ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
久々に訪れたお店
(ここに来るのも久しぶりだな。なんか、ちょっと懐かしいや)
自動ドアを抜けた先に広がっている光景を目にしながら、僕は思う。
ボールやシューズ、
昔は最低でも月一回は通っていたのにな……と、中学時代を思い返して懐かしさを感じていた僕へと、ひよりさんが声をかけてくる。
「あたしもここに来るのは久々かもな~……とは言っても、片手で数えられるくらいしか来たことないんだけどさ」
最寄り駅から少し離れたところにあるスポーツ用品店。僕たちが住んでいる地域では一番大きなお店だから、スポーツをやる人間ならまず間違いなく来たことがあるはずだ。
ひよりさんもマネージャー時代に買い物をしたことがあるようで、少しだけ懐かしそうに店内を見ている。
「変わってるようで変わってないね。棚の位置とかエリア分けとか、昔のまんまだ」
「そうだね。わかりやすくて助かるよ」
入ってすぐのところにサッカー関連の商品が置いてあって、少し歩いたところにレジがある。
そこから少し先に行けばバスケ用品が並んでいるが……今日はそこに用事はない。
今日、僕たちが用があるのは、スポーツウェア売り場だ。
これから本格的にバスケットの大会に向けての練習が始まるにあたって、その準備をしに来たのである。
「ごめんね。実質、あたしの買い物に付き合わせちゃってる感じだよね?」
「大丈夫だよ。僕も少し買い替えた方がいいと思ってたところだからさ」
中学時代にバスケ部に所属していた僕には、当時使用していた練習着がまだ残っている。
バスケットシューズも大切に保管してあるし、これから始まる練習もそれを使えば問題ないはずだ。
ただ、流石に数年使った練習着たちは少しヨレヨレになっているし、見栄え的にもよろしくない。
大会は大勢の人たちの前で行うわけで、その前に中学時代のやや汚れた練習着で出るというのは、恥ずかしいことかもしれないとも思った。
ひよりさんの方は中学時代は基本的に学校の体操服を着て、マネージャー業を行ってきたわけだから、プライベート(と言っていいのか?)用の練習着をそもそも持っていない。
高校の体操服は授業で使うし、どうせならそれ用の運動着を買おうということで、僕たちは今日、こうしてスポーツ用品店にやって来たというわけだ。
「動きやすい服装は持ってはいるし、一応、スポーツ用の服は持ってたんだけどさ……こう、色々と
そう、恥ずかしそうに頬を染めながら言うひよりさんのどこが育ったのかは、尋ねないことにした。
デリカシーがない質問だろうし、そこからからかいに発展する未来が見えていた僕は、えへんと咳払いをしてから彼女に言う。
「屋内で練習する予定とはいえ、冬場は冷えるからウインドブレーカーを買っておいた方がいいと思うよ。中に着る運動着はTシャツとバスケットパンツで大丈夫なら、あっちに男女別で売られてるはずだからさ」
「了解! じゃあ早速それを見に……っていうのもいいけど、折角だし色々見てみない? 久々に来たわけだし、そういうのも面白そうでしょ?」
いいかもね、と僕はひよりさんの提案に頷く。
確かに久々に訪れた店だし、同時に滅多に来ない場所でもあるこのスポーツ用品店を見て回るのも楽しいかもしれない。
とは言っても、バスケ用品以外に語れることはないんだけどな……と思いつつ、僕はひよりさんへと言う。
「必要なものだけ買って帰るっていうのも味気ないし、色々見てみようか。ひよりさんの言う通り、面白そうだしさ」
「うんうん! そうしよう、そうしよう!」
僕の言葉に、ひよりさんが楽しそうにはしゃぎながら言う。
そうした後、彼女はにやにやと笑いながら小さな声で呟いた。
「なんか、あれだね。彼氏の趣味に付き合う彼女感があって、ちょっと新鮮な気持ちかも……!」
それも確かにそうだなと思いながら、僕はひよりさんを連れてスポーツ用品店を見て回り始めた。