ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
一年半ぶりのコート
(懐かしいな。なんか、
久しぶりにコートに立った僕は、そこから見える光景に懐かしさを感じながら目を細める。
一度も使ったことのないスポーツセンターの貸しコートだが、こうして立っているだけで中学時代の練習や試合の思い出が蘇ってくるようだ。
でも、あの頃とは違う部分もある。
借りてきた高校のバスケットボールを手にして、何度かドリブルをした僕は、違和感に苦笑を浮かべながら心の中で呟いた。
(ボール、中学で使ってたものより大きいんだな。重さも違うし、慣れるまで少し時間がかかりそうだ)
高校生になってからバスケットボールに触れる機会が全くといっていいほどになかった僕は、中学時代に使っていたそれよりも大きな高校生用のボールを扱いながら思う。
多分だけど、『れじゃすぽっ!』で楽人と1on1をした時くらいしか触れたタイミングはないんじゃないだろうか?
あの時も思ったが、大きさの分、重さも増しているし、そうなるとシュートの際に込める力も少し強めにしなくちゃダメだ。
そういった部分は慣れていかなければなと考えながらドリブルをしつつコートを歩き回った僕は、フリースローエリアで立ち止まるとボールを両手で掴んだ。
(試合中はよくこの辺に立ってたっけな。確か、それで……)
相手のディフェンスを止める
普通にパスを受け取り、そこからフリーになっている味方を探してパスを回す。
逆にそのまま勝負に持ち込み、自分でシュートを決める。
インサイドで戦う
「ふっ……!」
緩く膝を曲げ、伸ばしながら跳躍。
最も高いところに到達したところで右腕を伸ばし、手首のスナップを利かせてボールを打ち出す。
左手は添えるだけ……シュート練習をし始めた頃に何度も繰り返したその言葉が、勝手に頭の中に浮かび上がってきた。
そんな僕が見守る中、手から離れたボールは綺麗な弧を描いて宙を舞った後でバックボードにぶつかって跳ね返り、リングの中に吸い込まれていった。
「ひゅ~っ! 一発で決めるとか、やるじゃん!」
「偶々だよ。もう一回やったら、今度は外れるさ」
「俺との1on1でスリーポイント決めといてよく言うよ。まあ、現役バスケ部としては、一年もブランクがあるお前に負けるわけにはいかねえけどさ!」
久しぶりのシュートを決めた僕へと、楽人がからかうように声をかけてくる。
同時に気合いを入れる彼を見つめながら笑みを浮かべた僕は、振り返ると再びリングを見やった。
(まだ、体は覚えてたか。めちゃくちゃ憧れて、何本も練習したからな……)
バックボードを使ってシュートを決めるバンクシュート……派手さはないが基本に忠実であるが故に成功率が高いこのシュートは、僕の大好きなシュートでもある。
アリウープでも普通のシュートでも、「同じ二点だピョン」なんて言ったポイントガードがいるが、実際その通りだ。
その二点を堅実に積み上げる苦労と大切さを知っているからこそ、僕の敬愛する『21番』の選手は基礎の集大成とでも呼ぶべきこのシュートを磨き上げた。
当然、その選手に憧れた僕も何千、何万とバンクシュートを練習したものだ。
あれからもう随分と時間が経ってしまったけれど、その感覚が残っているのだろう。
シュートのフォームにも違和感はない。まるで昨日までバスケをしていたような、そんな錯覚を覚えてしまうくらいだ。
……と、自分を評価しつつも、やっぱりブランクや大きくなったボールに適応するための時間は必要だろう。
参加しているメンバーで高校のボールに慣れていないのは僕だけだし、そのせいでみんなに気を遣わせるようなことにはならないようにしないとなと考えたところで、アップを終えた楽人が駆け寄ってきた。