ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
「ありがとな、雄介。大会の参加手続きとかだけじゃなく、練習場の予約もしてもらっちまってさ。お前には、本当に世話になりっぱなしだ」
「気にしないでよ。楽人だって、チームメンバーを集めるために頑張ってくれたじゃないか」
当然ながら、僕はバスケ部のメンバーと顔見知りというわけではない。
だから、大会に参加するためのメンバー集めは楽人に任せ、僕は練習場となるスポーツセンターの確保などをはじめとした裏方業務を担っていた。
ひよりさんにも手伝ってもらったし、そこまで苦でもなかった僕と違って、先輩やマネージャーさんたちも含めたバスケ部のメンバーほぼ全員と連絡を取ることになった楽人は大変だっただろう。
その気持ちを込めながら親友からの言葉に応えた僕であったが、楽人は若干ばつの悪そうな表情を浮かべると、集まったメンバーを見つめながら口を開く。
「……それでも、集まったメンバーは本当に一握りだ。ぎりぎり試合ができるくらいの人数しか集められなかった」
楽人が声をかけたバスケ部員たちの中で、今回の案に乗って大会に参加するために集まってくれたのは僕たちも入れて七人。
先輩部員たちはマネージャーさんも含めて一人もおらず、同じ一年生たちも大半が参加を断ったらしい。
別にそれは楽人のせいではない。こんな状況では、モチベーションが湧かなくても当然だ。
そう言って彼を慰めようとした僕が口を開くよりも早く、悔しそうに拳を握り締めた楽人が言う。
「情けねえよな。本来、お前がやってることは俺たちがやらなくちゃいけなかったんだ。迷惑をかけられた部外者である雄介が誰よりも積極的に動いてるのに、俺たちはぐだぐだしたまんまでさ……ホント、どっちがバスケ部だって話だよ」
「楽人……」
前々からわかっていたことだが、楽人は責任感が強い。
彼自身に非がないとはいえ、バスケ部の活動停止の理由に少なからず関わっていることもあって、この状況をどうにかしたいという気持ちが強くなっている気がする。
ただ、親友の表情からそれだけじゃあないと、何かまだ理由があるのではないかと感じ取った僕は、楽人へと質問を投げかけた。
「声をかけた時、何かあったの?」
「……部長に……いや、先輩たちとかな? 電話でバトっちゃってさ。まあ、ちょっとやらかした感じ」
「……それってもしかして、紫村関連?」
僕の問いかけに、苦笑を浮かべた楽人が頷く。
もはや何があったかなんて聞かなくてもわかるレベルだったが、楽人は盛大なため息を吐いた後であったことを話してくれた。
「こういうことをやるって話をした時、部長も他の先輩たちも、二奈ちゃんはどうなる? って、揃って聞いてきてさ……なんかもう、チームメイトとか後輩たちよりも、まず女のことが気になるのかって、気持ち悪いを通り越して悲しくなってきちゃったんだよな」
「それを指摘したら、先輩たちと言い争いになったってこと?」
「ああ。二奈ちゃんを仲間外れにするなら、俺たちは参加しないって……馬鹿みたいだろ? あんたら、バスケが好きで部活に入ったんじゃないのかよ? それなのに知り合って半年程度の女を優先するのかよって……もうなんか、そう言う気力すら湧いてこなかったわ」
そう悲しそうに言った楽人が、小さくジャンプしてからシュートを放つ。
ガコン、という音と共にリングに弾かれて戻ってきたボールをキャッチした彼は、呻くような声で言った。
「……俺だって、紫村さんをメンバーから除外したことに対して、何も思ってないわけじゃねえよ。でも、本人が反省してねえんだからどうしようもねえだろ。しおらしい態度を取ってみても、心の底ではバスケ部のことなんてどうでもいいって、あの子が考えてることくらい俺たちだってわかってる」
紫村の悪評は学校中に広まっているし、そんな彼女に味方する者が洗脳済みのバスケ部員たちだけだということが、彼女が置かれている状況を物語っている。
自分の現状を理解しているからこそ、紫村も大人しくしているのだろうが……この状況で反省し、それを償う行動しないというところからも、彼女の本音が透けて見えていた。
「そんなわけだから先輩たちは来ねえし、先輩たちに圧をかけられた奴らからも断られた。マネージャーさんたちはそんな男どもに嫌気が差して、ちょっと距離を置くってさ。その結果が……この寂しい人数ってわけだ」
自嘲気味に笑った楽人が、再びため息を吐く。
責任感や先輩たちの情けなさを目の当たりにしたせいで心を痛めているであろう彼を静かに見つめた僕は、そうした後で一呼吸空けてから口を開いた。