめでたい感じがする! クラップユアハンズ的な!!」

 

 よくわからないことを言い出した弟たちが、立ち上がると共に謎のダンスを踊り始める。

 久々に見たな、これ……と僕が弟たちの不思議な踊りを眺める中、母はひよりさんと話をしていた。

 

「それにしても、ひよりちゃんはいいの? これから雄介がバスケの練習を始めるってなったら、しばらくはデートもできなくなっちゃうんじゃない?」

 

「そこは大丈夫です! 今日みたいにお邪魔して、一緒にご飯を食べることはできますし……なにより、あたしもチームに参加するつもりなんで!」

 

「ええっ!? ひよりちゃん、バスケできるの!?」

 

「選手としてじゃありませんよ~! マネージャーとして、雄介くんたちをサポートするんです!」

 

「ああ、なるほどね……!!」

 

 えっへん、と大きく胸を張りながらのひよりさんの言葉に、母が安堵しながら納得する。

 流石に男子に混ざって一緒にバスケをするのは無理だろうと思った僕が苦笑する間も、ひよりさんは得意気に話をしていた。

 

「こう見えて、中学時代はバスケ部のマネージャーだったんで! 経験者として、しっかりサポートしていきますよ~!」

 

「おお~っ! 流石は義姉さん! 頼もしい!」

 

「もういっそ、今回の大会に出るメンバーで新生バスケ部として活動始めちゃえばいいんじゃねえの? そっちのが良くね?」

 

「そういうわけにはいかないさ。あくまで大会への参加はみんなのモチベーションを回復させつつ団結させることが目的であって、そこがゴールじゃないんだから」

 

 バスケ部が再び活動を開始するために必要なのは、()()()()()だ。

 こういったイベントでどれだけ好成績を収めようとも、それがイコールして活動再開の理由にはならない。

 野良試合への参加に関しては部外者である僕やひよりさんも手を貸せるが……学校や地域からの失った信頼を回復することは、元々のバスケ部のメンバーがやらなければいけないのだ。

 

「まあ、今は難しい話は置いておこうよ。あたしたちはあたしたちにできることで、遊佐くんたちに協力しよう!」

 

「うん、そうだね。今は僕たちにできることを、だ」

 

 ひよりさんの言葉に同意しつつ、みそ汁を口に含む。

 そのタイミングを狙っていたかのようににやりと笑った彼女は、声に熱を込めて僕の耳元で囁いてきた。

 

「あとは……雄介くんが格好いいところを見せてくれるの、期待してるからね……♥」

 

「ぶっ、ぐっ!?」

 

 その言葉に動揺した僕が、むせそうになるのを必死に堪えながらみそ汁を飲み込む。

 家族からの訝し気な視線を受ける中、ひよりさんは僕の隣で満足気に微笑むのであった。

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