ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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シャツ選びには罠がいっぱい!

(う~ん……やっぱり男物とは似ているようで結構違うな……)

 

 女子のスポーツウェアを眺めた僕が真っ先に抱いた感想がそれだ。

 一見すると男子のそれと大差ないように見えるが、若干ポップな感じに見えるよう、文字のフォントやプリントされるイラストのデザインが調整されている。

 

 シンプルだったり、格好いいデザインのシャツがほしい場合は男性用を買えばいいわけだし、こう考えると女子向けのスポーツウェアとしっかり差別化されているんだなと僕は思った。

 

「それで、ひよりさんはどんなやつがほしいの?」

 

「う~ん……要望みたいなものは特にないんだよね。中学は体操服とジャージだったから、そんなにスポーツウェアに詳しいわけじゃないしさ」

 

「じゃあ、とりあえずどんなものがあるか見てみようか? 気に入ったものがあったら、それを選べばいいしさ」

 

 確かにまあ、おしゃれ用ではなく運動用の服に好みもなにもないだろう。

 実物を見てみて、気に入ったものを選べばそれでいいかと考えつつ、若干僕がひよりさんの服を選ぶ流れになりそうだなとも思いながら、僕はスポーツウェアたちを見ていく。

 

 まあ、男性用よりかはかわいらしくデザインされているものの、基本的には格好いい寄りのデザインが多いよなと考える中、一枚のシャツを手にしたひよりさんがぼそりと呟いた。

 

「おお、思ったよりも薄いね。素材も体操服と全然違う」

 

「通気性を良くするために色々と工夫されてるからね。あとは、汗もそうかな?」

 

「汗! そうだ、そのことを忘れてた……!」

 

 僕の言葉にはっとしたひよりさんが実に深刻な様子で言う。

 どういう意味かと視線で尋ねれば、少し顔を赤くしながら彼女はこう答えてくれた。

 

「いや、これも中学時代の話なんだけどさ。部活が終わって着替えるためにジャージを脱いだら、思ってたよりも汗をかいててね……体操着、特に胸の部分が汗のせいで透けちゃって、下着が見えちゃってたことがあったんだよね……」

 

「ぶっ!?」

 

 予想していなかったエピソードの内容に僕は思わず吹き出してしまう。

 恥ずかしそうにしながら、ひよりさんはこう続けた。

 

「まあ、周りに女子しかいなかったから助かったんだけどさ、あれは本当に恥ずかしかったな……」

 

「そ、そっか、そんなことがあったんだね……」

 

 思いきりむせながら、そんなことを言う僕であったが、頭の中にその場面が勝手に浮かび上がってしまっていた。

 練習が終わり、熱気によって頬を上気させたひよりさんがジャージのチャックを摘まみ、それをゆっくりと下ろしていく。

 ジジジ……という音と共にゆっくりと開いていったそれが大きく膨らんだ胸だけを放り出すくらいまで下りていった時、肌に張り付いた体操服とその下に見えるオレンジ色の下着が露わになった。

 

 恥ずかしそうに頬を染めるひよりさんのちょっとえっちな表情とむわっと漂う蒸気のような熱を帯びた雰囲気を勝手に想像して、これまた勝手に動揺してしまった僕は、その妄想を頭の中から放り出すと共に彼女へと言う。

 

「じゃ、じゃあ、白いシャツはやめておこうか。僕も、ひよりさんのそんな姿を他の男子たちに見せたくないし……」

 

「うん、そうだね。ひひっ! 恥ずかしい話をしちゃったけど、雄介くんの独占欲を引き出せたから良しとしようかな!」

 

「あんまり外でそういう話はしないでね? 聞いてる側も恥ずかしかったんだから……あっ!」

 

「ん? どうかした?」

 

 どこか楽し気なひよりさんにツッコミを入れたところで、今度は僕があることを思い出す。

 妙な声を漏らした僕を見つめ、首をかしげる彼女に対して、僕は今、思ったことを話していく。

 

「いや、僕はそこまで気にしない部分なんだけどさ、女の子って汗の染みとか気にするよね?」

 

「あっ……! あああああ……っ!!」

 

 汗、というワードを聞いて思ったことを口にすれば、その意味に気付いたひよりさんの顔が真っ青に変わっていった。

 彼女の気持ちを代弁するように、僕は話を続ける。

 

「灰色とかのシャツだと汗の染みが目立つんだよね。男子はそういうの気にしない人もいるけど、女の子は違うんじゃないかなって思ってさ」

 

「気にする! めっちゃ気にするよ! 下手したらそれ、シャツが透けて下着が見えるよりもずっと恥ずかしいって!!」

 

 血相を変えてそう主張するひよりさんの反応から察するに、これは女子にとって死活問題なのだろう。

 シャツを買う前に気付けて良かったと思いつつ、僕はその対策を告げる。

 

「だったら汗が目立たない色のシャツを選ぼう。黒とか、濃いめの黄色やオレンジ色だと、割と目立たないよ。逆に淡い色は汗染みが目立っちゃうから注意が必要だね」

 

「あ、危なかった……! あたし今、このシャツいいな~……って思ってたところだったから……!」

 

 そう言ってひよりさんが僕に見せてきたのは、淡いレモン色のシャツだった。

 これだと汗をかいた時に染みが目立つなと思う僕の前でそのシャツを戻したひよりさんは、代わりに濃いイエローとオレンジのシャツを手に取り、大きく頷いてみせる。

 

「これで良し! 雄介くんが運動部で助かった……!!」

 

 今はもう引退しているから元なんだけどな、とは思いつつも、そういう野暮なツッコミはやめておくことにした。

 これでシャツは選び終わったが、まだ買う物は残っている。

 今度はバスケットパンツが並ぶラックへと移動したところで、上機嫌なひよりさんがにやにやと笑いながら僕へと言ってきた。

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