ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする   作:烏丸英

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七瀬の奴、私のポジションを奪いやがって……!(二奈視点)

「前に話した件だけどさ、俺たち二年は誰も乗らないつもりだから! 一年の奴らも乗り気じゃない連中が多いみたいで、遊佐の計画も頓挫するんじゃないかって話になってるよ!」

 

「ふ~ん……! それは良かった! こういう時に勝手に動かれると、逆に良くないことになりそうですもんね!」

 

 喜んでいるような、焦っているような……それでいて私の反応を窺う媚びた態度を取る部長の言葉に、私は明るい雰囲気で応える。

 弾んだ私の声に安堵したのか、電話越しでもわかるくらいにほっとしたであろう部長は、やや気の抜けた声でこう続けた。

 

「二奈ちゃんが言う通り、余計なことをして怒られたら処分が長引いちゃうし、もっとペナルティが重くなるかもしれないしね。こういう時はじっとしておいた方がいいんだよ」

 

「そうですよ。ちょっと長い休みをもらったと思って、のんびりするのが一番です」

 

 そうやってのんびりしている間にお前たちが引退する時期になっても関係ないしな、と私は心の中で呟く。

 そもそも私はほとぼりが冷めたらバスケ部の連中と距離を置くつもりだし、もうどうでもいいのだが……と思いつつも、向こうから関係を切られるというのは私のプライドが許さない。

 

「でも、やっぱり遊佐くんは私のことを許してないんですね……仕方がないとは思いますけど、悲しいです」

 

「そんなに気にすることないって! 二奈ちゃんを仲間外れにしようとする遊佐のやり方は良くないよ! こういうのって、全員で一丸にならなくちゃ意味がないと思うしさ!」

 

 弱ったふりをしながら嘆いてみせれば、部長は大慌てで励ましの言葉をかけつつ、私を持ち上げてくれた。

 その言葉に機嫌を回復させた私は、満面の笑みを浮かべながら思う。

 

(遊佐の奴、意外と陰湿ね。まあ、気持ちはわからなくもないけどさ)

 

 あいつも文化祭の一件を根に持っているのだろう。

 確かに七瀬に復讐するためにあいつも巻き込んだのは悪かったかもしれないが、結局は私の作戦は失敗して被害が出なかったからいいじゃあないか。

 バスケ部の活動停止処分も部長たちの行動が原因だし、ここまで私を恨む必要なんてないはずだ。

 

 こんなことならば、もう少し本気を出してあいつも落としておくべきだったかと後悔した私だが、その耳に気になる発言が響いた。

 

「あっ、遊佐といえばなんだけどさ……あいつのクラスメイトのデカい男とロリ巨乳の子、覚えてる?」

 

「えっ……?」

 

 予想外の言葉に、私の心臓が思いきり跳ね上がった。

 間違いなく尾上と七瀬のことを指しているであろう部長の発言に緊張する私であったが、部長はそんな私の動揺にまるで気付くことなく、こんなことを言ってくる。

 

「なんか、遊佐にバスケの大会に出ようって提案したの、あのデカい男っぽいんだよね。一年生に聞いたら、そいつと付き合ってるロリ巨乳の方もマネージャーで参加するみたいでさ……」

 

「はぁ……?」

 

 部長の話を聞いた途端、私の中に怒りの感情がふつふつと煮えたぎってきた。

 私が弱ってる一方で、七瀬の奴は彼氏と一緒に青春を謳歌しようとしている。邪魔者である私を除け者にして、私のいないところで陰口を叩いて、男どもにちやほやされることを存分に楽しんでいるのだろう。

 

 私が除け者にされたのも、あいつがチームに参加するからかと……もしかしたら七瀬の命令で遊佐がそうしたのかもしれないと思うと、治まりつつあった怒りがぶり返してくる。

 立場を逆転された悔しさに歯を食いしばる私の雰囲気を察したのか、部長は大慌てでこう言ってきた。

 

「だ、大丈夫だよ! そんな上手くいかないって! 練習もすぐやらなくなって、ぐだぐだな感じで終わるに決まってるよ!」

 

「……そうですよね。そうなるに決まってますよね……!」

 

 人数も少ない、そこまで高いモチベーションを保てるとも思えない、そんな状況で真面目な練習なんてできるわけがない。

 適当にバスケをやって、「あ~、楽しかった!」くらいの雰囲気で終わるに決まってる。

 

 ただそれでも、一度は私が女として勝利した相手である七瀬に、一時的とはいえ敗北を味わっているようで……それがどうしようもなく、腹立たしかった。

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